■はじめに

 この辞典には、鍋物と鍋に関する言葉や事柄を出来るだけ多く取り上げることにしました。

 項目を大ざっぱに分類すれば、
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   @一般的によく知られた鍋物
   A辞典に載せるべき価値があると思われる鍋物
    (鍋物に類似した料理も含む)
   B鍋物と鍋に関する術語
   C調理法、主要な食材、調味料
   D鍋物にゆかりを持つ人物など
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 となるでしょう。

 鍋物に関する歴史、エピソード、簡単な作り方なども出来るだけ多く盛り込むよう心掛けました。


 鍋物の世界は広大無辺です。
 呼び名一つとっても歴史的、地域的な差が大きく、逆に同じ名であっても、違った材料を用いたり、別の作り方をしていることがあります。
 外国の鍋物では中国のものをかなり多く取り上げましたが、それ以外は情報が少ないので、代表的なものにとどめました。

 とりあえず「辞典」として公開しますが、これからも訂正、補足、項目の取捨選択などを続けなくてはならなりません。
 皆様のご教示を仰ぎながら、充実を図っていきたいと考えています。


■動植物や食物、料理の表記について

●生物としての動植物を表す場合は片仮名。
    【例】 ブタ・タイ・ハクサイ など

  ただし辞典の項目表記は、かっこ内に漢字。
    【例】 ブタ(豚)・ハクサイ(白菜) など

●食物・料理を表す場合は漢字。
    【例】 豚肉・鯛ちり・白菜鍋 など

  ただし常用漢字外の表記は原則として片仮名または平仮名を優先し、
  カッコ内に漢字を書く。
    【例】 コンニャク(蒟蒻)・はも鍋(鱧鍋) など

●「※」が付いた語は項目にある。関連項目は「→」で示す。






- あ -


アイガモ(相鴨、合鴨、間鴨)アイガモ鍋

 マガモとアヒルの混血種。別名はナキアヒル。
 よく鳴くため、鴨猟のおとりとして使われることがある。
 アヒルもマガモを長く飼い慣らし、家禽として改良したもの。それだけにアイガモは体型などではマガモの特徴をかなり残しているとされるが、味はマガモよりやや落ちる。
 しかしアヒルよりは美味であり、手軽に手に入るのが利点。

 近年は水田に放し飼いする「アイガモ農耕」が盛んになるなど、供給量は上昇中。
 鴨鍋、そばやうどんに用いられる肉もアイガモのものが多い。
 カモの代用品としてではなく、堂々と「アイガモ」を名乗る鍋物も登場してきた。

<作り方の一例>
(合鴨鍋)=合鴨は薄目のそぎ切り、他の具は京菜だけ。だし汁は酒7、薄口醤油3の割合とし、塩を少々加えて調味する。酒6、濃い口醤油4でもいい。
合鴨肉、京菜とも余り煮すぎないうちに食べたい。
薬味には七色唐辛子など。








アイディア鍋

 個人、料理店、自治体などが独自に考え出した鍋物。
 雑誌やテレビなどでも次々に紹介されており、その種類は無数といえる。

全日本鍋物研究会※のコンテスト(毎年1回)で紹介される鍋物もこの中に入るだろう。
「私流鍋物」「わが家鍋」「おらが鍋」などという呼び方もある。








あいびき鍋

 一般的にはあいびき肉(牛と豚など)の団子を具にする鍋物をいうが、魚、肉、野菜などをさまざまな組み合わせで団子、つみれ状にした具を用いて「あいびき鍋」と命名することがある。

<作り方の一例>
(海と陸のあいびき鍋)=イワシのすり身、白身魚のすり身(少々)、鶏の挽き肉、シイタケのみじん切り、ショウガの絞り汁、片栗粉(少々)を混ぜ、適当な大きさにして熱湯に「摘み入れ※」る。
野菜類はハクサイ、シュンギク、ネギなど。
付け汁はダイダイ酢醤油が最良。








青腸汁 青褐汁(あおがちじる)

 江戸時代の料理。キジの腸をたたいて、すりつぶし、味噌と酒を加えてキツネ色に炒ってから汁にすり込んだものが青腸(あおがち)で、これをだしにしてキジの肉やゴボウを入れた汁物。








青汁(あおしる)

 江戸から明治時代にかけて食されていたとされる鍋料理。
 青菜(コマツナ、ホウレンソウなど)を茹で、刻んで白味噌とともにすりつぶしたものを裏ごしにし、塩、醤油、酒などで調味してだしにする。魚や野菜を適宜に入れる。
 生野菜をジュースにした「青汁」とは別物。







銅鍋(あかなべ)

 銅製の鍋。鉄より軽く、耐久性があり、中国の火鍋料理やおでんなどの鍋物によく用いられる。使用後の処理が悪いと、緑青が生じるのが欠点。








灰汁(あく)

  @わら灰や木灰を水に浸した上澄みで、染色、洗濯などに用いる
  A植物の中に含まれる渋み、えぐみを含む成分
  B肉などの煮汁の上に浮く泡状、かす状のもの。

 以上の3種を「あく」というが、それぞれの成分に共通点はほとんどない。
 鍋物でいう「あく」はAとBだが、@を入れると「あくが抜けやすい」といわれる。








胡座鍋(あぐらなべ)

 あぐらをかいて鍋でものを煮ながら、そのまま食べること、またはその鍋のこと。
 江戸時代から明治時代あたりまで一般に使われていた言葉だが、現在は死語になっている。かつて食事の際は給仕(主婦など)が鍋からよそうのが一般的な食事のマナーであったので、胡座鍋方式は庶民的でざっくばらんな態度とみなされた。
 仮名垣魯文※の「安愚楽鍋」※はこれをもじったのだろう。








安愚楽鍋(あぐらなべ)

 仮名垣魯文著の滑稽本、3編5冊、1871−72年刊。

 「牛屋雑談(ぎゅうやぞうだん)」の角書きがある。
明治の初期に、まだ物珍しかった牛屋の鍋を囲んで、庶民生活をスケッチしながら文明開化途上の世相、時代を論議、せんさくする趣向の本。
「アノ親方にさういって、生肉(なま)の最上をすき焼きだねにして四人前、炊きたてごぜんは承知だろうの、ヲイヲイそして油肉(あぶらみ)をたんとヨ、エコレコレ面倒だらうが、葱を小口からざくに切って熱イ湯をかけて持ってきてくんな」
(「安愚楽鍋」から=客の言葉)
 ここには早くも「すき焼き※」「ざく※」という言葉が使われており、牛鍋とすき焼きの歴史に一つの問題を投げかけている。








アコウダイ(赤魚鯛、阿候鯛)

 カサゴ目、カサゴ科の海水魚。日
 本中部から中国、四国までの深海に住む。体長50aに達する。
 身は柔らかく、冬は特に美味とされる。
 近縁にオオサガ、サンコウメヌケ、バラメヌケなどがあり、いずれも鍋物に適している。







アサツキ(浅葱、糸葱、胡葱)

 ユリ科の多年草。
 中国、日本の原産で古くから野菜として用いられていた。長さは20aくらい、枝分かれが盛んで、センボンワケギの名もある。
 根にらっきょう型の小さい鱗茎が出来る。

 かつては晩春にネギの味が落ちたときの代用とされていたが、現在ではネギよりも高級品になっている。








アサリ(浅蜊)

 二枚貝網マルスダレガイ科の二枚貝。
 食用の貝類として最もポピュラーな種類。
 温帯の内湾砂礫底、砂底に住み、掘れば簡単にとれる。

「漁る(あさる)貝」からその名が生まれたという。
 食材として売られているもののほとんどは養殖物。
晩春から初夏にかけての繁殖期は中毒のおそれがあるといわれる。

 俳句では春の季語(浅蜊、浅蜊汁、浅蜊船、浅蜊売り)
 アサリを使った鍋では深川鍋※が有名。








味の素(あじのもと)

 化学者・池田菊苗(いけだ・きくなえ=1860−1963年)が昆布の味にヒントを得て創製した化学調味料(グルタミン酸ソーダ)。
 初めは昆布を原料にしていたが、大豆、小麦から抽出するようになり、大量生産が可能になった。
 味の素は商品名。特許期限が切れたあとは、同種の製品が多く作られている。

 鍋料理はさまざまな具からだし汁の味を抽出するのを本道とするが、補助的に化学調味料を使かったり、付け汁に化学調味料を加えることも少なくない。
中国ではだし、付け汁ともに多用の傾向がある。








アジのぼったり汁

 宮崎県など九州南部の料理。
 アジの身に豆腐、味噌を加えてすり下ろし、アジのあらで取っただし汁に「つみ入れ※」する。
 すり身が汁の中に「ぼったり」と落ちることから、この名が付いたという。
 ダイコン、ネギなどの野菜を入れ、だし汁は塩、醤油で薄目の味付けにする。








飛鳥鍋(あすかなべ)

 奈良・飛鳥の伝統的な鍋物。だし汁に牛乳を使うのか特徴。
 奈良時代に中国からの渡来人によって牛乳を飲む風習が日本に伝えられ、妙楽寺という寺の僧たちが鶏肉の牛乳煮を思いついたのが始まりだという。

 牛乳は洋風鍋物のだしとして若い人に好まれる傾向があり、新たな飛鳥鍋も登場している。

<作り方の一例>
(洋風飛鳥鍋)=鶏肉をタマネギとニンジンのみじん切りとともにサラダ油、ブランデーにつけ込んでおく。
 牛乳、鶏ガラスープ、砂糖、薄口醤油で調味し、鶏肉、しらたき、ハクサイ、シイタケ、ゴボウなどを入れて煮込む。








あたる(当たる)

 食材を擂り鉢で「する」こと。
 調理人などの間で「する」を忌み言葉とし、興行や競馬などに「当たる」という言葉に代えて用いるようになった。

すりこぎ、すり鉢は「あたり棒」、「あたり鉢」となる。同様の例に「するめ」⇒「あたりめ」がある。








集汁(あつめじる)

 ダイコン、ゴボウ、サトイモ、豆腐、煎り海鼠(なまこ)、アワビなどを入れた汁物。
 室町時代以前からあった言葉で、江戸時代には5月5日にこれを食べる風習があった。
 骨董汁(あつめじる)とも書く。寄せ鍋の前身といえるかも知れない。







羮(あつもの)

 熱物、つまり熱い食べ物を意味するが、元来の意味は今日の汁物や鍋物に当たると考えられる。
 江戸時代にはすでに一般的な言葉ではなかったようで、守貞雑記には「羮、あつもの、即今の俗汁というもの是也」とある。

中国で言う「羮」は土鍋などで暖めた濃いスープ料理のこと。
 具もスープもたっぷり入っている。牛肉羹、鶏茸玉米羹、干貝鶏絲羹、玉米魚肚羹、番茄蝦米羹、発菜肉茸羹、集菜黄魚羹などが一般によく知られた鍋料理。
 「羹」と並ぶ「○=保の下に火」はスープが煮詰まって少なくなった鍋料理のこと。
什錦豆腐○、香茹面筋○、鼓椒大腸○、釦肉○などがある。








油 脂(あぶら)

 常温の時に液体になっているのが油、固体になっているのが脂。
 このことから植物性オイルは油、動物性は脂と分けることも可能だろう。

 すき焼き※には牛の脂が欠かせない。
 中国の鍋物には具を油で炒めてから使うものが多い。








油揚げ(あぶらあげ)

 元来は野菜や魚を油で揚げたものを言い、揚げ物と同じ意味だった。
 後に豆腐を薄切りにして油で揚げた「油揚げ豆腐」の略語になった。

 油揚げは、ちゃんこ鍋など庶民的な鍋物の有力な具になる。
 豆腐を厚く切って揚げた「厚揚げ」(生揚げ)も、おでんなどに用いられる。








合わせ醤油(あわせじょうゆ)

 醤油と鰹節の煮出し汁などを合わせたもの。
 鍋物のだし汁、付け汁に用いられる。








アラ(魚偏に荒)

 スズキ目ハタ科の海水魚で、全長1bに達する。福岡など北九州で珍重される高級魚。
 背中は灰色、腹部は銀白色。ホタ、オキスズキ、クエなどの地方名がある。
 関東や関西でいうハタ※クエ※、モロコと近縁、あるいは同種とされ、スズキ科のアラとは別種。

 白身に油が適当に乗った味はフグなどとともに魚の最高位にランクされ、値段もフグに劣らない。

福岡のアラ鍋と和歌山のクエ鍋を、味の良さと値段の高さの面から「ハタ鍋の両横綱」とする向きもある。
 アラ鍋はアラの味を十分に味わうためにハクサイ、シュンギク、豆腐を加えるくらいが普通。
 紅葉おろし、ポン酢で食べる。








あんかけ(餡掛)

 くず粉、片栗粉を水で溶き、調味しただしに加えてとろみを出す料理。
 とろみによって汁が冷めにくくなる。

 江戸時代―昭和初期までの汁物(鍋物)には、あんかけにするものがかなり多かった。








アンコウ(鮟鱇)

 水深100bから400bに住むアンコウ科の魚で、イザリウオやチョウチンアンコウを含める場合があるが、鍋物に用いるのはアンコウとキアンコウの二種。
 鮟鱇の語源は不明。
 顔の全面が特に扁平で、体全体の形から「琵琶魚」という別名もある。

 体長は1b以上に達する。
 肉はフグに似て美味だが、やや臭みがあるため、鍋物は味噌味にすることが多い。
 肉は軟らかくて扱いにくので、「つるし切り」でさばく。
 アンコウは捨てるところがない魚といわれる。各部をまとめて「七つ道具」(肝、チョウチン=触覚、皮、七尋=卵巣、水袋=胃袋、ヒレ、エラのほか、トモ=尾ひれ、柳肉=白身肉などを加えるいくつかの説がある)と呼ばれ、吊るし切りされたアンコウに残るところは少ない。

  「鮟鱇は唇ばかり残るなり」(古川柳)

アンコウは間延びした風貌から、愚かな人の代名詞にもなった。
  「伊勢にては愚なるものをあんかうといふ」(和訓栞)。








鮟鱇鍋(あんこうなべ)

 鮟鱇鍋はかつて茨城県、千葉県などの浜料理とされていたが、明治末から昭和の初期に北大路魯山人※らの食通がこの味を大いに賞賛したので、東京などでも食されるようになったという。

 浜料理では、あんきも(アンコウの肝)を味噌にすり込み、だし汁に溶かして食べるのが主流。
 鮟鱇鍋の店として知られる東京・神田の「いせ源」では淡泊な味を生かすために鰹節と醤油のだしにしている。
 スーパなどで売られているものは、湯がいて水にさらした方がいい。
 ハクサイやネギよりミツバ、豆腐、しらたきがよく合うといわれている。

鮟鱇鍋、鮟鱇は冬の季題。
  「鮟鱇鍋路地に年月重ねたり」(鈴木真砂女)

 韓国のあんこう鍋(アグタン)は、コチュジャン(唐辛子味噌)、醤油、酒、胡椒でだし汁を調味し、アンコウ、豆腐、エノキダケ、シイタケ、シュンギクなどを入れる。スープが真っ赤になるほど唐辛子がきいており、相当辛い。








塩梅(あんばい)

 原始時代は、海水で塩味、梅酢で酢味をつけるのが調味の基本だった。そのため塩と梅の量や配合を塩梅といい、やがてさまざまな事柄の配合、状態、具合などを表すようになった。
 鍋物では、だしや付け汁の塩梅が腕の見せ所。








- い -


イカ(烏賊)

 軟体動物門頭足網(イカ網)のうちツツイカ、コウイカ目に属する軟体動物の総称。
十本の腕がある。両端の一対は極端に長く、触腕といわれる。
 腕に囲まれたところに「カラストンビ」と呼ばれる口がある。
 墨袋を持ち、強敵に会うと墨を吐いて逃げる。
 コウイカ類は背側の中央に石灰質の貝殻が埋まっており、スルメイカ、ヤリイカなどには半透明の細い軟骨がある。

 烏賊の和名は、イカが死んだ振りをしてカラスを海中に引き込んだという伝説によって生まれたという。

 日本近海でとれる主な種類はスルメイカ、ヤリイカ、コウイカ(モンゴウイカ)、ケンサキイカ、ホタルイカなど。
 スルメイカは日本沿岸に広く分布し、スケトウダラ、カタクチイワシ、サンマ、アジなどと並ぶ多獲魚種の一つ。

 鍋物の具になるのもスルメイカが多い。函館の名物料理にイカ鍋があり、イカの塩辛で調味されている。

<作り方の一例>
(イカのワタ鍋)=スルメイカ(刺身用)のワタを取り出し、墨袋を取り除いてから塩をたっぷりと白くなるくらい振る。
 だし汁は薄口醤油、みりん、酒で味付け。他の具はこんにゃく、サトイモ、ホウレンソウなど。サトイモが煮えたら、スルメイカ、ワタと残りの具を入れる。ホウレンソウは最後に。








池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)

 (1923−1990)
 小説家。新国劇の脚本を書くかたわら、時代小説の分野に乗り出し、「鬼平もの」「梅安もの」「剣客商売」など数々のベストセラーシリーズを生み出した。
 作品中に料理を作って食べる場面を書き込み、これが大いに人気を博した。
 「小鍋立て」などの言葉は池波作品によって一般的になった。

 作中の料理について、池波は「でたらめの料理を紹介するわけにはいかない。一応自分で作ってみて、ある程度の味に達していると判断してから書きます」と語っている。

 料理の部分だけを取り出した「鬼平料理帳」「梅安料理ごよみ」という本も出版されている。
 それらによれば「鬼平」では、はまぐり鍋、どじょう鍋、うさぎ鍋、しゃもの臓物鍋、「梅安」では、しらうお鍋、いのしし鍋、てっちり、大根と油揚げの鍋、浅蜊と大根の鍋といった鍋物が登場している。








いけんだに味噌

 静岡県東伊豆・池田の味噌仕立て鍋。
 いけんだには「池田煮」のこと。キンメ、カワハギなど伊豆近海の海の幸を入れる。








石狩鍋(いしかりなべ)

 生サケ(鮭)を主材料とする北海道の鍋物。

 名称の由来は、
  @発祥の地が石狩町だから
  A石狩川を遡るサケを材料にしたから
の二つがある。

もとをたどれば300年位前、アイヌ人がサケを塩味で煮たもの(→チェブオハウ)に行き着くが、これは三平汁※に似た味だったという。
 その後、本州から和人とともに味噌が流入し、現在の鍋になった。
 当初のサケはもちろん北海道の川を遡ってくる白サケだった。
 最近は、味の面から沖取りのものが好まれ、さらに見た目のよさから紅サケを使う店が多くなった。

<作り方の一例>
(石狩鍋)=汁は味噌仕立てで、みそ汁の二倍の濃さがめど。
 ニンニク、ショウガ、ゴマ、酒粕などを好みで混ぜてもいい。
 サケはあらを多めに白子やシュンギク、ゴボウのささがき、シイタケ、エノキ、春雨、ネギ、タマネギなどを入れる。








石鍋(いしなべ)

 中国、台湾、韓国などで使われる石の鍋。各地の天然名石を削って作ったものが多い。
 熱した石から発する遠赤外線が材料の風味と味を引き出すという。
 かつて朝鮮半島のものが多くもたらされたので、朝鮮鍋とも呼ばれた。

 日本でも弥生、古墳時代、九州を中心に滑石、蝋石などを素材にした石鍋が製造されており、遺跡からの出土例が少なくない。








石焼き鍋

石焼き鍋→ストーンボイリング








いしり鍋

 いしりはイカのわたや身を塩漬けにした魚醤のこと。
 青森県には、これを何倍かに薄めてだしを作り、鍋物に仕立てた「いしり鍋」がある。
 ホタテ、イカ、エビにネギ、シイタケ、ハクサイ、ナスなどを具に用いる。ホタテの貝殻を鍋代わりに使う「いしりの貝焼き」が本来の形。








伊勢海老鍋(いせえびなべ)

 イセエビ(伊勢海老)を使う鍋物。刺身にした残りの頭やあらが味噌仕立てのだしとよく合う。
 伊豆半島、紀伊半島などの海岸地域では、これを名物料理とするところが多い。

 イセエビの形状から将軍鍋、具足鍋という名称もある。








磯鍋 磯焼き

 磯節で知られる茨城県大洗町など海産物で有名な地域に、この名を付けた海の幸の鍋物がある。
 海鮮鍋※沖すき※魚すき※も同類。焼いた石を樽に投じ、鯛などを煮る方法もある。(→ストーンボイリング








糸こんにゃく(いとこんにゃく)

 こんにゃくを糸状に細く切ったもの。
 かつては糸こんにゃくの非常に細いものを「しらたき」と呼んだが、現在は両者の区別がなくなった。
 おでんや寄せ鍋などの具として脇役的に用いられる。








犬肉鍋(いぬにくなべ)犬鍋

 中国、朝鮮半島などで食される犬肉を材料にした鍋物。

中国大陸では北部、南部に多く、中部は比較的少ない。大量の油と唐辛子を用い、味噌味が普通。
 最近の中国では犬鍋ブームで、犬の養殖も盛んに行われている。広州では黄色犬を最上、黒犬、白犬がそれに続くという。
 犬肉は香肉の別名があり、香肉鍋は犬の最上肉を使う土鍋煮を表す。雲南省では地羊肉と呼ばれている。

 朝鮮半島では犬肉を真夏に食べる風習があり、強壮食品とみなされている。焼き肉のほか鍋物もあり、「狗醤」、「補体湯」などとという名が付いている。








イノシシ(猪)

 偶蹄目イノシシ科の哺乳動物。
 日本のものはニホンイノシシと呼ばれ、北海道と東北を除いた各地の山に生息する。
 体長は最大2b、体重は300`近くに達する。

 ブタはイノシシを家畜化したもので、ブタとの混血がイノブタ。
 江戸時代はウシ、ウマなどを対象に肉食禁止令※があったが、イノシシは「山鯨」と呼ばれ、シカとともに食用になっていた。
 古来、猪、鹿ともに「しし」という読みがあったのは、肉を意味する「ししむら」という語に由来している。








イノシシ鍋

イノシシ鍋→ぼたん鍋








芋煮会(いもにかい)、芋煮鍋 芋の子汁

 山形県、秋田県などでサトイモの収穫期に合わせて、河原で行われるのが芋煮会。
 芋煮鍋、芋の子汁ともいわれる。元来は旧暦の10月1日に田の神を山に送るために新米の餅とイモ煮を食べたという伝統行事だが、サトイモは冬場の貯蔵が難しかったので、秋のうちに食べてしまう風習が源になっているという。

 現在の形のイモ煮会は明治25年ころから始まったとされる。かつては北前船で北海道から運ばれてきた干ダラやニシンを入れていたが、やがて米沢牛肉や鶏肉に変わった。山形で主として牛肉、秋田では鶏肉が用いられている。

 近年はアウトドア料理として人気を集め、観光客を呼び寄せるまでになった。
 多くはすき焼きの割り下に似た汁を用い、具は牛肉、サトイモを主体にする。豚肉を使う場合は味噌味が合うという。

 いも煮会は大人数で楽しむので大鍋を使う。山形市馬見ケ崎川の河畔で例年行われる「日本一芋煮会フェスティバル」で使われる大鍋は直径5・6b、高さ1・5b、重さ1・5d。これにサトイモ3d、牛肉1d、ネギ3500本などが入れられた。
 料理屋や家庭でで普通の鍋を使うのを、いも煮鍋と呼ぶ向きもある。

 同じようなイモ煮の行事は、仙台,会津、岐阜、滋賀、京都など各地にある。
 愛媛県大洲の「イモたき」は350年の伝統があり、サトイモ、鶏肉、こんにゃくを油で炒め、醤油仕立てにするのが特徴。
 中秋の名月の頃、県下各地の河川敷で盛大に行われている。

<作り方の一例>
=具は牛肉(豚バラ肉を加えた方がいい)、里芋、人参、こんにゃく(塩もみ、下ゆでし、手でちぎる)、シイタケ、シメジ。
 だし汁を醤油、酒、みりん、塩で調味、煮込んでからキノコ類を入れる。








イーピンクオ(一品鍋)

 中国明・清朝の宮廷料理。ニワトリとアヒルを一羽、大鍋で煮込むのでこの名がついた。
 ナマコ、フカヒレ、茸などの珍味を入れる。
 鶏とアヒルはスープのだしにするためで食べない。








囲炉裏(いろり)

 屋内の土間や床の一部を切り取って設けた炉。
古くは比多岐(ひたき)、地下炉(じかろ)とも呼ばれた。地方によって、ゆるり、ゆるぎ、いじろ、などの呼び名がある。

 通常1b四方ほどの正方形か長方形で、食物の煮炊きや暖房に用いる。
 火の上に自在鉤(じざいかぎ)や五徳を使って鍋を置く。

 鍋物はいろりがあって成立した(平野雅章氏=食文化史研究家)という説がある。
 木や紙で出来ている日本家屋は燃えやすいので、いろりを部屋の真ん中に置き、一家団らんの場が出来、鍋物文化が発祥した、という考え。
 石や土で出来ている西洋の家は暖炉を壁際に作るので、鍋物のような食生活が成立しなかったという。








イワシ(鰯)

 ニシン目ニシン科とカタクチイワシ科、ウルメイワシ科に属するもののうち、一般的には漁獲量の多いマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシなどの総称。
 日本列島沿岸で漁獲量は非常に多く、栄養も豊富なところから、かつては「海中の米」と呼ばれた。
 憶病なうえ、獲るとすぐ死に、他の魚の餌になることが多く、弱い魚(鰯)のイメージがある。

いわしの語源は
  @「弱し」
  A大衆魚で畑の肥やしにもなるので「賤し」
などの説がある。

 塩焼き、刺身、煮付けなどさまざまな料理になるが、鍋物にはつみれ※として用いられることが多い。
 筒切りにして鍋の具に用いることもある。

 古来、日本人になじみ深い魚なので、信仰や伝承とも深い関係を持つ。
 節分には鬼を追い払うためにヒイラギとともに門口にさす。
 「鰯の頭も信心から」という諺もある。

 鰯、鰯引くなどは秋の季語。秋によく見る巻積雲は鰯雲と呼ばれ、この雲が現れる時は鰯がよくとれるという。

 十月四日はイワシの日。10・4(イワ・シ)の語呂合わせ。








いわし鍋(鰯鍋)

 イワシの身をつみれにするのではなく、丸ごと、あるいは筒切りで使う鍋物。
 福岡・博多の海沿いには「いわしのちり鍋」があり、料理雑誌や料理本には各種の「いわし鍋」が登場している。

 作り方はごく簡単であり、総菜鍋物と呼んでもいいだろう。

<作り方の一例>
=新鮮なイワシの頭と内臓を取り、身を筒切りにする。鍋には薄いだし汁。沸騰したらダイコン(厚さ5_程度)とイワシを入れ、ユズの細切りを散らす。付け汁は醤油6,酢4の割合。辛子を添える。








- う -


ウエンチンリー(文乃(山かんむり)鯉)の土鍋煮

 ウエンチンリーは広東省高腰県特産のコイの一種。
 頭と尾が小さく、胸部の幅があり、タナゴを大きくした体型。

 このコイを丸ごと炒め、豚赤身肉、シイタケ、ネギなどとおもに土鍋で煮込む。美味であること、非常に高価であることで有名。








うおすき(魚鋤)

 ブリ、タイ、ハモ、サヨリなど新鮮な魚を用い、すき焼き風に仕立てた鍋物のこと。
 かつて瀬戸内海周辺では、鍋の代わりに鋤、鍬などを用いていたので、この名が生まれたという。

 ハクサイ、シュンギク、ネギ、ホウレンソウ、豆腐なども入れ、すき焼きに倣って溶き玉子をつけて食べることもある。

 海鮮鍋、磯鍋、沖すき※などと同類で、「海の寄せ鍋」といえるだろう。








ウシ(牛)

 哺乳網ウシ目(偶蹄類)ウシ科の家畜。
 体は頑丈で角をもち、尾は細い。草などを食い反芻ハンスウする。

 家畜の牛は、絶滅した野生牛オーロックスを起源とし、ヤギュウ(バイソン)やスイギュウとは近縁だが、混血は出来ない。

 和牛は黒色のものが多く、朝鮮牛は赤褐色で小形。
 肉牛・乳牛・役牛のそれぞれに多くの品種があり、肉・乳は食用に、皮・骨・角なども種々の用に供せられる。

 食用としての牛は→牛肉








潮汁(うしおじる)

 新鮮な魚貝類を塩味だけで仕立てる汁物で、タイ、スズキ、コチ、ハモなどの白身魚が主な材料。
 魚を骨付きのままぶつ切りにして熱湯で湯がき、ミツバ、ミョウガ、ウドなどとともに椀に入れ、煮出し汁を注ぐのが伝統的な食べ方。

 だし汁に濁りを出さないのが原則。
 現在では魚、野菜をいっしょに煮る鍋物式の潮汁も出てきた。








打ち豆の味噌汁(うちまめのみそしる)

 石川県の郷土料理。水でふやかした大豆を木槌でつぶし「打ち豆」を作る。
 油揚げ、サトイモ、ダイコン、カブなどを加え、味噌汁にする。








うどん(饂飩)

 元来は奈良時代に中国から渡来した小麦粉で創った菓子の一種。

 小麦粉の団子は端がない(けじめがない)から「混沌=こんとん」と呼ばれ、後に食偏がつき、さらに暖かいもの意味するために「饂飩」と表記されるようになったという。

 かつては「切麦」が普通の呼び方だった。
 また暖かいものを「熱麦」、冷たいものを「冷や麦」と区別したこともあったが、次第に「うどん」に統一された。

 切り口がまるいものを「うどん」、平たく、幅広いものを「きしめん」「ひもかわ」とする区別もあある。
 鍋焼きうどん※うどんすき※に見るように鍋物とうどんは近縁にあり、すき焼きなどでは具を食べ終えた後の「仕上げ」にうどんが好まれている。








うどんすき

 関西を代表する鍋物の名称として一般的に使われがちだが、大阪の麺類専門店「美々卯」の登録商標。

 昭和3、4年頃、「美々卯」の初代・薩摩平太郎が、すき焼きの残り汁にうどんと野菜を入れて煮込み「うどん入りすき焼き」を考案したのが始まりという。
 鍋焼きうどんが原点で、そこに季節の具を加え、ご馳走らしくして「うどんすき」と命名した。

 鰹節と昆布のだしで、具を煮る。上品な薄めの味に特徴がある。他店では「うどんちり」「すきうどん」などという名称になっている。

 現在の作り方は、太めのうどんに鶏肉、焼きアナゴ、エビ、湯葉、生麩、野菜類を昆布と鰹節のだしで煮込む。薬味には紅葉おろし、刻みネギ、すだちなどを用いる。








うなぎの土鍋煮(ワーチャンチュイターシャン)
=瓦掌(缶偏)堀(火偏)大膳(魚偏)


 中国広州の名物料理。  北風が吹く頃になると、大膳魚(田ウナギと呼ばれる小型のウナギ)がおいしくなるといわれ、「風膳」という呼び方もある。  これをぶつ切りにし、あぶり焼きした豚肉、シイタケなどとともに草菰老抽(薄口醤油)、柱候醤(味噌の一種)などで味付けしたスープで煮込む。







ウニ鍋

 ウニを主体にし鍋物。  東北など、ウニの産地でよく見かける。  生ウニとささがきゴボウ、ネギなどを塩味の出汁で煮込み、卵でとじるやり方が多い。






卯の花汁(うのはなじる)

 元来は九州の郷土料理とされている。
 粕汁に似ており、酒粕の代わりに卯の花(おから)を用いる。サケ、ブリなど塩引き魚の頭やあらが主な材料。

 最初から鍋に魚を入れ、ダイコン、ニンジン、こんにゃく、油揚げ、ネギなどを煮えやすい順に入れる。
 魚の塩味によって塩を加減し、酒を加えて調味する。

 鹿児島ではおからを「きらす」と言い、「きらすのおつけ」という汁物料理がある。








海鍋(うみなべ)

 魚介類や海産物を主体にした鍋物の総称。

 山鍋※に対応する。
 双方がいっしょになるのが山海鍋。








- え -


エスニック鍋

 エスニックは民族調を意味し、特にアジア、アフリカ、中南米の民族文化を指すが、日本では東南アジア風、中近東風をいうようだ。

 エスニック鍋は香辛料を多く使い、辛いのも特徴。
 個別にはアジア鍋、オリエンタル鍋、ベトナム鍋、タイ鍋、タイスキ※、バンコック鍋、無国籍鍋などと呼ばれている。








蝦夷汁(えぞじる)

 北海道の郷土料理。塩鮭をあぶり、3a角程度に切ったものを熱湯に浸す。
 コンブをあぶってから、もんで細かくし、焼き味噌、酒とともに鍋に溶かし込む。








エノキダケ(榎茸)

 シメジ科のきのこ。野生種は栗色で、傘は4,5aになる。
 市販されているのはビン栽培によるもので、日に当てないため白く、細長い。

 栄養分はあまりないが、歯切れのよさが好まれ、鍋物にも広く用いられている。








海老鍋(えびなべ)

 エビを材料の主役にした鍋物。
 オニエビを使う佐渡の鍋、伊勢エビを使う伊豆半島や伊豆七島の鍋など。








- お -


大敷汁(おおしきじる)

 三重県尾鷲など奥熊野沿岸の漁師料理。
 漁師たちが明け方に大敷網と呼ばれる定置網を上げた後、港へ帰る途中の船上でつくる。

 カレイ、タイ、ヤガラなど白身の魚にハクサイ、シュンギク、ホウレンソウ、ニンジン、茸類などを大鍋で煮る。
 水煮にしてポン酢醤油につけたり、味噌仕立てにしたりする。








沖すき

 猟師が獲った魚を船の上で煮たことに由来するとされる。
 うおすき※は料理屋風、沖すきは漁師風と区別する向きもあるが、どちらも海鮮鍋や鍋磯と大差はない。

 「すき」がつく鍋物はすべて関西に起源を持っているという。








おくずかけ

 宮城県に伝わる精進料理。

 ニンジン、ゴボウ、サトイモ、ジャガイモ、こんにゃく、油揚げなどを油で炒め、塩、醤油味のだし汁で煮込み、片栗粉でとろみをつける。
 そうめんを入れることもある。








荻昌弘(おぎ まさひろ)

 (1925−1988)
 映画評論家。テレビの「月曜ロードショウ」の名解説者として人気があった。

 食通として知られ、料理や食べ物に関する著作には「男のだいどこ」がある。
 同著の中で、「某年、厳しく思い立つことあって、一冊の本を著そうと志した。署名が真っ先に決まって、これが『鍋物大全』である。(略)峻烈に自らへ問い直す、われらの内なる鍋料理、人間にとって鍋ものとは何か。その哲学、由来、製法、味覚…と記し来れば、これ、ただに実用価値甚大たるのみではないだろう。またもって、汝祖先の遺風を顕彰するに足らんや。社会学、人類学、なかでも当節、肩で風を切る生態学に対しても、若干のアカデミックな貢献を期待しうるのではあるまいか」と戯文風に書いている。
 『鍋物大全』というタイトルを先に発表したことについて、荻氏は「先にツバをつけておく行為」だと説明する。この書名はだれにも渡さぬ、という意志の表明でもあった。

 惜しくも氏は1988年7月2日、62歳でに亡くなり、『鍋物大全』は上梓に至らなかった。
 このホームページを中心とする全日本鍋物研究会の活動は、荻氏の遺志を継ぐものといえるだろう。








おきりこみ おっきりこみ

 上州(群馬県)の郷土料理。  中曽根康弘氏が総理大臣になったころ、同氏の郷土・群馬には有名な郷土料理がないことが問題になった。  そこで県の関係者が「おきりこみ」の売り出しを図ったところ、全国的に名が通るようになったという。  大根、人参、ジャガイモなど手近にある野菜と幅の広いうどんを煮込む。  汁は醤油仕立てか味噌仕立て。具を炒めることもある。  東上州では、ほうとう、にぼうとも言い、山梨県のほうとう※と同系統の料理と考えられる。







おじや

 雑炊と同義。漢字の表記は於慈也。

 古くは「こながき」(穀物の粉を湯でこねたものが原点)と言われ、雑水、増水、いれめし、にまぜ、とも呼ばれた。
 元来は宮廷の女性言葉で、じやじやと煮るところからこの語が生まれたとされる。
 江戸中期の民間風俗を記した「守貞漫稿=別名・近世風俗志」(尾張部守貞著)に「江戸にては男女専らおじやという」とある。
 ある時期まで、関西では男が雑炊、女がおじやと呼び分けており、関東では男女ともおじやと言っていたのだろうか。

 ご飯の残りをだしで煮るのが通常のやりかただが、鍋物を食べ終えた後の汁にご飯を入れ、玉子でとじる(または、いっしょに煮込む)のが最高とされる。

 おじや、雑炊は冬の季語。
 次の句は蟹鍋を食べた後の雑炊を詠んだものだろう。「雑炊に蟹のくれなひひそめたる」(山田明子)。








おでん

 元来は味噌田楽のこと。
 現在でもこんにゃくの田楽を「おでん」と呼ぶ地域がある。
 漢字の表記は御田。

 豆腐やこんにゃくに2,3本の串を刺し、味噌をつけたものが原型。
 今日のような「煮込みおでん」になったのは江戸時代だが、醤油味ではなく、味噌仕立てだった。

 歌舞伎・慶安太平記には丸橋忠弥の有名なせりふ「煮込みのおでんで、やっちょるね」がある。
 「濁酒(どぶろく)の燗を御田の鍋でする」(古川柳)

 当時のおでん屋では、おでんには燗酒や菜飯がつきものといわれた。
 菜飯は後に茶飯※に変わった。

 明治時代になって関東地方で、こんにゃく、豆腐、里芋、はんぺんなどを醤油味のだしで煮込んだものを「おでん」と呼ぶようになった。
 そのころは惣菜屋や駄菓子屋で売るご飯の「おかずもの」だったが、次第に家庭的な料理となり、鍋物として独立した。
 近年はゆで卵、キャベツ巻き、ウィンナーソーセージなどを入れることもある。

 関西では昭和30年代までは味噌田楽を「おでん」、関東風おでん「関東だき」「煮込みおでん」などと呼んでいた。
 関東風おでんが「おでん」になったのは、新幹線が開通してから、といわれる。
 醤油味の濃い関東のものに比べ、関西はだしを効かせた上品な味に特徴があり、牛すじ肉やころ(クジラの皮下脂肪)も好まれている。
 関東だきに対抗して「関西だき」(森繁久弥の命名という)と呼び分けることもある。

 サントリーが1995年に行った鍋物とビール調査の「家庭で作る鍋料理アンケート」(250人複数回答)では、おでんが84・8%で第1位。2位はすきやき、3位は湯豆腐だった。

 おでんは冬の季語。「戸の隙におでんの湯気の曲がり消え」(高浜虚子)

<作り方の一例>
(関西風牛スジおでん)=牛すじ肉を10分ほどゆで、余分な脂肪を取り除き、適当な大きさに切って竹串に刺す。
 ニンニク、ショウガ、ネギの青い部分とともに牛スジの串を一時間煮込む。
 醤油、砂糖、みりん、塩で調味しただしを鍋に張り、大根、こんにゃく、ゆで卵、厚揚げ、ネギを入れて煮る。
 薬味は七味か唐辛子。








お煮かけ

 長野県の郷土料理。人が集まる時によく作られる。

 そばかうどんが主体で、鶏肉、ダイコン、ニンジン、油揚げなどのほか、春には山菜や青菜、秋には茸類を入れる。
 そば(うどん)は茹でて、ざるの上に小さく分けて並べておく。
 だし汁は醤油、みりん、砂糖(少量)で味付けする。具を大鍋で煮込み、とうじ籠(柄つきの小型さる)に入れたそばを鍋でゆすいで温め、椀にそば、具、汁を入れる。
 煮えた汁をかけるところから、お煮かけの名が生まれたという。








おろし汁 おろし煮

 汁料理の一種。
 鶏肉、白身魚、貝類、野菜などを比較的薄味のだしで煮込み、まず具だけを取り出して各取り皿に盛る。
 残りの汁に大根下ろしの絞り汁を入れ、一煮立ちしたら、おろししょうがや刻み葱を散らし、取り皿にたっぷりと掛ける。
 おろし煮は、魚の切り身を油で炒めてから、以上のような手順で料理する、と書いた本もある。






- か -


海鮮鍋

 新鮮な魚介類を用いた鍋物。
 海辺の観光地でよくこの名を見かけるようになった。

 磯鍋、沖すきと呼ばれる物と大差はない。いずれもさまざまな材料を使うケースが多いので、寄せ鍋の一種といえるだろう。

<作り方の一例>
=材料の主体は鯛、鱈などの白身魚。あらでだしを取り、内臓は使わない。
 ハマグリ、エビ、ホタテ貝のほかシメジ、白菜、豆腐なども入れて、酒、みりん、薄口醤油、塩(少々)で味付けしただしで煮込む。








貝焼き味噌

貝焼き味噌→けやき(貝焼き)味噌








貝柱(かいばしら)

 乾燥した貝柱は、アワビ、フカヒレ、ナマコ(いずれも乾物)とともに、中国料理の「四珍」といわれる重要な食材。
 だしの材料としても貴重。

 鍋料理では隠れた主役としての存在感を示す。
 ホタテ貝、イタヤ貝、タイラギなど、肉柱が大きく太いものが乾物に適している。








カキ(牡蠣) カキ鍋

 海岸付近から深海部の岩場にいる貝類。
 二枚貝だが、一方が岩などに付着しており、殻は蓋になる方が小さい。

 岩から掻き取るところから、その名が起こったという。

 日本で一般に食用にされるのはマガキ。
 養殖に適しており、縄文時代から養殖に類したことを行っていたと考えられている。

 広島では元禄年間(1600年代末)には養殖が行われていた。
 広島から大阪への牡蠣料理店進出も盛んで、淀屋橋、戎橋、本町橋の下などで牡蠣船を出して営業していた。宮城県の松島でも同じ頃、内海庄左衛門という人が「取ってばかりでは減る一方」と考え、カキの稚貝を集めて、湾内に放したという。

 牡蠣鍋は味噌仕立てにする事が多く、味噌を土鍋の縁に塗りつけたのを土手鍋※という。
 近年、料理屋などでは普通の味噌汁仕立てが多く、「土手型」はあまり見かけなくなった。
 昆布だしだけで水煮し、ポン酢醤油などで食べる「牡蠣ちり」もある。
 養殖カキの産地、広島と宮城の鍋はやはり味噌仕立てが多い。広島の牡蠣鍋は味噌が甘め、宮城のは辛めといわれている。

 カキは冬季が旬で、英語の月名でrのつく月は食べてもいいといわれている。

 冬の季語。
「牡蠣鍋に肝胆照らすこともなし」(後藤比奈夫)

<作り方の一例>
(牡蛎ちり)=カキは中型の生食用を選び、よく洗っておく。
 土鍋に昆布を敷き、ハクサイ、シュンギク、ネギ、しらたき、豆腐など淡泊な味の具を煮えにくい順に鍋に入れ、カキは最後に。カキも野菜も煮えすぎないうちにポン酢醤油で食べる。








加減酢(かげんす)

 料理の用途に応じて、酢に調味料や香辛料を適宜に加えたもの。
 甘酢、たで酢、ごま酢、にんにく酢、二杯酢、三杯酢などがある。鍋物の付け汁によく用いられる。








火鍋子(かこうし)

火鍋子(かこうし)→火鍋(ひなべ)








カジカの味噌汁

カジカの味噌汁→なべこわし








かしわ

 関西や名古屋方面で言う鶏肉のこと。
 もともとは中国渡来の黄褐色のニワトリを黄鶏と書き「かしわ」と読んでいた。羽色が柏の葉の色に似ているからだという。

 名古屋には「かしわ鍋」や「かしわの白煮」などの鍋物がある。

<作り方の一例>
(かしわの白煮)=鰹節、昆布でだしを取り、水炊きにする。鶏の手羽肉、挽肉の団子、鶏もつ、かまぼこ、豆腐、シュンギク、ネギなどを煮えにくい順に鍋に入れる。
 付け汁はポン酢醤油で、卵黄、大根下ろし、粉山椒なども入れる。








粕汁

 酒粕を主体に白味噌などを加えた汁物。
 卓上に鍋を置き、直接取って食べる場合は、粕鍋、粕汁鍋と呼んでもいいだろう。

 多くはサケ、タラ、ブリなどのあらを具にする。
 埼玉県や兵庫県には油揚げを用いる伝統的な精進タイプもある。

 冬の季語。
「粕汁や野の風遠くわたる音」(水原秋桜子)

<作り方の一例>
(鮭の粕汁鍋)=塩鮭のあらをぶつ切りにして熱湯をかけ、汚れや鱗を取り除く。
 酒粕を少量のだし浸し、味噌を加えて擂り鉢で擂っておく。
 サケにダイコン、ニンジン、サトイモ、こんにゃくなどを鍋に入れ、煮上がったら酒粕を入れ、ネギの小口切りを散らす。








カタクリ 片栗粉(かたくりこ)

 カタクリはユリ科の多年生草本。
 この根茎を細かくくだき、水に沈殿させたものが本来の片栗粉で、鍋物、吸い物などに溶き入れてとろみをつける。

 ただしカタクリの生産量はごく僅かなため、ジャガイモやサツマイモのでんぷんが「片栗粉」として売られている。








カツオ(鰹) 鰹節(かつおぶし)

 カツオはスズキ目サバ科マグロ亜目カツオ科に属する海水魚。
 マグロ類と近縁で、英名では「tuna」としてマグロ類に入っている。
 カツオ(マガツオ)は最大級で体長は80a、体重は10`に達する。
 熱帯、亜熱帯の海に生息し、黒潮に乗って北上、日本近海では三陸沖にまで達する。

 刺身やたたきで食されることが多く、煮ると身が固くなるので鍋物にはあまり適さない。
 しかし鰹節になれば、だし汁や付け汁の原料として鍋物に欠かせない存在となる。
 カツオと呼ばれる同種には、ソーダガツオ(丸ソーダ、平ソーダ)、ハガツオ(キツネガツオ)などがいる。

 鰹節はカツオ(主としてマガツオ)の身を煮た後に乾燥させたもの。
 非常に硬くなり、長持ちするので、これを削ってだしの材料に用いる。

 1674年に紀州の漁師が創案したといわれるが、確かではない。
 3`以上のものは三枚に下ろしてから身を縦に切り(身割り)、上(背)の部分を「雄節」、下(腹)の部分を「雌節」と呼ぶ。
 小さなものの半身を身割りせずに作ったものが亀節(ソーダガツオの場合が多い)。

 カツオ以外ではサバ、マグロ、ウルメイワシなどが削り節の「花ガツオ」として鰹節の代用品になっているが、サバ節は西日本で重用されている。








かっけ鍋

 そばの名産地、岩手県の庶民的な料理。
 元来はそばを切った時に出来る切れ端(かけら、かっけ)を用いていたので、そばかっけともいう。

 平たくのばした三角形や四角のソバを大根や豆腐と煮て、おろしニンニク、ニンニク味噌、ネギ味噌などをつけて食べる。

 祝い事などで客が大勢来るとき、ソバを大量に作ったので、切れ端も多く出来た。
 客にいいものを出し、家の者はお余りの切り端を食べたという風習の名残。








割烹(かっぽう)

 元来は肉を割き、煮るという意味。
 古い文献にある「割鮮」という言葉と対応しているようだ。
 それに従えば鍋物や煮物は割烹、刺身やなますは割鮮、と分類出来るだろう。

 後に割鮮が消え、割烹が調理全般、さらに料理店を表すようになった。








仮名垣魯文(かながきろぶん)

(1826−1894)
 幕末、明治初期の新聞記者、小説家。
 ユーモアや風刺に富んだ戯文で知られた。
 仮名読新聞、魯文珍報などの新聞を発行し、小説でも大いに人気を博した。

「西洋道中膝栗毛」のほか「安愚楽鍋※」を著し、明治初期に流行った牛鍋屋(牛屋)の様子を今日に伝えた。








カニ(蟹)

 節足動物門甲殻綱十脚目の短尾類で、長尾類(エビ)、異尾類(ヤドカリ)に対応する。
 世界中で5000種、日本では1000種がいるといわれている。
 日本産で食用にされるのは、海に住む大型のゲガニ、ズワイガニ、タラバガニ、ガザミ(ワタリガニ)、ハナサキガニなどが主な種だが、淡水産のサワガニやイシガニなど小型を含めて種類が非常に多い。
 だしがよく出るので、いずも鍋物にも適している。

 食用としての旬は、川ガニが春、海ガニが冬とされる。

 俳句の季題で夏とされるのは、梅雨の時期に川ガニをよく見かけるからだという。








カニ鍋 カニすき

 金沢など日本海側各地の名物料理。

 関西風に「カニすき」と呼ばれることが多い。
 具はズワイガニを主体に豆腐、ネギ、白菜、シュンギクなど。昆布と鰹節のだしに薄口醤油と塩だけで味付けする。
 甘みはカニの肉と野菜に頼り、砂糖を入れないのが本来のスタイル。
 調理のこつはカニを煮すぎないこと。カニの肉は鍋に入れて2,3分後が食べ頃といわれる。
 脚の肉をだし汁でゆすいで食べるしゃぶしゃぶ風もある。








ガニマギ

 福島県相馬地方の郷土料理。

 モクズガニ(モクゾウガニ)を甲羅や脚もいしょに臼でつき崩し、鍋で煮る。カニのミンチがふわふわ浮いてきたら、豆腐、ネギを加え、醤油や酒で汁の調味をする。
 冬暖まる料理とされている。








紙鍋(かみなべ)

 和紙を折って鍋としたもの。

 針金のザルに和紙を置いて鍋変わりにしたものもある。
 この名称は大阪曾根崎新地「廬月」の登録商標になっているが、江戸時代から和紙にこんにゃく玉の糊を塗って燃えにくくした紙鍋が存在していた。

 廬月の紙鍋は、タイ、サワラ、エビ、イカなどの魚介類、タケノコ、ギンナン、生湯葉などを入れ、ポン酢で食べる上品なもの。
 紙鍋の価値は紙を火の上に掛けるという意外性にあり、高級料理店の料理の一つとして膳に並ぶことが多い。








カブ(蕪) カブラ

 アブラナ科の越年草。
 原産地は欧州かシベリア温帯と考えられている。
 スズナともいわれ、春の七草の一つ。

 三国志の諸葛孔明が行軍の先々に栽培させておいた、という故事から「諸葛菜」の名もある。
 中国から日本へダイコンより早く渡来した。
 奈良、平安時代から重要な作物となり、多くの品種が作り出された。
 総菜用のカブのほか、聖護院カブ、酸茎菜(すぐきな)、日野菜、野沢菜もカブの一種。

 古来、カブは汁物の実として広く好まれてきたが、鍋物にはさほど利用されていないようだ。

 蕪は冬の季語。
「大鍋に煮崩れ甘きかぶらかな」(河東碧梧桐)








かぶす汁

 かぶすは富山県氷見地方の漁師言葉で分け前のこと。
 漁で捕れた雑魚を分け前の一部として、みんなで鍋にして食べる。

 味噌仕立てで、魚はアジ、イワシ、イカ、タコ、カワハギなど何でもよく、野菜は白菜を入れるくらい。
 だしは魚から十分に出るが、酒を大量に入れることもある。








カムジャンタン

 豚の背骨をじっくり煮込んだ韓国の鍋物。
 浅い鍋にコチジャン、ニンニクを効かせたスープにジャガイモ、ネギ、ピーマン、もやしなどを入れる。
 豚の背骨についている肉を取りながら食べる。豚の背骨の代わりにスペアリブを使うこともある。








鴨鍋(かもなべ) 鴨すき

 鴨肉を主な材料にした鍋物のこと。
 琵琶湖周辺ではこれを名物料理にしている。

 鴨肉や鴨のたたきを主体に、ダイコン、ハクサイ、シイタケ、ネギ、ミツバ、豆腐、しらたきなどを入れ、醤油、砂糖、酒ですき焼き風の味にする。
 鴨のたたきは、胸肉を骨ごとたたき、玉子を混ぜて練り、つみれ状にしたもの。

 島根県には隠岐島付近で取れたアワビの貝殻を鍋に用いた鴨の貝焼き(けやき)がある。

 宍道湖に飛来した鴨を主な材料にしている。
 江戸時代、松江の殿様が宍道町の本陣に宿泊したときに食したという。

 渡辺淳一のベストセラー小説が原作の映画「失楽園」では、主人公男女が心中を前にして鴨とクレソンの鍋を食べている。

 鴨は冬の季語。
「鴨鍋や夜更けて修羅となるわたし」(桂信子)








鴨たたき

 コノシロ(魚)を用い、鴨に似た味を出す四国・伊予の郷土料理。

 コノシロの内臓と目を取り除き、頭もいっしょに細かく叩き、豆腐ととともに混ぜて小さな団子を作る。
 鴨鍋のようなだし、具を用意し、コノシロの団子と煮る。

 贅沢な料理に飽きた通人が考え出したという。








かやき(貝焼き)

かやき(貝焼き)→けやき








かやく(加薬)

 関西に発した言葉で、料理の副材料のこと。
 主材料になる肉や魚に加える野菜類をいう。

 すき焼きでは、牛肉に対するネギ、こんにゃく、豆腐など。
 ちりでは、魚に対するハクサイや豆腐など。
 具、種と同じと考えられる。








がら(骸)

 動物性食品の可食部分を取り除いた「残骸」
 だしを取るための煮出し材になる。
 特に鶏ガラ、豚骨は鍋物やラーメンのだし材として重要。








辛子 芥子(からし)

 カラシナ(アブラナ科の一、二年草本)の種を粉末にした香辛料。
 和がらしと洋がらし(マスタード)に分かれるが、一般には和がらしを指す。

 カレー粉や芥子漬けなどの原料になるが、これを微温湯や水で練った「練り辛子」は、おでんに欠かせない。
 また芥子醤油、芥子味噌も鍋物の付け汁に用いられる。

 洋がらしもアブラナ科の種を原料としている。








唐鋤(からすき)

 正しくは唐黎、または黎(すき)。
 牛馬を利用し、畑を起こす道具のことで、人力を用いる鋤(すき)とは形状が違う。

 多くの料理研究書などでは、すき焼き※魚すき※などの原点として、唐鋤を用いた料理法を挙げている。
 しかし唐鋤の構造は主として木製であり、どのようにしてこれを調理用具としたのか不明。

 鋤の前方にシャベル状の金具が縦についているが、壊れたような鋤からこれを外して用いたのだろうか。
 現在のシャベルと同じ形の「金鋤」(かねすき)の方が焼き肉用に相応しいかもしれない。

 また肉類を醤油に漬け、鍬の上で焼いた「鍬焼き」がすき焼きに近い、という見方もある。








川煮(かわに)

 新潟県村上市の郷土料理。
 村上市の市内には三面川が流れており、ここでとれるサケを輪切りにし、味噌仕立ての鍋物にする。

 河原に大鍋を用意し、大勢で楽しむのが元来のやり方。
 後に料理屋や家庭でも「川煮」料理を作るようになり、具をざるに上げてから、わさび醤油、生姜醤油などをつけて食べるようになった。








ガン(雁)

 カモ目カモ科に属する鳥の大型鳥の総称。
 「カリ(雁)」「カリガネ」は古名。

 シベリアで繁殖し、日本に渡ってくる種はマガン、ヒシクイが主なもの。
 江戸時代は将軍の鷹狩りの対象として保護されていたが、明治以降、狩猟や沼沢地の土地開発によって激減した。

 古来、カモよりも美味とされ、明治維新前後、上野に雁鍋という店があった。
 しかしガンを庶民が食する機会は少なかったようだ。








がんもどき(雁擬)

 豆腐の加工品。
 豆腐を崩して水気を取り、ささがきごうぼう、ニンジン、キクラゲなどを加えて丸め、揚げたもの。
 おでんの材料に欠かせない、といわれた。
 雁の味に煮ているところからこの名が付いた。

 関西では「ひりょうず」「ひろうず」(飛竜子、飛竜頭)といわれるが、これはポルトガル語のフィリオース(牛乳、卵、小麦粉、バターなどをこねて揚げたもの)に由来するという。








- き -


北大路魯山人(きたおうじ・ろさんじん)
(1883年―1959年)
 書、篆刻、陶芸など多方面に活躍した芸術家で、料理研究家として知られる。

 茨城県の郷土料理だった鮟鱇鍋を広く紹介、すき焼きの手法を考案して関東風すき焼きを発展させた。








菊花鍋(きっかなべ、中国読み=チュホワクオ)

 中国南部の鍋物で、上海料理に属する。
 菊の花は中国では有史以前から食用になっており、東周時代(前4世紀)の詩人・屈原の詩に「夕餐秋菊之落英=夕方には秋菊のはなびらを食べる」の一節があり、日本でも古くからこの鍋物の存在が知られていた。

 一般で食される菊花鍋は菊花を主役に川エビ、青魚(コイ科)、アヒルの砂肝、鶏肉、ほうれん草、シイタケなどを澄んだスープで煮る。
 付け汁は醤油とゴマ油で調味。菊花はしゃぶしゃぶ式にする。

 清朝の宮中でも好まれていたが、こちらは干し貝柱、高野豆腐、豆腐、春雨、油条(小麦粉を油で揚げたもの)、白身魚、菊の花と、煮えにくい順に鍋に入れ、醤油や酢醤油につけて早めに食べる。
 食べ切ったらまた入れる方式。








紀州鍋(きしゅうなべ)

 黒鯛のちり鍋のこと。

 この魚がたくさんとれる和歌山県などでこう呼ばれている。
 冬季は黒鯛の味が落ちるので、刺身よりも鍋物の具に使われがちだという。








汽鍋(きなべ、中国語読み=チークォ)

 もともとは中国雲南省の炊事用具だった。  比較的低い蓋付きの土鍋で、中央に蒸気を通す筒が立っている。筒は銅製火鍋に見るような太さはなく、高さも鍋の縁まで。水の張った大鍋(壺)を別に用意し、煮立ったら具の入った汽鍋に蓋をして入れる。  蒸気が筒から汽鍋の内部に入り、中の材料を蒸し煮にする。  蒸気が鍋の中を循環する仕組みなので、温度は安定しており、煮詰まることもない。  北京の康楽餐館が1960年代に初めて紹介したのがきっかけとなり、鍋物用の鍋として有名になった。  現在の製品は紫砂石に粘土を混ぜて焼いた茶色のものが多い。  この鍋を使う代表的な料理には200年以上の伝統を持つ汽鍋鶏(雌鶏とタケノコ、シイタケなどを塩、砂糖、紹興酒のスープで煮込む)がある。







きのこ(茸、菌) きのこ鍋

 きのことは菌類が形成する大型の子実体に与えられた一般的な用語で、「木の子」を意味する。

 種類は約7000といわれ、食用となり市場に出てくるのは15種前後で、ほとんどが人工栽培によっている。
 成分の大半は水分だが、ミネラルやビタミンが多く含まれているものが多い。

 鍋物にはシイタケ※エノキダケ※マイタケ※シメジ※、ナメコなどがよく用いられる。
 各地には土地のきのこを用いたきのこ鍋がある。








キムチ

 朝鮮半島の漬け物の総称。
 ハクサイ、ダイコン、青菜などを唐辛子、ニンニクなどの香辛料、魚介類の塩辛とともに漬け込む。
 種類は数十に達し、主なものでは材料によってベチュ(ハクサイ)、カットウギ(ダイコンを角切り)オイギムチ(キュウリ)、トンギムチ(野菜の丸漬け)などがあり、いずれも相当な辛さ、独特の味と香りがある。

 日本では白菜キムチがすでに一般化し、大量に生産、消費されている。鍋物でもキムチ鍋が人気を獲得し、大相撲各部屋のちゃんこ鍋でもキムチ味の割合が増えているという。

 17世紀前半までのキムチは、野菜をニンニク、サンショウ、ショウガと塩で漬けたもので、唐辛子は使っていなかった。
 唐辛子が使われるようになったのは17世紀の後半からで、キムチの作り方や種類が多様化してきた時期と一致している。

<作り方の一例>
=豚バラ肉の薄切り、タラを一口大に。他にハクサイ、ホーレンソウ、豆腐、しらたき、エノキダケなど。チキンスープの素とキムチの素で好みの味付け。塩か味噌を少々入れて、塩味を調整する。








キャベツ

 アブラナ科の1、2年生草。
 別名はカンラン(甘藍)、結球カンラン、タマナ(玉菜)、牡丹菜。ヨーロッパ原産で、カリフラワー、ブロッコリーなどと近縁。

 栽培種としての日本渡来は1874年に米国から種子を輸入したのが最初とされ、1904年に一般的な蔬菜として市場に登場した。
 90%以上が水分だが、良質のタンパク質やビタミンcが含まれている。

 ロールキャベツで代表されるように、煮込むと柔らかさとうまみが増し、鍋物にも広く用いられている。

 キャベツは夏の季語。








牛(ぎゅう)、牛肉

 日本には古来、肉食を禁止する制令と習慣があった。
 生類を哀れむ仏教の教えに原点があり、農耕に必要な牛馬を大切にする考えにもよっている。

 大国主命(おおくにぬしのみこと)が農民に牛を食べさせたという伝説があるが、仏教の伝来によって次第に肉食禁忌の風習が強まったと考えられている。
 制度としては674年、天武天皇が家畜殺傷の禁断令を出したのが始まり。これによってウシ、ウマ、イヌ、サル、ニワトリの肉食が禁じられた。(→肉食
 以来、江戸時代に至るまで何度も同様な制令が発せられている。江戸末期にはその風習が徐々に薄れ、明治初期にようやく牛鍋が公に食されるようになった。

 牛肉は今日、鍋物に限ってもスキ焼き、しゃぶしゃぶなどに広く用いられている。

 味のいい和牛として但馬牛(兵庫県)、近江牛(滋賀県)、米沢牛(山形県)などが有名。
 但馬牛は神戸牛として販売されており、これを三重県松坂で肥育したものが松坂牛である。
 近年は豪州、ニュージーランド、米国などからの輸入も多くなっている。








牛鍋(ぎゅうなべ)

 明治維新とともに発達した牛肉の鍋物。
 文明開化の地、横浜で幕末に発祥したとされるが、大阪の方が先だったかも知れない。

 福沢諭吉は「福翁自伝」の中で「(緒方塾の塾長をしていたころ=1850年代後半)大阪で牛鍋を食わせる所はただ二軒ある。(略)一人前百五十文ばかりで牛肉と酒と飯と十分な飲食であったが、牛は随分硬くて臭かった」と書いている。

 横浜で初めての牛鍋屋「伊勢熊」が開店したのは1862年。
 居酒屋・伊勢熊の主人が牛鍋の将来性に目を付けたが、妻が反対、店を半分仕切って開店したところ、牛鍋の方が大繁盛しいたという。
 1867年には事業家の中川嘉平が東京・荏原で屠牛場を開設、同年、芝に牛鍋の中川屋を開店している。
 また1868年、能登の出身者・高松音松がぼたん鍋※にヒントを得て牛鍋を考案した、という話もある。
 明治初期には東京市中に牛鍋屋が相次いで開店。近江から近江牛三頭を運んでやってきた米屋の久次が浅草で開店し、大いに庶民の人気を呼んだのが「米久」である。

 「士農工商、老若男女、賢愚、貧福おしなべて牛鍋食わねば開化不進度(ひらけぬやつ)」(仮名垣魯文著「安愚楽鍋」)

 「このころ(明治3年)より、牛鍋を食べさせる店が繁盛しはじめる。仏教の力が弱まり、肉食が文明の象徴となったため、異人館に牛肉を納入する横浜の中川屋が、東京・芝に一般人用の店を出したのが始まり」(星新一著「夜明けあと」)

 そのころの牛鍋は薄切りの味噌味で、牛肉の他はネギしか入れず、東京ではこれを一般的に牛鍋と呼んでいた。
 「すき焼き」と変わったについては「大正12年の関東大震災ののちに関西風の呼び名になった」「震災を逃れて関西に避難した歌舞伎役者がこの名を持ち帰った」などといわれる。
 しかし仮名垣魯文※の「安愚楽鍋」には「すき焼き」の語が登場しており、「大震災以後」の説には検討を加える必要があるだろう。








魚頭鍋(ぎょとうなべ、中国読み=ユィトンクオ)

 中国・蘇州の料理。清代には宮廷料理に加わった。

 大きな川魚の頭(五百c以上)を醤油、砂糖、酒で味付けし、油で揚げたものが具の中心になる。
 魚頭を平鍋の真ん中に置き、キノコ、干しエビ、タケノコ、春雨、ハムなどを加え、醤油、砂糖味の鶏スープで煮込む。
 雉肉の薄切りを入れることもある。








きりたんぽ鍋

 秋田の代表的な郷土料理。

 うるち米を硬めに炊いて、ご飯の熱いうちに粘り気が出るまでついたものを杉の棒に竹輪状に巻き付けたものがきりたんぽ(切短穂)。
 杉の棒をいろりの周りにたてて、焼き上がったのを棒から外し、適当な大きさに切る。
 これを具にした鍋物がきりたんぽ鍋。

 もともとは木こりや猟師の携帯食で、特別な名称はなかった。江戸の後期、藩主が花輪(鹿角市の中心地区)に巡視に来た際にこれを献上、名称を問われた者がとっさに「きりたんぽ」と答え、この名が生まれたという。
 たんぽとは綿を布などでくるんだものをいい、練習用の槍先につけたびが槍たんぽ。きりたんぽはこの形に似ている。

 鍋物としては、秋田県大館市の南、比内鶏で有名な比内地方で考案され、周辺に広がっていったという。
 醤油仕立てで、本格的なものは,比内米のきりたんぽ、比内鶏、根付きのセリを用いる。

<作り方の一例>
(一般家庭風)=杉の棒を用いいろりで焼くのは難しいので、一般家庭では「だまこ※方式」が簡単。
 普通に炊いたご飯を熱いうちにすりこぎでつぶし、ゴルフボール大に握る。これをオーブンかグリルで表面がかりっとするように焼く。
 醤油、酒、みりん、塩(少々)のだし汁で鶏もも肉、シラタキ、ゴボウ(ささがき)、人参、きのこなどとともに、「だまこ」を入れて煮る。








- く -


具(ぐ)

 第一義は「道具」だが、「料理に添える物」の意味を持つようになった。
 さらに雑煮や五目ずしの肉、魚、野菜類などを意味するようになり、「鍋物に入れるもの」の意味にも用いられる。

 →かやく








グァンクオ(○(草冠に専)鍋)

 中国・杭州の料理。西湖でとれる○菜という貴重な野菜を用いる。
 清乾隆皇帝が大いに好んだという。

 鶏肉、黄魚(スズキに似た魚)、豚の腎臓、○菜などを塩味のスープで煮込む。








クエ(九絵)

 スズキ目スズキ科の海水魚。
 本州南部近海沿岸の岩礁地帯に住み、体長1b以上に達する。

 白身で非常に味がよく、マハタ※アラ※などともに鍋物として珍重されている。
 紀伊半島のクエ鍋や高知などのクエの水炊きが有名。
 クエの味を生かすために鍋に昆布を敷いただけの水煮にし、他の具はハクサイ、ネギ、エノキダケ、しらたきなど淡泊なものにする。
 ポン酢醤油に紅葉下ろしで食べる。








鯨鍋(くじらなべ) 鯨汁

 クジラの肉や皮下脂肪をネギや青菜とともに味噌仕立てや醤油仕立てにする鍋物。

 江戸、明治時代は年末のすす払いの夜食にする習慣があった。
 北海道の松前、江差など日本海沿岸の各地では正月に欠かせない料理で、塩蔵の脂身を短冊に切り、焼き豆腐、こんにゃく、ダイコンなどとともに煮込む。

 新潟では夏期の料理で、鯨の脂身によく合う越の丸というナスといっしょに味噌仕立てにする。
 →はりはり鍋

 冬の季題。
「鯨鍋夜の海鳴りに眉を上げぬ」(深見涼哉)








薬食い 薬喰(くすりぐい)

 寒中に、体を温めるため、栄養をつけるため、などという理由をつけて猪や鹿の肉を食べる風習。
 江戸時代は獣肉を食べることが禁止されていたので、人目をはばかるように行われていた。

 江戸末期には禁則が緩み、ももじ屋※などに行けば、ぼたん鍋※もみじ鍋※といった料理を公然と食べられるようになった。
 これが牛鍋※すき焼き※に変わっていったと考えられる。

 薬喰は冬の季題。
「衝立にへだてられつつ薬喰」(柏崎将晴)







具足煮(ぐそくに)具足鍋

 イセエビやクルマエビをぶつ切りにして殻付きのまま煮込む煮物、または鍋料理。
 エビの形が具足(甲冑)に似ているところからこの名が生まれた。
 長崎県島原の郷土料理に具足鍋がある。








- け -


鶏卵(けいらん)

 ニワトリの卵。  タンパク質やビタミン類を多く含み、牛乳とともに「理想的な食品」とされる。
 通常、「卵」は鶏卵を指し、「玉子」は料理用鶏卵や鶏卵を材料にした料理に限って用いられる。

 料理の用途はわめて広いが、鍋物に使われるのは比較的少なく、おでんのゆで卵、すき焼きの付け汁に入れる生卵が代表的。








けの汁(粥の汁)

 青森県に伝わる旧正月の料理。
 青森・和徳城落城の前日、兵士たちが残りの食料を細かく刻み、大鍋で煮て食べたことに由来するという。

 焼き干し、昆布、ニンジン、ゴボウ、ワラビ、ジャガイモ、凍み豆腐、油揚げなどを赤味噌で煮込む。








貝焼き(けやき)味噌

 青森県弘前などの郷土料理。
 ホタテの貝殻を鍋にし、味噌仕立てにするのが普通の形式。

 赤味噌の汁にホタテ、マガレイ、ヤリイカ、身欠きニシンなどの海産物や野菜、山菜を入れる。
 カドと呼ばれるサメの一種を入れると味が良くなるという。
 かいやき、かやきとも呼ばれる。

<作り方の一例>
=身欠きニシンを前日から米のとぎ汁に漬け、柔らかくしておく。
 一口大の身欠きニシン、ゴボウ、人参、葱、豆腐などを味噌仕立ての汁(酒、みりんをプラス)で煮る。
 薬味には七味が合う。







けんちん汁(巻繊汁、巻煎汁、巻蒸汁)

 禅僧が中国からもたらした料理とされ、宋音のケンチャン(巻繊)が語源という。
 「けんちゃん」「けんちょう」などの名もある。卓袱(しっぽく)料理※の一つ。

 元来は黒豆のもやしなどをごま油で炒め、卵焼き、昆布、湯葉などで巻いたもの(巻繊は細い物を巻く意味)だった。
 後に大根、人参などの野菜類や豆腐、キノコを油で炒め、醤油,酒などで調味した汁物となった。
 蒸し物の「けんちん蒸し」もある。

 鹿児島ではけんちん汁を郷土料理とするが、広く全国で作られている。
 関東では必ず油揚げを入れるとされるほか、肉を入れる(入れない)、魚を入れる(入れない)、炒める(炒めない)、塩味だけ(味噌や醤油もいれる)、など各地、各家庭によってさまざまな作り方があるようだ。

 最近では鍋から直接食べる「けんちん鍋」も現れてきた。







源平鍋(げんぺいなべ)

 源平合戦にちなんだ鍋で、香川県で生まれた。

 エビ、タイ、カニを用い、源氏の白旗に見立てたダイコン、平家の赤旗に見た立てたニンジンを入れる。
 ダイコンで舟形をつくり、その周囲に海の幸、山の幸を盛りつけ、陣笠型の鍋で煮るという趣向。








- こ -


こいこく(鯉濃)

 鯉を濃い味噌汁で煮た料理。
 素焼きした鯉の身をゴボウのささがきとともに酒と味噌のだし汁で煮込み、粉山椒を振る。

 料理屋では通常、椀に盛られて来るが、家庭では鍋物式にして食べることが多い。







香辛料(こうしんりょう)

 植物の種子、果実、根茎、木皮、花、つぼみなどを原料とし、刺激性の香味を持ち、飲食物に風味や着色をほどこし、食欲増進、消化吸収を助けるものの総称。
 古くから「薬味」と呼ばれてきたが、「香辛料」や「スパイス」の方が一般的になった。

 香辛料の働きは
  @臭い消し(矯臭作用)
  A香りづけ(賦香作用)
  B辛味づけ(辛味作用)
  C色づけ(着色作用)
の4つがある。

@にはニンニク、ショウガ、ローズマリー、タイム、オレガノなど
Aにはオールスパイス、アニス、バジル、シナモン、ナツメグ、パセリなど
Bはトウガラシ、コショウ、レッドペッパー、ショウガ、ニンニク、ワサビ、サンショウなど
Cにはターメリック、サフラン、パプリカなどがある。








香味料(こうみりょう)

  @香辛料※と同じ
  A日本料理で用いられる香味野菜のこと
  B薬味※やつまと同じ、
などと説明されており、概念的に定まっていないようだ。

 一般的にはシソ、ネギ、ニンニク、ショウガ、ミョウガ、フキノトウ、ゴマ、クルミなどだが、ユズ、ダイダイなどの果実酢を含めることもある。








こくしょう

 愛媛県に残る伝統料理。
 正月を前にして祖先や亡くなった縁者を祀る「仏正月」につくられる。

 サトイモ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、豆腐、油揚げ、昆布などを米のとぎ汁に味噌を加えた汁で煮る。








こけ

 こけは能登地方でキノコのこと。

 青大豆をすりおろした「すり割り」にキノコを入れた「コケのすり割り鍋」がある。








五斉煮(ございに)

 薄塩を振った魚肉、中千切りの大根を鍋に入れ、酒と醤油の薄味で仕立てた汁料理。
 器に取ってからショウガの絞り汁をかける。

 古い辞典などに載っており、明治以前は一般に作られていたようだ。








越の錦鍋(こしのにしきなべ)

 上越新幹線開通を記念して、新潟市の調理師会会長が考案した。
 だしは醤油味で、酒粕も加える。鮭と白菜、葱、春菊、きのこ類が材料。

 新潟県の観光協会推薦の鍋物。








コチュジャン

 韓国の唐辛子味噌。
 米こうじや唐辛子などを発酵させたもの。
 辛みに特徴がある。







小鍋(こなべ)小鍋立て 小鍋仕立て

 直径20a程度の小鍋で小人数、あるいは一人で楽しむのが小鍋立て(仕立て)。
 江戸時代に流行り、小粋な料亭や隠れ家などで男女二人が楽しんだという。

「路地の奥の小鍋立て」は不倫関係を意味した。
 独り者が長屋でわびしく食べることもあった。
 しかし家庭では「同じ釜の飯」を食べる風習から外れるため、「別火」として嫌われた。

 昔の民家では、煮炊きの場が台所やいろりに固定されていたが、七輪(関西ではカンテキ)のように、移動出るようになってから、大鍋から小鍋への変化が生まれたという。
 1990年代に現代的な小鍋(土鍋)が売り出され、独身男女によく売れている。
 大鍋は大家族制、小鍋は核家族化を表す、という説もある。

「小鍋仕立て」は民俗学者柳田国男が命名したという説もあるが、「小鍋」「小鍋立て」の語はそれ以前から存在していた。

「梅安が湯殿から出てくると、早くも彦次郎は、火鉢に小鍋をかけ、塩、砂糖、醤油で薄味にととのえた出汁(だし)を張り、浅蜊の剥き身と豆腐、それに葱の五分切りを杉の木箱へ盛り、酒の燗に取りかかっていた。さあっと、雨の音」(池波正太郎「梅安迷い箸」から)







ゴマ(胡麻) ごまだれ

 胡麻の「胡」は中国語で「外国」を表す。
 スンダ列島(インドネシア)が原産、インドからシルクロードを伝わって中国へもたらされたので、この名が生まれた。
 日本へも古代から伝わり、アブラナより早く油料食物として栽培されていた。

 含油量は40―55%と植物中最高でタンパク質も多く含む。
 種の色は白、黒、黄、茶などだが、栄養分の含有率に大差はない。
 料理には、いり胡麻、すり胡麻、切り胡麻などとして使われ、ごまだれは鍋物の付け汁に用いられる。

<作り方の一例>
ごまだれ=白ゴマを炒ってからすり、同量のだし汁に醤油、砂糖、みりんを加え、さらにすり延ばす。








ゴボウ(牛蒡)

 キク科の二年草。根は地下に数十aまっすぐ伸びる。
 日本人はこれを食用にし、ささがきにしたものが柳川鍋などの重要な具になっている。

 外国ではゴボウの根を食用とする例がなく、中国では漢方薬に、ヨーロッパで若芽をサラダに用いる程度。
 第二次大戦中、米軍捕虜にゴボウを食べさせた日本の捕虜収容所長が、戦後の軍事裁判で「木の根を食べさせた」との訴えによって刑罰を受けている。

 ヨーロッパからアジアの温帯部原産で、日本へは平安時代、中国からもたらされた。
 野菜として普及したのは江戸時代からで、東京・滝野川、京都・大内村などがゴボウの名産地になった。
 現在では茨城、埼玉、千葉などが主産地。

 ゴボウはタンパク質、ビタミン類などは少なく、かつては体内を通過するだけの不消化食品などと言われた。
 しかし繊維質の多さが認められるようになり、便通を整え、さらにビタミン類を発生される効果があるといわれている。

 俳句では「牛蒡まく」が春、「牛蒡引く」、「牛蒡掘る」が秋の季題。








御猟場鍋(ごりょうばなべ) 御猟鍋 猟場鍋

 鎌倉時代から江戸時代にかけて武士や公達が狩りを楽しんだ猟場付近の各地で、「伝統を継いだ」として作られている鍋料理。
 多くは鉄鍋を用い、すき焼き風、焼き肉風。
 すき焼きの原点という説もある。

 鴨、雉、鹿、猪などの肉を売り物にしているが、近年は牛、鶏、豚で代用するところが多い。







ごろ鍋

 北陸ではイカの肝臓を「ごろ」という。
 これを魚醤で溶き、大根下ろしや味噌を加えただし汁で鍋物を作る。
 具はイカが主体になる。








ころの味噌鍋

 ころは鯨の皮から鯨油を取ったあとの「煎皮」のこと。
 これを水でふやかして適当に刻み、豆腐、しらたき、ミズナなどを味噌汁仕立てで煮る。
 関西の料理。








こんにゃく(蒟蒻) こんにゃく芋

 サトイモ科の多年草で、4,5年たつと、地下に直径20―25a(3,4`)くらいの球茎を作る。
 球茎の主成分は多糖類の一種・マンナン。これを製粉して水にに溶き、加熱してアルカリを加えると凝固させたものもこんにゃく(食用こんにゃく)と呼ばれ、おでんなどの鍋物によく使われる。
 95%以上が水分で栄養価は低いが、「砂払い」といわれ、整腸効果があるという。

 インド、セイロンが原産地とされるが、中国では古くから栽培されていた。
 日本には奈良時代、朝鮮半島から薬用として渡来した。群馬、茨城、福島などが主産地。
 明治初期まで、製品としてのこんにゃくは生産地周辺の特産物だった。
 1888年に乾燥こんにゃくの製粉が開発されて原料の輸送が飛躍的に広がり、各地で生産されるようになった。

 季語としては、「蒟蒻掘る」が冬、「蒟蒻植う」が春。







コンブ(昆布)

 褐藻植物のコンブ属とそれに類似する海藻の総称。
 丈が10b以上にも伸びるところから海帯(こんぶ)とも表記される。

 寒海性で、日本近海では東北地方以北に産するが、養殖技術の発展よって、九州沿岸、瀬戸内海、東京湾などでも生育が可能になった。
 日本では古くから食用にされており、715年に蝦夷から奈良朝廷に献上された、という記録が残っている。

 コンブには炭水化物類やカリウム、ヨード、カルシウムなどの無機質、うまみの素であるグルタミン酸が多く含まれている。
 マコンブ、リシリコンブはだし用に、ミツイシコンブ(日高昆布)、ナガコンブは総菜用に適するという。

 本来の鍋物は肉、魚介類、野菜などの味によってうまみを出しいたが、鍋料理の発展によって、昆布を煮出し材に使うものが増えてきた。
 料理店などで高級化を目指した過程で昆布が用いられ出したと考えられている。






- さ -


ざく(雑具)

 明治時代の牛鍋屋から生まれた言葉で、当初は斜め切りのネギを意味した。
 後にすき焼きに用いる肉以外の材料のことになり、さらに一般的な鍋物の具の意味にも用いられるようになった。

 主として関東で使われてきた言葉で、関西では「加えるもの」の意味から「加薬」「加役」という。








ざくざく

 福島県の郷土料理で、正月、節分、婚礼、祭などの際に食する。

 鶏肉、ダイコン、サトイモ、ニンジン、ゴボウ、かまぼこ、豆腐などを大鍋に入れ、醤油、塩、酒、少量の砂糖で味付けして煮込む。
 これを食べると「お金がざくざくと集まる」という。








桜鍋

 馬肉を味噌味で煮た鍋物で、長野県や熊本県などでは古くから名物料理だった。
 桜鍋の名の起こりは、肉が桜色しているから、桜の季節になると馬肉がうまくなるから、「咲いた桜になぜ駒つなぐ、駒が勇めば桜散る」という俗謡にちなんで、などの説がある。
 俗に言う桜鍋の別名「蹴飛ばし」はの馬が蹴飛ばす、から来ている。

 「鍋の中が煮立って味噌の固まりが溶けた。 汁の色が稍(やや)濁って、もやもやと霞が棚引いた様に見える中に、さくら花が爛漫と咲き乱れた」(内田百けん「御馳走帖」)








サケ(鮭)シャケ

 サケ目サケ科に属する魚の総称だが、個別的に「サケ」と呼ばれる種類は、サケ(シロザケ)、ベニザケ、マスノスケ(キングサーモン)、ギンザケ(ギンマス)など。
 川に生まれ海に下り、産卵時には川を上る「降海型」のこれらを、おおざっぱに「サケ」と呼ぶ傾向もある。
 ヒメマス、イワナ、イトウなど「陸封型」もサケ科に属する。サケ科の魚は総体的に大きく、美味であるところから、石狩鍋※などの鍋物によく用いられる。

 産卵のために日本の川を遡ってくるのはシロザケ。
 人工孵化による稚魚の放流が主として本州北部の各河川で行われており、大量の漁獲量が保たれている。
 シロザケの多くはアリューシャン列島、アラスカ半島沖合を生育水域とし、3−6年(主として4年)目の秋に日本の川に戻ってくるところから、アキザケ、アキアジとも呼ばれる。

 このほか三陸や北海道沿岸に5,6月頃にやってくるナツザケ、トキシラズと呼ばれる群も沿岸漁業の対象になっているが、これらは北千島やカムチャツカ半島の川を遡る種類であり、日本では産卵しない。
 日本で販売されているベニザケの類は、北洋で漁獲したものか、輸入物。最近はノルウェーの養殖物が増えてきた。

 北太平洋沿岸のサケの産地は「サケ領域」と呼ばれている。
 これらの地域では古来、サケが重要な食料になっており、サケに関する信仰も盛んに行われてきた。アイヌや米太平洋北西岸に住むインディアンの間では特に顕著だが、茨城県や新潟県以北では、サケの漁獲時期に合わせてサケ祭を行うところが多い。

 各地には村人がサケの国に行き、サケの王に助けられて村に帰ってきた、という話が残っている。

 鮭は俳句では秋の季題。
「旅の吾も眼なれて鮭ののぼる見ゆ」(皆吉爽雨)








鮭の粕鍋

 鮭を具に主体にて、酒粕と白味噌でだし汁を作る鍋物。

 北海道の三平汁※、北関東のしもつかれ(すみつかり、すみつかれ)※もこの類に入る。








鮭鍋

鮭鍋→石狩鍋








鮭のねりこみ

 青森・弘前などの寺々に伝わる大鍋の料理。
 元来は僧が托鉢して集めた野菜をもとに作ったという。
 サケのあら、はらら(イクラ)、サトイモ、ニンジン、こんにゃく、シイタケなどを具に、醤油、塩、砂糖で味付け、片栗粉でとろみをつける。








さつま汁(薩摩汁)、さつま鍋、鹿児島汁

 鶏肉あるいは豚肉に人参、ゴボウ、葱、里芋、大根などを加え、すまし汁か味噌汁で煮込んだもの。
 豚肉を入れたものを「豚汁(とんじる)」と呼び、さつま汁と区別する向きもある。

 薩摩の国・鹿児島の郷土料理で、鹿児島汁ともいうが、各地に広がっている。
 サツマイモを入れるから、さつま汁という説もある。








サトイモ(里芋)

 サトイモ科の多年草。
 インド、インドネシア地方の原産。
 栽培種としての日本渡来は非常に古いと考えられている。山に自生する山芋に対し、里で栽培する芋の意味。
 地下に出来る根茎(いも)を食用にするが、地上の葉柄(ずいき)も食べられる。
 最初に出来る親芋、に続いて子芋、孫芋も生じる。

 エグイモ、トウノイモ(唐の芋)、ヤツガシラ(八頭)などの種類に分かれ、葉柄を食用にするためのハスイモもある。

 サトイモの鍋物では、東北地方の秋をにぎわす芋煮会※が有名。
 俳句では里芋、芋畑、芋掘るなどが秋の季題だが、芋煮会を初めとする各地の芋煮行事も季題に加わえるべきスケールと存在感を持つ。








砂糖(さとう)

 サトウキビ(甘蔗=かんしょ)、サトウダイコン(甜菜=てんさい)を材料として作る甘味料。
 ブドウ糖、麦芽糖、やし糖、メープル糖などを含めることもある。

 紀元前数世紀、ギリシャ、ローマでは蜂蜜に甘味を頼っていた時期に、インドではサトウキビによる砂糖が作られていた。
 5、6世紀ごろ欧州に伝えられ、日本へは奈良時代(8世紀)に中国経由でもたらされた。
 754年、鑑真の渡来の際に最初の黒糖が持ち込まれたという記録もある。

 琉球で奄美大島でサトウキビの栽培や製糖が始まったのは、それから1000年も後の16世紀末になってから。

 砂糖は、鍋物のだしや付け汁の甘み付けのために用いられる。
 すき焼きの場合は、かなりの量を使うが、それ以外の鍋物では隠し味程度。








サバ(鯖)

 スズキ目サバ科サバ亜科に属する魚の総称。
 日本近海で漁業の対象となるのはマサバとゴマサバで、最も大衆的な魚といえる。
 関東より北陸から関西、九州にかけて消費量が多くなり、鯖を用いた鍋物の種類も豊富になる。

 だしの材料(鯖節)としても重要。
 鯖節の使用は山陰から九州に多く、太平洋側の鰹節に対応している。








鯖鍋 鯖のすき焼き

 鯖鍋は岡山県など関西で食される鍋物。
 醤油(多くは薄口)仕立てが関西の特徴。高知県には庶民的な料理・鯖のすき焼きがある。

 鍋に割り下を入れ、サバの切り身とニンニクの芽を入れて煮込む。
 大阪の船場汁※や山陰地方の鯖の煮なます※も鯖鍋に近いものといえよう。

<作り方の一例>
(鯖鍋)=だし汁を酒、みりん、味噌で味付け。
 サバを筒切りにして煮込み、油通ししたナスと焼きネギを加える。








鯖の煮なます(さばのになます)

 山陰地方の郷土料理。
 サバの身を薄めにそぎ、ダイコンのささがきとともに塩、酒、酢で調味しただし汁で煮る。
 ダイコンに歯ごたえが残る程度になったところが食べ頃。
 器に取ってからしょうがの絞り汁をたらす。








沢煮鍋

 寄せ鍋の一種。
 魚、肉、野菜などを取り合わせ、煮汁を多くし、ごく淡泊に味付けをする。
 猟師が干した野菜を持って山に入り、獲物とともに沢で煮たことから、この名が生まれたという。

<作り方の一例>
=鶏ガラをだしに醤油、酒、みりんで薄目に味付け。
 豚肉の千切りを熱湯に通し、薄卵焼き、葱、人参、タケノコ、シイタケ、ウドは千切りにしておく。
 これにもやし、三つ葉などを揃えて、適宜、鍋に入れ、煮すぎないうちに食べる。








参鶏湯(韓国語読み=サムゲタン)

 韓国の雛鳥鍋。
 夏負けに効果があるという。

 1人用の小さな土鍋を用いる。
 雛鳥の内臓を出して、腹の中にもち米、ナツメ、薄切りニンニク、朝鮮人参などを詰め、薄い塩味のスープで3時間くらい煮込む。
 漢方薬風の香味に特徴がある。








酸菜鍋(さんさいなべ)、酸菜鍋子(中国語読み=スァンツァイクオツ)

 中国北部の鍋料理。
 白菜をたてに二つ切りし、2週間くらい漬け込み、酸っぱくなったもの(酸白菜)を用いる。
 酸白菜、生白菜、羊肉、鶏肉を細切りにし、牛か豚の肉団子、春雨、カキ、川カニなどを豚骨スープで煮込む。








三美豆腐(中国語読み=サンメイトウフ)

 中国山東省・泰安の郷土料理。
 泰安の3名物とされる豆腐、ハクサイ、水を用いることからこの名が生まれた。

 鍋にラードを塗り、ネギ、ショウガを炒め、豆腐、ハクサイを塩仕立てのスープで煮る。








三平汁(さんぺいじる)三平鍋

 江戸時代、松前藩の賄方・斉藤三平が糠鰊(ニシンの塩糠漬け)を使って作ったとされる汁物。
 このニシンが塩鮭や鱈に代わって現在の三平汁になった。

 最も多いのは塩鮭を用いるタイプで、これを頭から尻尾までぶつ切りにして大鍋で作るのが漁師風。
 野菜類はジャガイモ、人参、大根など。塩鮭の塩味だけで味をつけるのが本来の形式とされる。
 表面の塩を落とすくらいでほどよい塩味になる。
 生ジャケを用いたり、酒粕を加えたものは本格的ではないという。

<作り方の一例>
(洋風三平鍋)=塩鮭のあら、人参、大根、ジャガイモを昆布のだし汁で煮る。
 塩で味を調え、煮上がり際にバター(マーガリンも可)と刻み葱を入れる。








- し -


シイタケ(椎茸)

 マツタケ目シメジ科のきのこ。
 日本、中国のほか東南アジア、ニューギニアなどに自生している。
 春と秋にナラ、シイ、クヌギなどの枯れ木に生える。
 傘は初め丸形だが、開くにつれて扁平になり、最大で12aに達する。

 椎茸栽培は日本で開発され、18世紀末に伊豆には「菌師」と呼ばれる栽培指導者がいたという。
 1930年に北島君三博士が菌糸の純粋培養による菌種接種法を開発してから、農業として確立した。

 栄養価はさほど高くないが、プロビタミンb(紫外線照射によってビタミンdになる)の含有量が多く、健康食品の一つに数えられている。
 コレステロールの抑制、制ガン作用があるとされ、インフルエンザウイルスを不活性化する、という説もある。
 グルタミン酸などのアミノ酸類も含まれており、干しシイタケのもどし汁は、だしの材料になる。

 生シイタケは肉質が美味。干しシイタケにすると味は落ちるが、香りがよくなる。








鹿鍋

鹿鍋→もみじ鍋








四川火鍋(しせんひなべ、中国読み=シチュアンホーコー)

 中国四川省で発達した鍋物の総称。
 火鍋は火に掛けながら調理し、食する鍋物の意味で、鍋の真ん中に燃料入れと通風のため筒は必ずしもついていない。
 この地方の火鍋の多くは洗面器状であり、スープを二種、または数種入れるために内側がいくつかに仕切られている。

 曲玉状に二つに区切られているのが鴛鴦(おしどり)火鍋で、唐辛子入りの紅湯と辛くない清湯の部分に分かれる。
 三つに区切られ、魚、肉、鶏のスープをそれぞれに入れるのは三味火鍋という。

 スープはおおよそ強烈な辛さがある。
 多彩な食材を鍋の周りに置き、それぞれの好みによって入れていくのも四川火鍋の特徴。
 牛もつ、牛肉、牛尾、鴨、鯰、羊、犬、蛇など具の主体によって名称がつけられ(例えば牛肉火鍋)、全体で百種類を超す。
 これらの多くは洗面器型の筒なし鍋だが、羊肉火鍋や海鮮物をそろえた八鮮火鍋は中央に筒が立つ鍋を用いる。








七味唐辛子(しちみとうがらし)

七味唐辛子(しちみとうがらし)→七色唐辛子(なないろとうがらし)








シチュウ(stew)

 西洋風煮込み料理。
 ニワトリ、ウシ、ブタ、ヒツジなどの肉をバターで炒め、タマネギ、ジャガイモ、ニンジンなどとともに煮込む。
 魚肉を使うこともある。

 具が柔らかくなったら少量の小麦粉を入れ、とろみをつけ、塩、コショウで調味する。
 近年はシチュウ風鍋物も考案されるようになった。








シーチンフォクォ(十錦火鍋)

 鶏肉、ナマコ、豚の肉団子、タケノコ、キノコなど十種類の具を入れる中国の鍋物。
 南方の料理だったが、全土に伝えられ、清朝の宮廷では新年を祝う料理になった。
 十種の選択はさまざまで、土地によって味が違う。








シーツトウ(獅子頭鍋、肉団子鍋)

 中国・揚子江河口の揚州地方に伝わる郷土料理だが、全国的に作られるようになっている。
 豚のバラ肉やロース肉を米粒大に刻み、刻み葱、ショウガのみじん切り、塩、片栗粉、ラード、紹興酒を加えて練り、こぶし大の団子にする。
 土鍋の底に青菜の芯を敷き詰め、肉団子を乗せ、肉スープを入れて煮込む。

 肉団子の形が獅子の頭に見えるため、この名称がつけられた。








しっぽく(卓袱、卓子)

 しっぽくは唐音(宋―清代に中国南部から伝わった発音)によっており、卓袱はテーブルクロス。
 卓子とも書くが、これはテーブルのこと。以上から転じてテーブルで何人かがそろって食べる料理の意味になった。
 1698年(元禄2年)、長崎に唐人(外国人)屋敷が設けられ、唐人料理から卓袱料理が生まれたとされるが、日本風も加味されているようだ。
 日本では元来、1人ずつの箱膳による食事が正式な習慣であり、各人が一つの皿や鍋から箸で料理をつまんで食べる作法はこれから始まったという。

 随筆家、料理研究家の本山荻舟は、「元来、日本人は他人と箸を交えず、食事に際しては杓子で盛り分ける、菜箸を用いるという習慣があった。
 一つの鍋に各人が箸をつっこむのは卓袱料理から始まった」(料理辞典)としている。

 江戸時代の書物には卓袱料理について「外国には客を招きて、食物に毒素をまじへ与ふること折々ある故、その疑いを避けむために(一つの鍋のものをいっしょに食べる)」という記述があるという。
 本山は明治初期に始まった牛鍋も卓袱の流れ、と見ている。
 それからすれば、今日の鍋物の原点は卓袱料理にある、といえるだろう。








しっぽく鍋(卓袱鍋)

 鶏肉、エビ、焼き鯛、焼きキスに白菜などの野菜類を加え、醤油とみりんのだしで煮る鍋料理。元来はソバやウドンに蒲鉾や野菜を入れて煮込む料理だった。
 長崎から関西地方にもたらされ、仲間や家族が一つの食卓を囲む料理として親しまれてきた。








シメジ(占地、湿地) しめじ茸

 ハラタケ目キシメジ科のキノコで、通常はホンシメジを指す。
 「匂いマツタケ、味シメジ」といわれるように、味のいいキノコとして知られる。
 傘は半球形で直径4−10a下半分は徳利型にふくらみ、肉質は厚い。

 煮物、吸い物、炒め物のほか鍋物の具にもなる。
 一般に売られている栽培物はホンジメジとは別種。








治部煮(じぶに)

 金沢の郷土料理。
 これを鍋物にし、じぶ煮鍋と命名したものもある。

 じぶ煮は、鴨肉や獣肉、魚肉などをつくね状にし、片栗粉や小麦粉をまぶし、麩、野菜などを加えて、醤油仕立てのたれで煮込む料理。

 豊臣秀吉の配下で、文禄の役の兵糧奉行・岡部治部右衛門が考案したとされるが、鳥獣の肉を「じぶじぶ」と煮ることからこの名称が出来たという説もある。
 元来は豆腐料理だったらしい。

 加賀(金沢)によく飛来するツグミを使った治部煮が有名。








しもつかれ

 栃木県の郷土料理。
 鮭の粕汁の一種だが、酢を用いるところに特徴がある。
 しもつかり、すみつかれなどという地域もある。
→鮭の粕汁

しもつかれの名は
  @地名の下野(しもつけ)にちなむ
  A酢を使うので「酢むつかり(むせる)」の意味、
という2説がある。








シャークオターユイトウ(砂鍋大魚頭)

 上海方面で好まれる料理で魚頭鍋※の一種。
 揚子江などに生息する○(=魚偏に庸)魚(花連魚ともいう)という大きな魚の頭を材料にする。

 この魚は頭が特に大きく体全体の三分の一を占めるといわれ、口の周りの肉などが美味とされる。
 この魚頭を土鍋(沙鍋)に入れ、紹興酒、醤油、塩、砂糖、ラードなどでスープを作り、粉皮(緑豆でんぷんを薄皮状にしたもの)を加えて煮込む。








ジャガイモ(馬鈴薯、洋芋)

 ナス科の多年草。
 主成分はでんぷんだが、ビタミンb1やcも含まれている。
 南米のアンデス高地・ペルー地方の原産。インカの重要な食料で、1550年、スペイン人によって本国へ伝えられ、17、18世紀にはヨーロッパで広く栽培されるようになった。
 日本への伝来時期は1598年と1603年の二説がある。オランダ船がジャワのジャガトラ港(現在のジャカルタ)から長崎の平戸へ持ち込んだのが最初で、そのために「ジャガタライモ」と呼ばれた。

 明治初期には米国から優良種が到来、栽培が広がった。
 1904年、川田竜吉男爵が米国からアイリッシュコプラー種を輸入、これが北海道の気候に合って大量に作られるようになった。
 男爵イモと命名されたこの種は今日まで広く人気を保ち、全作付けの50%近くを占めている。
 その他では農林一号、紅丸、メークインなどがある。

 和風料理としてはおでんなどの鍋物、汁物、煮物に用いられる。
 近年、洋風鍋物の開発によって、利用範囲が広がっている。

ジャガイモ(馬鈴薯)は秋、じゃがいもの花は春の季語。








しゃけ

しゃけ→さけ








じゃっぱ汁 タラのじゃっぱ汁

 じゃっぱは青森県の方言で残り物のこと。

 タラの頭、内臓、骨などを残さず使い、ダイコン、ネギ、豆腐も入れる。
 赤味噌仕立てが一般的。








しゃぶしゃぶ

 中国の羊肉鍋(ショワンヤンロウ※)が原点。
 日本では薄切りの牛肉を用いる。昭和27年ころ、大阪永楽町の「スエヒロ」で考案された。
 しゃぶしゃぶと肉を湯の中にくぐらすところから、この名がつけられ、同店の登録商標になっている。

 牛肉、白菜、三つ葉、豆腐、シイタケ、エノキなどを鍋に入れ、ごまだれで食べる。
 豚肉を用いる場合は、豚しゃぶという。








シャンツァイ(香菜)

 別名、中国パセリ。
 独特の香があり、羊肉しゃぶしゃぶなど中国風鍋物の薬味として用いられてきたが、近年はさまざまな料理に使われるようになった。








沙鍋(シャークォ)

沙鍋(シャークォ)→土鍋








沙鍋居(シャークォチュイ)

 中国・北京にある有名料理店。
 その名の通り沙鍋三白※、沙鍋豆腐などの鍋物で知られる。
 清代に王朝の警護役人が下賜された豚肉を大きな土鍋で煮て食べていたのが、この店の起こり。
 約260年前に店として開業すると大人気を呼んだ。
 材料がすぐに尽きるので、午前中で店の看板を下ろしていたという。








しゃべこと汁

 岩手県の郷土料理。

この名は
  @お喋りの会の料理だから、
  Aものが煮えるとき、ぐつぐつと喋るような音がするから、
という二説がある。

 各種の講の後に作られる。
 大豆、いんげん豆、昆布、サトイモ、ニンジン、ゴボウ、ネギなどを細かく切り、醤油仕立てか味噌仕立てで煮込む。








沙鍋三白(シャークオサンパイ)

 沙鍋の代表的な料理。
 白はあっさりした上品な味を意味している。
 この鍋物の三品は、鍋の下に敷く白菜と春雨、白肉(ゆで豚)、澄んだスープをいう。
 ゆで豚のほか、豚の腸、胃、干しエビ、きのこ、春雨、白菜などを土鍋に盛り、ゆで豚のスープで煮込む。
 真ん中に通風筒のある鋳物の鉄鍋を用いることが多い。








シュンギク(春菊)

 キク科の一年生草本。
 地中海沿岸の原産。
 日本では江戸時代から野菜として栽培されている。

 暑さに弱く、寒さには比較的強いので、秋に種をまき、冬から春にかけて収穫する。
 葉茎の独特の芳香が好まれ、鍋物によく用いられる。関西ではキクナともいう。








じゅんさい湯(中国読み=チュンツァイタン=○草冠に純 菜湯)、じゅんさい鍋

 中国南部にある鍋物的スープ。
 ジュンサイは浙江省・西湖の三潭印月のものが最高とされるが、太湖、湘湖などでも良質物がとれる。
 これらの地域には、じゅんさい、鶏肉、ハム、しいたけなどを土鍋で煮る料理がある。
 スープは塩と紹興酒で味付けし、片栗粉でとろみをつける。

 揚子江河口に近いこれらの地域では、じゅんさいの鍋とスズキ(鱸)のなますが名物。
 晋代の張翰という役人は洛陽で官職に就いたが、じゅんさい鍋と鱸のなますが食べたくなり、職を捨てて故郷に帰ってしまったという。

 郷愁の情を意味する「○(草冠に純)鱸之思」という言葉は、このエピソードから生まれた。








しょうが(生姜)

 ショウガ科の多年草。
 別名は「はじかみ」。西南アジアの原産だが、アジアの温暖な地域に広く分布している。
 地下の茎部が肥大するにつれて、芽しょうが、新しょうが、ひねしょうがと呼ばれる。

 漢方では新鮮なものを生姜(しょうきょう)、乾燥したものを乾姜(かんきょう)といい、それぞれ薬として用いる。
 すり下ろしたひねしょうがは鍋物、冷奴などの薬味になる。露しょうが(絞り汁)も鍋物の付け汁や各種の料理に利用される。








醤油(しょうゆ)

 コムギとダイズを原料とし、麹に食塩を加えて発酵させた液体調味料。
 日本で作り出され、soy (a) sauceとして世界的に知られるようになった。
 味付けの元になるところから「下地(したじ)」、その色から「紫(むらさき)」とも呼ばれる。
 醤油の原型は穀類や鳥獣魚肉、野菜や海藻などに塩を加えて発酵支える醤(ひしお)。
 醤油は味噌とともに穀類醤から発展したと考えられている。

 大宝律令(701年)には宮廷で醤を作る部署(醤院)のことが記録されており、平安時代には一般の醤店が出来たいたという。
 この醤の底にたまった液体が「垂れ味噌」「たまり」で、現在の液体の醤油につながっていく。

 16世紀に和歌山・湯浅で初めて企業的な規模で生産されたとされ、ほどなく千葉・野田、銚子などでも作られるようになった。
 江戸中期からたまりに改良が加えられ、関東では濃い口醤油、関西では薄口(淡口)醤油という傾向に分かれた。
 薄口醤油の特徴は色、味、香りともに薄目とされるが、塩分は約16%もあり、濃い口醤油の約15%より高い。

 名古屋地方には白醤油がある。鍋物にはだし汁、付け汁に使われている。








常夜鍋(じょうやなべ) 庄屋鍋(しょうやなべ)

 酒だけ、あるいは酒を多く入れただしを用い、豚肉と例えばホウレンソウ(青菜を一種類使うのが特徴)だけを具にする鍋物。
 煮込むのと、しゃぶしゃぶ式のがあり、どちらもポン酢やごまだれにつけて食べる。
 東北地方、東京、静岡などに同系統のものがあり、「じょや鍋」「庄屋鍋」と呼ぶ地域もあるようだ。
 旧制高校の寮で流行りだし、全国に広まったという説が有力である。
 常夜は一晩中(食べている)の意味だろう。
 しゃぶしゃぶ式は豚しゃぶ、煮込むものは豚ちりとも呼ばれている。








しょっつる(塩汁)しょっつる鍋 しょっつる貝焼き

 しょっつるは小魚を一年余り塩漬けにし、絞り出した汁(魚醤)のこと。
 塩汁がなまって、「しょっつる」になった。
 独特の臭みがあったが、1950年ころに味を残して臭みを消す手法が開発された。

 しょっつる鍋は秋田県の郷土料理。ホタテ貝を「きゃふろ」(貝風呂)という小型七輪の上に置いて鍋代わりにするので、貝焼き(けやき、かやき)※と呼ばれる。しょっつる用の小型鍋もある。

秋田特産の小魚・ハタハタと卵の「ぶりこ」を用いるのが正式で、豆腐、ネギ、セリ、マイタケなどをしょっつる味の汁で煮る。きりたんぽ※を入れることもある。








ショワンヤンロウ(刷(さんずい)羊肉)

ショワンヤンロウ(刷(さんずい)羊肉)→羊のしゃぶしゃぶ








しらうお鍋(白魚鍋)

 シラウオ(サケ目シラウオ科)を主材とする鍋物。
 小鍋を用い、塩と酒の薄味仕立てで、卵とじにすることが多い。
 江戸時代、シラウオは非常に高価な魚で庶民が口にすることはほとんどなかったという。
 岡山の名物料理にも白魚鍋がある。








汁物(しるもの) 汁

 現在ではみそ汁、澄まし汁のように椀に入れた「汁」を指すが、元来は大きな鍋で煮た汁、つまり現在の鍋物のことであった。
 ただしいろりで煮ながらいっしょに食べる「現代的鍋物式」はもっぱら庶民のもの。

 「延喜式」や「四条流包丁書」によれば、平安時代から戦国時代あたりにかけての貴族や上流階級では御厨(台所)で調理し、椀に盛って出してくるのが普通の作法であった。
 汁は飯に添える副食であり、酒の肴となるのが吸い物。
 汁は味が濃いめで、吸い物は味が薄めとされている。








汁講(しるこう) 汁会

 質素を旨としていた時代、会主が汁(鍋物)一品を用意し、客は飯を持ち寄り、話などに興じた集会。
 後の闇汁会などに通じるものがある。

 「昔、世に汁講といふものあり(略)。亭主はただ汁一色のみを拵え、よき時分に鍋のまま座敷へ持ち出でーー」(桃源遺事)

 会主のもてなしは僅かだが、客は大いに打ち興じたという。








神仙炉(しんせんろ)

 韓国の代表的な鍋物で、宴席第一の御馳走、宮廷料理の粋とされる。
 朝鮮語の発音は「シンソルロ」。悦口資湯(ヨルグチャタン)という名もある。

 中国の火鍋に似た鍋(真ん中に炎を通す煙突がある)を用いる。
 貝柱、アワビ、ナマコ、シイタケ、カンピョウなど乾物を用いるのが正式なやり方。
 薄切り牛肉、挽き肉団子、魚、野菜類などを使うこともある。鍋に規則正しく盛り込み、牛肉スープで煮込む。








縄文鍋

 有名な縄文遺跡のある地域でその土地の特産品を入れた鍋物を「縄文鍋」と命名するケースが増えている。

 海岸地域では魚介類、山の方ではイノシシ肉とキノコというぐあいで、内容はさまざまである。
 鍋は縄文土器風など凝ったものも用いている。








ジンギスカン鍋

 ジンギスカンが軍刀で羊(ラム)を切り、焼いて食べたのに発するという伝説にちなんで日本で命名された料理。
 実際のルーツは中国の○(火偏に易)羊肉(カオヤンロウ)にあるという見方が有力だ。
 1935年、農林大臣官邸でジンギスカン鍋の試食会が行われたという記録があり、この名称が出来たのはかなり古いと考えられる。

 鉄兜型に真ん中が盛り上がった鍋(隙間がある)の上での羊肉を野菜とともに焼き、にんにく、しょうがなど香辛料の利いた醤油味のたれで食べる。
 汁がほとんどないので、鍋物というより焼き肉に近い。
 金串や金網をたき火の上に置き、ラムやマトンを焼くのもジンギスカン料理という。








陣中講

戦場での一時、兵士たちが集まり食事をしながら歓談した会。
 汁講※に似ており、よく鍋物がつくられたという。








- す -


酢(す)

 3−5%の酢酸を含む酸っぱい調味料。

 米などの穀類や柑橘類を原料とする醸造酢と酢酸を薄めた合成酢がある。
 鍋物の付け汁に醸造酢、特に柑橘類のものが用いられる。








酢みかん

 身を絞った汁を、ポン酢や鍋物の付け汁として用いる柑橘類。

 古くからダイダイ(橙)が代表格とされ、スダチ(酸橘)、カボス(臭橙)、ユズ(柚子)なども広く用いられている。
 以上の日本産のほか、レモン、ライムも加えるべきだろう。








吸口(すいくち)

 汁物、吸い物などに添える香味料。
 ユズ、フキノトウ、ミョウガのほか、コショウ、ワサビ、サンショウなどを含めることもある。








吸い汁鍋

 寄せ鍋など「飲める程度のあっさりした味が付いている鍋物」のこと。








吸い鍋(すいなべ)

 水炊きのスープを飲むための蓋つきの小さな土鍋。
現在ではほとんど用いられることがないようだ。

 大鍋からスープをこれに移し、さらしネギを散らし、ショウガの絞り汁を落として飲んだという。








水軍鍋(すいぐんなべ)

 愛媛県今治市付近の郷土料理。
その昔、瀬戸内海を支配していた伊予水軍の兵士たちが船上で鍋物式に調理して食したという。

現在のやり方はハマチ、タイ、イカ、アナゴ、しらたき、ゴボウなどを醤油味のだしで煮込み、卵や大根下ろしをつけて食べる。








すいとん(水団)、すいとん鍋

 小麦粉をこねて団子状にしたものを汁で煮る料理。
 各地に残る「団子汁」とほぼ同じ。澄まし汁と味噌汁仕立てがある。

 東北地方の郷土料理になっているが、関東大震災(1923年)の二日後に東京などにすいとん屋が出現、一挙に一般化した。
 さらに第二次大戦後は代用食として一般に食され、食糧難時代の食べ物の代表格になった。

<作り方の一例>
=薄力粉に少量の塩を加え、水でこね、一時間以上寝かせておく。
 鰹節、昆布のだし汁と醤油、みりん、酒で調味して加熱。すいとんをちぎり(竹箸を使ってちぎると味がよくなるといわれる)、豚肉、大根(葉も)、人参、こんにゃく、干しシイタケ、ゴボウを加える。








すいば汁

 島根県津和野地方の料理。
 すいばと呼ばれる青菜をブリのあらとともに味噌仕立てで煮る。

 正月の伝統行事の際に作られる。








すき焼き(鋤焼き)

 牛鍋※から発展した日本を代表する料理の一つ。
 しかしこれを鍋物に認めるかどうかについては、多少の議論がある。

 元来は鴨、雁、鹿などの肉をたまりに漬け、使い古した鋤の上で焼いたものとされ、この手法を継ぐ関西風に問題が残る。
 →唐鋤

 関東風は、少量とはいえ、割り下※を入れるので鍋物といえるだろう。
 一方、割り下を使わず、砂糖と醤油だけで「炒り焼き」する関西風は、料理の分類からすれば焼き物であり、鍋物の資格に欠けているかもしれない。
 だが、野菜や豆腐などから汁が出てくれば「煮る」状態になる。全日本鍋物研究会では、「関西風すきやきは途中から鍋物になる」という見解をとっている。

 すきやきの材料は牛肉を主役とし、豆腐(焼き豆腐も可)、ネギも重要な脇役として欠かせない。このほか、春菊、シイタケ、マイタケ、しらたきなども適宜用いる。
 地方や家庭によってはジャガイモ、ホウレンソウ、タマネギ、ニンジン、ワカメ、麩などを入れる。

 関東風は、だしに、酒、みりん、醤油、砂糖などを加えて割り下を作り、鍋が熱くなってから牛肉などの具を入れて煮る。
 関西風は割り下を使わず、鍋で「焼いた」肉の上に砂糖と醤油をかけて味付けする。

 料理研究家として知られた北大路魯山人※は、熱した鍋に牛肉の脂身をこすりつけ、酒、みりん、醤油を加え、最初に牛肉、その後に豆腐や春菊などを入れていく、というやり方を考案した。
 一般家庭では、これに砂糖をプラスする方式が多いようだ。玉子や大根下ろしをつけて食べるのも、よく行われている。

 「スキヤキ」の名は「上を向いて歩こう」の改訂版として米国の人気ソングになり、大いに広まったが、ニューヨークタイムスはこのタイトルについて「ムーンリバーをビーフシチュウとするようなもの」と酷評した。








すき鍋

 すき焼き※風に作る鍋物の総称。








スケトの沖汁

 新潟県佐渡の漁師料理。
 船の上(沖)で作ることからこの名が出来た。

 スケトウダラ(スケト)をぶつ切りにして、肝、たらこ、しらこをいっしょにして味噌味で煮込む。
 出来上がりに刻み葱を散らす。








すすり団子(すすりだんご)

 大分の東部地方に残る料理。

 もち米とうるち米を混ぜて団子をつくり、ずいき(サトイモの茎)、ニンジン、サトイモ、インゲン、豆腐などを醤油仕立てで煮る。
 これを食べると母親の乳の出がよくなるという。








スッポン(鼈、団魚) すっぽん鍋

 スッポンはスッポン科に属する甲羅の比較的柔らかいカメで日本に産するものの総称。
 甲長は30a前後。頸部が長く,吻部が筒状に突出している。
 噛みつくと、雷が鳴るまで放さないといわれる。

 肉やスープが美味で増血効果がある。

 スッポンが食用になったのは江戸時代で、関西では1600年代から、関東では1700年代からといわれ、そのころは中国の表記を借りて「団魚」と書いていたところから、俗に「丸(まる)※」と呼ばれていた。

 日本における養殖は1879年、服部倉次郎が東京で始めたとされる(1866年の説もある)。
 服部はその後、養殖場を静岡県舞阪町に移して規模を拡大し、同地をスッポンの産地とした。
 すっぽん鍋も静岡で始まったといわれている。

 すっぽん鍋は肉、内臓、皮をよく煮込んだ薄い塩味のスープに白菜、ネギ、豆腐、餅な料理屋などでは厨房で煮込んでからテーブルに運ばれてくる事が多い。








すっぽん煮

 高価なスッポン料理に似せて、ナマズ、アカエイなどを用いた鍋物風の料理。
 ささがきゴボウを加え、酒、みりん、塩で調味し、粉山椒、胡椒などをふる。

 昭和の初期までこの名の料理があったという。








ストーンボイリング(石焼き、焼き石式鍋物)

 焼いた石を鍋などに入れて水を沸騰させ、具を煮る調理法。
 焼いた石の上に魚などを直接置くやり方もある。

 世界各国の遺跡からこの手法の痕跡が発見されており、人類が発明した最も古い煮炊き法といえるだろう。
 日本でも東京・小金井市や保谷市などの縄文時代遺跡(約5000年前)などで確認されているが、諸外国に比べて遺跡数は少な目だという。
 日本は雨が多いので野外で食事する風習が次第になくなっていったため、と考えられている。

 初めは岩のくぼみや革袋に水を入れ、そこに焼き石を投入したらしい。
 これを鍋物の起源と認めることが出来るかどうか。やがて縄文式土器に焼き石を入れるようになったことは確かで、その時点で鍋物が成立したといえるだろう。
 現在でも秋田県男鹿半島などに石焼き鍋を観光用の名物料理としているところがある。
 石についた灰はアクを取る役目を果たすという。








ずりあげ

 埼玉県秩父地方の郷土料理。
 いろりの大鍋に干しうどんをそのまま入れ、醤油、七色唐辛子、刻みネギの付け汁で食べる。

 食材が少なく、栄養に対する認識が浅かった時代に、「体が温まる冬の食べ物」とされた。
 鍋で煮ながら、直接はしでうどんを「ずりあげる」ところからこの名が生まれた。
 食べ方は鍋物風だが、単なるうどんと見る向きもある。








すりこぎ(擂り粉木) すりばち(擂り鉢)

 魚、野菜、ゴマ、味噌などの食材をすりつぶす道具。
 団子、つくね※つみいれ※など鍋物の材料を作ったり、味噌※を擦る際に用いる。

 すりこぎの材料は一般的に山椒が最上とされるが、柳や桐が上と見る人もいる。

 すりばちは古来、焼きの堅さから備前焼が最上と認められ、「備前擂り鉢投げても割れぬ」という俗謡もあった。
 現代ではフードプロセッサーやミキサーに役を奪われがちだ。








すり身(擂身)

 魚肉をすりつぶし、鶏卵、山芋などと混ぜる練り物。
 主として蒲鉾、竹輪など材料になるが、つみいれ※として鍋物の具にもなる。
 小麦粉やでんぷんを混ぜたものは粗製品とされる。








- せ -


石頭火鍋(せきとうひなべ)

 台湾の庶民的な鍋物。
 鉄粉と大理石の粉を原料にした鍋を用いる。

 イカ、エビ、魚などをだしにする。魚介類、野菜を煮込み、沙茶醤(サーツァージャン)と生卵のたれで食べるのが一般的。
 使い込んだ石鍋は水だけいれてもだしが出てくるという。








セリ(芹)

 セリ科の多年生草。
 アジア原産。根が白いので「根白草」ともいう。

 日本では最も古くから栽培されている野菜の一つだが、湿地帯などに野生も多い。
 歯触りと香りが好まれ、春の七草の第一に置かれている。
 鍋物にもよく使われる。

 昔から鴨との相性がよいとされ、「鴨芹」という鍋物もあった。
 きりたんぽ※では、セリが欠かせず、特に田ゼリ(野生種のセリ)白い根が珍重されている。








全日本鍋物研究会(略称・鍋研)

 鍋物を愛好し、その種類、作り方、歴史などを研究する人々の団体。
 このホームページを活動の場とし、オフィス的な本部は存在しない。
 会長は作家の水木楊氏。

 ホームページの作成や鍋物コンテストのスタッフとなる基幹会員は約30人。








船場汁

 大阪の商業の中心地・船場で生まれた澄まし汁の一種。

 塩鯖を適当に切って、ダイコンとともに煮込む。サバの塩気で調味したという。
 主人たちがサバの身を食べ、従業員には頭やあらを汁にした、という話もある。
 後に料理屋で汁物、鍋物として出すようになったが、スズキ、タイなどを用い、ダイコンは必ず銀杏切り、だしは薄口醤油や酒を使うなど高級料理化した。








- そ -


雑炊(ぞうすい)

雑炊(ぞうすい)→おじや








僧兵鍋(そうへいなべ)

 僧兵のいた寺の周辺に出来た鍋料理。

 滋賀の比叡山付近の僧兵鍋は豚肉、鶏肉を主体にに20種類以上の山の幸を煮込む。
 三重県湯ノ山温泉にある天台宗の三岳寺ではイノシシ肉(現在は豚肉で代用されることも)、大根、人参、蓮根、にんにく、こんにゃくなどを入れる。
 赤味噌2,白味噌1の割合で汁をつくる。

 和歌山県岩出町の根来時寺付近には山菜僧兵鍋がある。
 1132年に鳥羽上皇が根来寺と近くの荘園を興教大師に下賜され、その際にこの地を訪れた上皇がドジョウと木の実をだしにし、イノシシの肉を入れた鍋物を大いに賞賛したのが起こりといわれる。
 現在は豚、鴨などに野菜を加えた寄せ鍋風。








そば(蕎麦)

 たで科の一年草。
 寒冷地や荒れ地でも栽培が可能で、古くから救荒穀物とされていた。
 最も生産量が多い国はソ連だが、日本もポーランド、カナダなどと並ぶ主な生産国。
 三角錐形の実の胚乳部(でんぷん質が)を粉にして、さまざまな食品がつくられている。
 外国ではパンの材料、アルコールの原料などになっている。

 日本では粉をこねて細く切った蕎麦(蕎麦切り)が代表的。
 その昔は粒のまま食べる蕎麦飯や蕎麦汁、粉を熱湯でかいた蕎麦掻きが主な調理法だったが、天正年間(1573―92年)に蕎麦切りが開発されたという。
 鍋物には、うどんと同様に鍋の具を食べ終わったあとの仕上げに使われることが多いが、蕎麦を主体にした蕎麦鍋※そばかっけ※などもある。








そばかっけ

 岩手県の郷土料理。

 そば粉(小麦粉をつなぎに入れる)を練って薄く延ばし、四角に切ったものが具の主体。
 鶏肉や野菜類を加え、醤油仕立てにする。これを食べると脚気にならない、といわれる。
 柳ぱっと※に似ている。








そば鍋(蕎麦鍋)

 鍋仕立てにした蕎麦。

 土鍋に昆布などのだし、鶏肉、湯葉、葱、白菜、がんもどき、シイタケなどを入れる。
 具を食べきったあとに蕎麦を入れ、仕上げとする。

 京都などの有名蕎麦店にある。






- た -


タイ(鯛)

 スズキ目タイ科の海水魚の総称。日本近海にはマダイ、キダイ、チダイ、クロダイ、ヘダイなど10種が分布している。またタイ科に属していないが、体型が似ていることからブダイ、キンメダイ、アマダイ、イボダイ、イシダイ、スズメダイなど「タイ」の名がつく魚が235種以上いるといわれる。

 一般には「タイ」はマダイを指す。
 マダイは体長が80aにも達するが、3,40aくいらのものが美味とされている。
 「めでたい」の語呂合わせ、姿の美しさから古来、縁起のいい魚として祝い事などに用いられ、さらに味もいいことから「海魚の王」と呼ばれている。

 鍋物(鯛鍋、鯛ちり※)にも適している。近年は南日本を中心に養殖が広く行われるようになった。
 マダイは春になると浅瀬に移動し(釣り人言葉で、のっこみ)、産卵する。

この時期には特に桜鯛と呼ばれ、俳句では春の季題になる。
「尾が打ちし俎(まないた)ひびき桜鯛」(宮井港青)

 チダイ(ハナダイ)は形、色、味ともにがマダイによく似ているので、魚屋ではマダイ、として売られることがある。
 体長は最大で30aと小型。
 マダイは赤色の尾の端が黒ずんでいるが、チダイには黒みがない。








鯛かぶら

 聖護院カブ(大型のカブ)を3,4aの角切りにし、鯛の身あらとともに、だし汁(酒、みりん、薄口醤油、砂糖で味付け)で煮る。土鍋を用い、煮ながら食べる。








鯛ちり 鯛鍋

 マダイを用いた鍋物。
 鯛の淡泊な美味を生かすために、ちりや薄口醤油仕立てにし、野菜などもくせのないものを用いる。

<作り方の一例>
(鯛のあら鍋)=マダイの頭付きあらから出来るだけ鱗を外し、ぶつ切りにする。
 昆布だしに酒、薄口醤油、塩を加え、味付け。タイのあらと豆腐、白菜、ワケギを入れて煮込む。味を薄くし、ポン酢醤油の付け汁を用いてもいい。








ダイコン ダイコ(大根)

 アブラナ科に属する二年草。古くはオオネ、スズシロ、カガミグサなどと呼ばれた。
 原産地は中国かさらに西部の地域といわれる。
 欧米ではハツカダイコン系、中国ではでんぷん質の多い系統が主に作られている。

 日本のものは葉がよく繁り、根に水分を多く含んでおり、品種は豊富で一年中出回っている。
 最も大衆的な野菜であり、白さと素人を掛けて「大根役者」、太さから「大根足」などの語が生まれた。

 ビタミンcが多く含まれ、おでんを初め各種の鍋物に用いられる。
 鍋物用には、繊維が少なく、煮くずれしないタイプのオクヅマリ(晩生づまり)、ミウラ、ショウゴイン(聖護院)などが適している。

 大根、大根洗う、大根煮、大根漬けるなどは冬の季語、大根の花は春、大根まくは秋の季語。

 京都右京区の了徳寺では十二月九日に大根焚(だいこんたき)という行事を行う。
 親鸞上人ががこの地で法を説いた時に、地元の人々が大根を煮て献じたのが始まりという。
「日だまりは婆が占めをり大根焚」(草間時彦)








タイスキ

 タイ風すき焼きの略だが、しゃぶしゃぶに近い。
 名称は日本風、作り方は中国風といえよう。
 真ん中に筒のついた中国風火鍋を用いる方式が多い。

 ナンプラーやチリソースを調味料にした付け汁に好みでコリアンダー、唐辛子、ニンニクなどを入れる。
 牛肉、ワンタン、エビのすり身のほか野菜類を多種用意し、好みによって適当に選ぶ。

 かつて日本に留学したタイ人が故郷に帰って、しゃぶしゃぶをタイ式(中国式)に改良したのだが、しゃぶしゃぶとすき焼きの名を取り違えた、のがこの名の起こり、という説がある。







竹鍋(たけなべ)

 孟宗竹など太い青竹を切り取り鍋代わりにする料理法、またはその竹筒。

 元来は川釣りの際、釣れたヤマメやアユなどを味噌や酒とともに青竹に入れ、たき火の周りに置いて煮込んだもの。
 後には料亭などでも車エビや白身魚を具にして作るようになった。

 竹筒は、水につけておけば数回の使用に耐えるという。








たけのこ(竹の子、筍)

 竹の地下茎から枝分かれして、まだ柔らかい状態の芽。竹の子として食べる部分は竹幹に相当する。成長が非常に早く、一日に1b以上伸びることがある。
 食用として栽培されるのは、モウソウチク、マダケ、ハチクの3種だが、モウソウチクが大半を占める。
 発芽期は西日本で3月、関東では4、5月。

 中華料理の各種食材になり、日本料理でも煮物、汁物、炒め物などに用いられる。
 鍋物には水煮や缶詰めになったものが使われる。

 竹の子にはあく抜きが必要で、皮のまま米糠入りの水で長時間茹でるのがいいとされるが、皮をむき、水煮するだけで十分という見方もある。

 筍は夏の季語。

 たかんな、たかうなともいう。








たこしゃぶ

 生タコを薄切りにし、お湯にすすいで、しゃぶしゃぶ式に食べる鍋物。

 ポン酢醤油、ショウガ醤油など、付け汁が味の決め手。
 北海道で発祥したとされる。








だし(出汁) だし汁

 煮出し汁の略で、さまざまな材料のうまみを煮出した汁のこと。
 日本では鰹節、だし昆布、シイタケ、煮干し(カタクチイワシ)などを使う。

 関東では鰹節を主に昆布が従、関西ではその逆にすることが多い。
 グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、コハク酸などを含む。鍋物、吸い物などの汁に用いる。

 材料によって分類され、こんぶだし、かつおだし、精進だし(干しシイタケ、カンピョウ、コンブを用いる)、煮干しだし、鶏ガラだし、などと呼ばれる。
 特殊なものとしては、酢だし(だしに酢、醤油を加える)、大豆だしなどがあり、西洋料理のブイヨンは牛肉のすね肉、タマネギ、ニンジンなどの野菜を材料にする。

 日本料理のだしは、鰹節や昆布を比較的早く鍋から取り出すのを基本とするが、鍋物の場合は、さまざまな具のうまみと混ざり合うため、長く煮込んでも味が悪くなることはないとされる。








だしを引く

 昆布、鰹節などのだし材料からだしを抽出すること。
 だしを取ると同義。

 うまく出なかっただしのことを「引き損ない」という。







だだみ鍋 だだみ汁 たつ鍋

 秋田、山形などの郷土料理。
 だだみ、たつはタラの白子のこと。

 味噌または醤油仕立ての鍋にタラの切り身、だだみ、野菜類を入れる。








たつ鍋

たつ鍋→だだみ汁鱈鍋








たぬき汁

 タヌキの肉を大根やごぼうとともに味噌汁で煮たもの、とされるが、タヌキの肉は非常に臭いので実際に食することは少なかったようだ。

 江戸時代では、こんにゃくをちぎって油で炒め、ごぼう、大根、豆腐などとともに煮た鍋物のことを意味した。
 「狸汁(たぬき)に化けるこんにゃく」という言葉もある。








楽鍋(たのしみなべ)

 明治時代に、魚や野菜など種々の材料を自分で煮ながら食べる鍋物を楽鍋と呼んだ。
 寄せ鍋とほぼ同じと考えられよう。

 闇汁の別名という説もある。







だまこ鍋 だまっこ鍋

 だまこ、だまっこはお手玉のこと。

 新米を押し固めて焼き、お手玉状にしたもので、きりたんぽの前身といわれる。
 またぎの携行食として発祥したとされ、山餅の別名がある。エビやイカのすり身を混ぜることもある。
 これに鶏肉や野菜を加えて鍋物にする。醤油仕立てにし、比内鶏やセリなどを入れるのが本式という。

 作り方や味はきりたんぽと変わらない。








タラ(鱈)

 タラ目、タラ科に属する魚の総称。
 日本近海には、そのうちマダラ,スケトウダラ(スケソウダラ)、コマイの3種がいるとされ、これらは北日本に生息する。
 このほか南日本に産するヒゲダラを加えて4種とする文献もある。
 またヨーロッパ、朝鮮半島、樺太(サハリン)などには淡水産のカワメンタイがいる。

 マダラは主として北の海に住み、体長が30aから1・3bに及ぶ。
 味は淡泊で煮物、刺身、すり身になり、鍋物にも適している。特に白子(菊子、雲腸=くもわた、くも子)が美味とされている。漢名は大口魚。

 スケトウダラ(魚偏に底、介党)はスケソウダラ(助宗)、メンタイ(明太)とも呼ばれ、その卵は明太子として珍重されている。 

 タラと言えば、一般にはマダラを指すが、北海道ではスケトウダラのこと。
 また静岡県小田原ではヒゲダラ(髭鱈)を、長崎ではアラ(魚偏に荒)をタラと呼ぶ。
 ヒゲダラとアラの鍋物は非常に美味で、フグ鍋に匹敵するともいわれる。

 タラの鍋物は各地に多く、ちり鍋(鱈ちり※)、潮汁(うしおじる)、どんがら鍋※じゃっぱ汁※などがある。








鱈鍋(たらなべ) 鱈ちり

 タラの身を入れたちり鍋。
 鍋に昆布を敷き、加える具は豆腐、シュンギク、春雨、ネギくらいにとどめるのが普通。
 ポン酢または醤油味の付け汁で食べる。

 マダラの頭とセリだけを入れる鱈のかしら鍋などもある。

<作り方の一例>
(鱈のかしら鍋)=マダラの頭は非常に硬いので、叩き割ったものを魚河岸や魚屋で買ってくる。
 鍋に昆布を敷いてたっぷりと水を入れ、タラの頭を水から煮る。煮上がる前にセリを入れる。他の具は豆腐程度にしたい。
 付け汁はポン酢醤油で、刻みネギを散らす。
 タラの頭部はゼラチン質が多く、ポン酢とよく合う。








団子汁(だんごじる)団子鍋

 小麦粉や米の粉の団子を鍋の具にする料理。
 すいとん※とほぼ同じとみていいだろう。

 大分など九州の各地で郷土料理としているが、他の地域でも作られている。
 味噌仕立て、醤油仕立ての双方があり、中に入れる具の種類も地域や家庭によってさまざま。

 かつては団子を中心にした素朴な味わいのものだったが、近年は味つけや具に工夫をこらし、ちゃんこ鍋風に仕立てたものが増えてきた。








- ち -


チェブオハウ

 鮭を用いた北海道アイヌの伝統料理。
 石狩鍋の原点と考えられる。

 アイヌ語でチは「我ら」、エブは「食べ物」、オハウは「汁」を表す。
 鮭の骨、あら、内臓にジャガイモ、ゴボウ、ニンジン、ネギなどを加え、塩味で煮る。








チゲ

 韓国語で「鍋物」の意味。
 味付けはコチュジャン(唐辛子味噌)、チョッカル(塩辛)、テンジャン(味噌)の三種に分かれる。
 呼び名は中心になる具によって、豚肉鍋(テンジャンチゲ)、豆腐鍋(トゥブチゲ)、海鮮鍋(ヘムルチゲ)などとなる。

<作り方の一例>
(豚肉と白菜キムチのちげ)=具は豚のバラ肉(薄切り)、白菜キムチ、生シイタケ、ニラ、ジャガイモなど。これらを煮干しのだし汁で煮込み、コチュジャンを加えながら調味する。








チークオ(汽鍋)

チークオ(汽鍋)→きなべ








チーズフォンデュ

 欧州北アルプス地方の伝統的な家庭料理。
 フォンデュはフランス語で「溶かす」という意味。

 土鍋に白ワインを入れ、沸騰したところにエメンタールチーズやグリエールチーズを溶かし、ニンニクやブランデーで香付けをする。
 チーズが溶けたら、スティックを用い、フランスパン(約2a角)や肉、魚介類をからめて食べる。

 チーズの代わりにサラダ油を使い、さいころ状の牛肉をスッティクで刺して揚げる「オイルフォンデュ」もある。








チーツァイツァーチンパオ(七彩雑錦保(下に火))=肉団子の寄せ鍋

 トンチァンニァントウフ※とともに広東・東江地方の名物鍋物。
 取っ手付きの土鍋で豚肉、牛肉、魚、エビ団子、するめ、しいたけ、白菜の芯、へちま、揚げ湯葉などを塩味のスープで煮込む。
 鍋ごとテーブルの上に置いて食べる。








ちゃぷすい(雑砕)

 元来は中国広東料理。
 鶏肉、豚肉、ハム、アワビ、タケノコ、ハクサイなどをラードで炒め、塩味の鶏のスープで煮込む。清代末期の大物政治家・李鴻章が街頭でホームレスたちの鍋物式料理を見てうまそうに思い、自宅で作らせたのが始まりだという。

 「ちゃぷすい」の名は英語の「chop」(食材を刻む)に由来する、と言われる。
 中国式の料理名なら「什景雑会」(シーチンツァーホイ)だろう。

 明治年代に李鴻章が来日した時、豆もやしを使うちゃぷすいを作らせていたことから、日本人はこれを「李公雑砕」と呼び、好んで食べるようになった。

 その後、東京などではチャプスイハウスが出来るなど、大いに流行したが、戦後になって忘れ去られた。








茶飯(ちゃめし)

 本来はお茶で炊いたご飯で、おでんには付き物だった。

 明治のころの茶飯は極上の煎茶をよく煮出し、少量の塩を加えて白米を炊きあげたという。
 後に塩のほかに醤油や酒を入れたり、炊きあがった飯に醤油をかけたりする「桜茶飯」が主流になった。








ちゃんこ鍋

 語源は長崎の鍋料理「サンコ鍋」(中国から伝わった板金製の鍋を用いる)、あるいは長崎の外人が中国人の料理人を「チャンコ」と呼んだため、相撲部屋の料理番のおやじを「ちゃん」と呼んでいたため、などの説がある。
 明治時代、長崎に巡業に来た力士たちがこの地の料理にヒントを得て作ったともいわれ、やがて「ちゃんこ」は相撲社会で食べ物を意味するようになった。

大相撲の各部屋では毎回(一日二回)の食事が鍋物なので、力士の食事がすなわち、ちゃんこ鍋。各部屋には、そっぷ(スープ)炊き、味噌炊き、キムチ味など各部屋の得意な鍋がある。
 最も多いのは魚介類を中心に野菜たっぷりの豪快なスタイル、油揚げが一枚そのまま入っていることもある。
 かつては、四つ足の動物は四つん這いになるということで、これを嫌う傾向があったが、現在では精肉類はもちろん、ハム、ソーセージの類も鍋に入れている。

 最近では元力士や親族が経営するちゃんこ料理屋が増えてきた。
 東京では吉葉、寺尾、時葉山、北の富士、川崎など多くの店がある。








ちり ちり鍋

 魚介類、野菜類、豆腐などをお湯で煮てダイダイ酢醤油、ユズ醤油などにつけて食べる鍋料理。
 関西で発祥した。

 沸騰した湯に生きのいい魚の身を入れると、ちりちりと縮むところから、「ちり」と呼ばれるようになったという。
 明治以降、来日外国人が刺身を避けるので、魚の身を薄くそぎ、熱湯で湯がいて食べさせたところから、この料理が起こったという説もある。

 シラウオ、タイ、スズキ、コチ、アイナメ、ホウボウ、カキなど何種類もの魚介類を用いるが、フグだけは他の魚を入れない。








散蓮華(ちりれんげ)

 鍋物などの汁をすくうための匙(さじ)。
 その形を蓮の花が散った花弁の一つに見立てている。
 蓮華ともいう。

 元来は白地の陶製だが、金属製、プラスチック製もある。








調味料(ちょうみりょう)

 料理の味、素材の持ち味を調整するものの総称。

 甘さの砂糖、みりん、酸っぱさの酢、塩辛い塩、味噌、醤油などが主なものだが、辛さのトウガラシ、ワサビ、さらにトマトケチャップ、ソース、酒、油類などを含めることもある。

 和風料理では、「さしすせそ」(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)の順で使うのが好ましいとされている。
 浸透圧の関係で、砂糖を最初に入れるとあとの調味料のなじみをよくする。
 食塩は具の水分を抜き出す作用を持っているが、砂糖を加えた後なら水分を保てる。
 酢は先に入れた塩味に柔らかみを与え、味噌は粘性を保たせるために最後に入れるのがいいという。
 ただし以上は基本的な考え方であり、たとえば生臭さを消す場合は、味噌は早めに入れた方がいい。

 このほかに合成調味料(→味の素)があるが、一般的には通常の調味料の補助として用いられている。








チントンニウロウタン(清敦(さんずい)牛肉湯)

 中国四川料理の一つ。
 タン(湯)は中国語でスープの意味。

 この料理は出来上がりの形、青銅器風の大鍋から食べるところなどから鍋物風だが、台所で調理をしてから出してくるので、鍋物とはいえないかもしれない。
 黄牛(日本でいう赤牛)の肉を主材料に丸型大根も入れる。牛肉の血を十分に抜き、澄んだスープを作るのが特徴。弱火でゆっくり煮込み、泡やあくをよく取る。
 塩、山椒、紹興酒などで味を付ける。








- つ -


つくね

 元来は揚げ物だった。
 魚のすり身に玉子、片栗粉をまぜて練り、ニンジン、シイタケの細切りや青豆を加えて油で揚げる。
 薩摩揚げに似ていたようだ。

 後に、鶏のミンチを煮て固めるものを、つくねと呼ぶようになり、「つくね揚げ」に対して「つくね煮」の名も生まれた。
 鍋物の場合は、鶏ミンチ、小麦粉、玉子、味噌、ごま油、こしょうなどを混ぜ合わせ、粘りが出てきたものを団子状にして鍋に入れていく。
 ちゃんこ鍋※には欠かせない具だが、これを主体にした「つくね鍋」もある。

 つくねの語源は「つくねる」(束ねる、こねるの意)だという。
 ヤマイモ科に「ツクネイモ」があるが、これとの関係は不明。








壺焼き(つぼやき)

 巻き貝の貝殻を鍋代わりにして火に掛けてものを煮ること。
 サザエが代表的だが、青螺(アオニシ)などを使うこともある。
 小鍋の一種と見立てることも出来よう。

 本来は生きた貝そのまま火に掛ける原始的な方法だが、料理屋などでは一度煮た後に中身を取り出し、ミツバ、シイタケ、ギンナンなどを加えて、だし汁とともに貝殻に入れて煮るのが普通になった。

 壺焼きは俳句の春の季語になっている。花見など春の行楽の際によく食したためだろう。
「壺焼きを待てる間海の色変わり」(森田峠)








つみれ つみいれ

 元来は、料理の一種。小麦粉をこねたものや、魚肉を摺ったものを、少しずつつまみ取って(つみ入れ)、汁の中に入れていく。
 現在ではこのようにして作った魚肉のすり身に小麦粉やショウガを加えて、煮て固めたものを「つみれ」と呼ぶようになった。
 おでんやちゃんこ鍋の有力な具になっている。

 材料にする魚はイワシが最も多いが、アジ、サバのほかタイ、ヒラメ、エビなどの高級魚を用いることもある。

<作り方一例>
=鰯の頭と内臓を取り、手開きして皮をはがす。
 ショウガの絞り汁、片栗粉、塩(少々)を加え、包丁で細かく叩く(フードプロセッサーを使うと細やかになり、骨が気にならなくなる)。
 一口大にし、熱湯で下ゆでする。








つみっこ

 群馬県の郷土料理。
 すいとん※と同じ。

 小麦粉を練り、鍋に「つみで入れる」ので、この名が生まれたという。








鶴の汁(つるのしる) 鶴の羮(つるのあつもの)

 鶴の肉を主体に、茸類などを入れた汁物。
 羮も汁物とほぼ同じと考えられている。味噌仕立てが多かったという。

 江戸時代には武士階級に珍重された。
 大久保彦左衛門が徳川家光に食事を賜った時、「鶴の肉が少ない」と文句を言ったとか、前田利家がこれを食べ過ぎて腹をこわした、などの話がある。
 鶴が天然記念物になった現在では、絶対に食べることの出来ない鍋物である。
 江戸時代には鶴のほかガン(雁)、ヒバリ(雲雀)、ハクチョウ(白鳥)、アオサギ(青鷺)なども汁物(鍋物)の具にしていた。

 鶴が乱獲によって減少した後に、イナダ(→ブリ)の塩漬けにくず粉をまぶし、野菜などとともに煮る「つるもどき」という鍋物風料理も作られた。








- て -


定家煮(ていかに)

 タイ、アマダイ(甘鯛)など淡泊な魚を骨付きのまま焼き塩で味付けし、豆腐などの具をくわえ、酒か焼酎で煮る料理。
 みかん酢と好みの薬味で食べる。

 焼き塩を用いるので、「来ぬ人を待つほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身も焦がれつつ」(藤原定家)
にちなんで名付けられたという。








てっちり

 河豚鍋※の別名。
 ブグは当たることから、関西では鉄砲という別名がある。

 鉄砲のちりがすなわち「てっちり」。
 フグ刺しは「てっさ」となる。








鉄鍋(てつなべ)

 鉄で作った鍋で、あらゆる鍋物に向く。
 熱が伝わりやすく、冷めにくい。

 難点は錆が出やすいこと。煮ているうちに錆が溶けだし、味が変わることがある。

 日本に鉄鍋が伝わったのは558年(崇峻天皇の元年)。
 百済から将徳という人物(鍋博士と呼ばれた)が製造法をもたらしたという。

「鍋釜の冶工は河内我孫村に始まり、近江の辻村これに続き、その後に至り摂津大阪に専ら多く之あり」(和漢三才図会)








田楽(でんがく)

 田楽豆腐(串刺し豆腐に味噌をつけたもの)の略語。
 元来は田植えにちなんだ舞踊(田楽)のこと。

 豆腐の串刺しの形が田楽踊りの鷺の舞に似ていることから、この名が起こったという。
 後に「こんにゃく田楽」(おでんの前身)を意味するようになり、魚を用いる魚田(ぎょでん)も生まれた。
 さらに魚肉の練り製品や鶏肉、獣肉などを用いる「煮込み田楽※」が出来、現在のおでんに変化していった。

 豆腐、こんにゃく、里芋を煮ながら、鍋の中央の味噌(容器に入れてある)をつけて食べる鍋物方式もある。→おでん








天領鍋(てんりょうなべ)

 大分・津江地方に伝わる鍋物。
 日田が天領だったころ、津江地方では日田から見回りの代官がくると、地元に多い猪の鍋物を作って献じたという。
 代官鍋の名称もある。

 現在では猪肉のほか鶏肉や魚を入れることもある。
 ダイコン、ネギ、ゴボウなどの野菜を水煮し、肉はしゃぶしゃぶ式で、ユズ胡椒入りの二杯酢につけて食べる。








- と -


トウガラシ(唐辛子、唐芥子)

 ナス科の多年草だが、温帯では一年草として扱われる。
 中央・南アフリカの原産。果実は品種によって形、大きさ、辛さが異なる。辛いものではタカノツメ(2―5a、鷹の爪のように曲がっている)が代表的で、メキシコのチリ、アメリカのタバスコも近縁。
 ヤツフサ(果実が茎の上に6―10本、房状につく)は、朝鮮半島のキムチによく用いられる。辛くないもの、辛さが少ないものにはピーマンやシシトウガラシなどがある。

 唐辛子を材料にした調味料(豆板醤、七色唐辛子※など)が鍋物の薬味によく用いられる。








冬瓜鍋(とうがんなべ)

 中国各地にある家庭料理。
 冬瓜は広東でよく産するので、鍋物の中では広東料理のツァーチントンコワリー(雑錦冬瓜粒)が有名。
 これは冬瓜と糸瓜(へちま)を細かく豆粒大に刻み、アヒルの砂肝、豚の赤身肉、鶏肉、蓮の実などとともにスープ(紹興酒、胡椒、塩で味付け)で煮込む。

<作り方の一例>
(第一回鍋物コンクールの優勝作品)=中華鍋に油を敷き、銀ダラの切り身を焦げ目がつくまで焼く。
 チキンスープを入れて銀ダラの身を崩す。
 冬瓜をさいころ状に切り、煮込む。煮上がる前にクコの実を散らす。
 薄緑色の冬瓜がきれいなので、翡翠鍋と名付けられた。








豆乳鍋(とうにゅうなべ)

 豆乳と白味噌で出しを作り、鶏肉、鮭、牡蠣や野菜類を入れた鍋物。

 牛乳をだしにする飛鳥鍋※を参考にして考案されたという。








豆腐(とうふ)

 大豆をすりつぶし、釜で炊き、液体を漉して豆乳を作り、にがり(凝固剤)を混ぜて型枠に入れて固めたもの。
 良質のタンパク質が多く含まれている。

 中国で発明され、日本には奈良時代に伝えられた。
 中国には、前漢時代の淮南王・劉安が仙術者を集めて不老長寿の薬を作らせる過程で豆腐が作られた、という伝説がある。

 約1000年前の五代の「清典録」(陶谷著)には「町の人々は、豆腐と羊肉を比べて論じた」という記述があり、そのころから豆腐の栄養分に関する知識があったと考えられる。
 奈良時代に来朝した鑑真和上の一行に豆腐職人がいて、精進料理として日本人に教えたとも言われる。

 豆腐という名称について、長い歳月の間に納豆と入れ替わったのではないか、といううがった説がある。
 豆腐は大豆の汁を「型に納めたもの」だから「納豆」と書く方が正しい、納豆は大豆を「腐らせたもの」だから「豆腐」とすべき、いう見方だ。
 しかし中国語でも豆腐は豆腐であり、発音は「トウフ」であるところから、この語自体が中国からの渡来語とみなせるだろう。

 豆腐の薄切りを揚げたのが油揚げ※、厚めのを揚げたのが厚揚げ(生揚げ)、豆腐を崩し、卵白、山芋のおろし、人参、ゴマ、ぎんなんなどを混ぜて揚げたものががんもどき※(飛竜頭=ひりょうず)で、いずれもおでんを初めとする鍋物の具になる。

 湯豆腐は冬、冷や奴は夏の季語。
「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」(久保田万太郎)








豆腐百珍(とうふひゃくちん)

 江戸時代の料理本。
 1782年、83年に正、続の二編が発刊された。

 豆腐料理をそれぞれ100品(続編には豆腐を使わない料理もある)の作り方を紹介している。
 鍋物とみなせるものは湯豆腐のほか、次のようなものがある。

 八杯豆腐=豆腐をうどんくらいの太さに切り、だしに水溶き葛を加え、煮立ったら醤油、酒などで調味。薬味にさらしネギ、もみノリ。だし汁の割合が水4、醤油2,酒2の割合なので、八杯豆腐という。

 あんかけ=豆腐をやや大きめに切り、鍋に水をたっぷり入れ、塩仕立てにして水溶き葛をかける。

 煮抜き=深鍋に昆布を敷き、水の中に豆腐を切らないで入れて、一昼夜ほどとろ火で「煮抜く」。豆腐に「ス」がたち、その間に昆布の味や塩味がしみこんだところを、箸でちぎりながら、おろし醤油で食べる。








豆腐鍋(トウフクォ)

 元来は中国・江南(揚子江の南)の名物料理。  清乾隆年間に宮廷料理となった。  豆腐を一丁そのまま鍋に入れ、その上にラードを置く。ハム、生エビ、干しエビ、葱、きのこなどを入れ、塩味の鶏スープで煮込む。







ドジョウ(泥鰌、鰌)

 淡水産の小型魚。
 細長く、円筒形で、表面にぬめりがある。

 ウナギの代用品として用いられたが、独特の野趣を好む人が少なくない。
 泥鰌鍋※は丸ごと煮るのが丸鍋、割いて骨を取った物を煮るのが柳川鍋※と呼ばれる。

 泥鰌は6月が旬とされ、泥鰌鍋は夏の季語。
 冬に土の中に潜んでいるのを掘り起こして取ることもある。これは「泥鰌掘る」といって、冬の季語となる。

「どぜう」という表記は老舗・駒形どぜう(1801年創業)、初代主人の造語とされる。
 旧かな遣いの正式な表記は「どじゃう」。








泥鰌鍋(どじょうなべ)

 ドジョウを丸ごと使う。
 割いたものを使うのが柳川※で、それと区別するために「丸鍋」と呼ぶ店もある。

 柔らかくなるまで煮た丸ドジョウを濃い割り下で煮て、刻みネギをたっぷりかけるのが、通常の形。
 山椒か七味をかけて食べる。

 江戸時代の盗賊・ねずみ小僧次郎吉は盗みに入る前に必ず泥鰌鍋を食べた(泥鰌はつかまりにくいため)という。

 泥鰌鍋は夏の季題。
「川越せば川の匂ひやどぜう鍋」(村山古郷)








土手鍋(どてなべ)

 土鍋の内側に味噌を土手のように塗り、だしで溶かしながら、具を食べる鍋料理。
 元来は土手焼き、あるいは土手焼き鍋と呼ばれ、魚や野菜などを食した。

 江戸時代の中期、大阪でカキ料理屋を始めた土手長吉が考案したのが「カキの土手鍋」という説もある。
 後に土手鍋といえば牡蠣鍋を表すようになった。
 ただし、現在の牡蠣鍋では、「土手」を作るやり方は少なく、料理屋では、味噌汁仕立てにしているところが多い。

<作り方の一例>
=白味噌2,赤だし味噌1の割合。酒、みりん、砂糖を加えて練る。豆板醤を加えてもいい。
 具には牡蠣の剥き身、白菜、人参、しいたけ、ねぎなど。
 土手の味噌をだし汁で好みの濃さに溶かしながら食べる。








土鍋(どなべ)

 陶土製、蓋つき鍋の総称。
 かつては素焼きだったが、底を除いた上部にうわぐすりを掛けるのが普通になっている。

 京都の清水焼き、三重県の伊賀焼きが有名だが、現在の最大の産地は三重県四日市。
 比較的浅底のものが多く、把っ手と口つきの行平(ゆきひら)もこの中に入るだろう。
 土鍋は厚みがあるため、熱が平均的に伝わり、蓄熱効果も高い。鍋物には理想的な鍋とされる。

 上等な製品ほど加熱による膨張率が高く割れやすいので、使い方には以下の注意が必要。
  @使い始めには米のとぎ汁を7,8分まで入れて、蓋をせず弱火で10分くらい煮る
  A火にかける時は周りの水気を拭く
  B使用後はクレンザーを使わず、ふきんかスポンジで拭く
  C湿ったまましまわない(黴が生える)
  D外側にひびが出たら割れる恐れがあるので、3分がゆ(おもゆに近い)で30分ほど煮込むとひびの補修が出来る――
大量生産品は特殊な土を混ぜて強度を加えているので割れにくい。

 土鍋のサイズは6号(直径21a=一人用)、7号(25a=2,3人用)、8号(28a=4,5人用)9号(32a=4,5人用)、10号(35a=5,6人用)に分かれている。

 中国では沙鍋(シャクォ)※といわれる。








土鍋幸福論(どなべこうふくろん)

 1990年代初め、バブル経済崩壊後に土鍋がよく売れた。
 不況のため残業が減り、サラリーマンは外食を控えて家で食事をするようになったためと考えられている。

 経済的な状況は悪いが、家庭団らんの機会が増えたのは確かだ。
 不況によって家族そろって土鍋を囲むような本来の幸福を取り戻した、という見方が生まれた。








土瓶蒸し(どびんむし)

 土瓶の中に出し汁と各種の具を入れ、蒸す料理。吸い物ではあるが、壺焼き※と同様に小鍋立て※の一種とも考えられよう。

 土瓶蒸しの名が生まれたのは明治以降。
 マツタケを入れるのが本来の形だが、シメジ、マイタケ、エノキダケで代用することもある。
 小ダイ、アマダイ、鶏肉、エビ、ミツバなども入れる。








トムヤムクン

 タイ料理の一つで、素焼きの小鍋を用いる。トムヤムは「辛味、酸味」、クンは「エビ」を意味する。
 汁の味付けには唐辛子のほか、カー(タイ産の生姜)、レモングラスなどの香辛料を多量に使う。

 日本でもエスニック料理の流行とともに、若者を中心によく食さるようになった。

 女性俳句作家のこんな作品もある。
「ふらここを揺らしトムヤムクン食べに」(ふらここはブランコのこと)(仙田洋子)








鶏鍋(とりなべ)

 鶏鍋は「鶏肉を用いたすき焼き」という見方があるが、「鶏肉を用いる鍋物の総称」とするのが大勢。
 明治時代から牛鍋に対抗する形で鶏鍋も流行った。

 関西では鶏鍋、関東ではシャモ鍋という呼び分けがあったが、東京でも鶏鍋屋と乗る店は少なくなかった。
 関西では鶏ガラをじっくり煮込んだ白いスープ、ポン酢で食べる。
 関東風では味噌仕立てか醤油仕立てが普通だった。

 このほか各地には土地の特徴を生かした地鶏鍋や鶏の挽肉でつくるつくね鍋などがある。
 すき焼き風を「鶏のすき焼き」「鶏すき」と呼ぶ地域もある。

 作家の三島由紀夫は東京・新橋「末げん」の鶏鍋を好んでいた。
 市ヶ谷自衛隊に乱入、自決(昭和45年11月25日)した前夜も、盾の会の会員とともにこの店で鶏鍋による「最後の晩餐」をとった。

<作り方の一例>
(鶏鍋すきやき風)=鶏肉の脂(皮など)を熱した鍋にこすりつけ、ネギを炒める。
 割り下は酒、みりん各1、醤油2,だし4の割合にし、鶏肉、焼き豆腐、しらたき、三つ葉などを入れて煮る。








鶏味噌鍋(とりみそなべ)

 名古屋地方の鶏鍋※をいう。
 すき焼き風の割り下に濃厚な八丁味噌を加えた中に鶏肉、鶏もつ、ネギなどを入れる。最後にうどんを入れるのが特徴。
 このほかにも各地に鶏肉の味噌仕立て鍋がある。

<作り方の一例>
(超簡単とり味噌鍋)=味噌と鶏肉を鍋の底に置き、その上に白菜を山盛りにし、蓋をかぶせて火に掛けるだけ。
 味噌を少量の日本酒か紹興酒で溶いてもよい。
 白菜から水分が出るので、だしや水は入れない。








どんがら汁

 山形県酒田地方の漁師料理。
 タラのぶつ切りや野菜類をみそ汁に入れたもの。タラの身よりも、あらや白子、肝などが主役になる。








どんこ汁 どんこ鍋

 ドンコは日本列島沿岸の水深300bあたりにいる魚で、正式名称はエゾアイナメ。
 色が黒く、ずんぐりし、見た目は悪いが、味がよく、東北地方を中心によく食されている。
 淡泊な味の肉と濃厚な味の肝の取り合わせが鍋物に絶好。
 ダイコン、ミツバ、豆腐などを加える。

 味噌仕立てにするところが多いが、醤油仕立て、澄まし汁風もある。

「みぞれ来し手につつみこむどんこ汁」(野沢節子)








豚しゃぶ(とんしゃぶ)

豚しゃぶ(とんしゃぶ)→常夜鍋(じょうやなべ)








とんちゃん鍋

 福岡に伝わるもつ鍋の一種。
 牛もつを中心に濃い味噌、あるいは醤油味のだしで煮込む。
 牛の小腸を煮込む大阪の「てっちゃん鍋」と似ている。








トンチァンニァントウフ(東江醸豆腐=豆腐の肉詰め炒め煮)

 名称からすると炒め物のようだが、取っ手つきの土鍋で煮込み、そのままテーブルの上に置いて食べるので、中国では鍋料理とされている。
 東江は広東の大河・珠江の支流。東江流域で好まれている料理。

 漢代に淮南を治めていた王・劉安が考案したという説もある。

 豚肉、魚、豆腐、干しエビ、葱などを片栗粉でとろみをつけた上湯(上等のスープ)で煮込む。
 この地の出身者には華僑が多く、昔から日本へ渡来する人も少なくなかった。
 彼らは特に東江醸豆腐を懐かしんだといわれ、福岡のとんちゃん鍋との関連があるのかも知れない。






- な -


菜汁(なじり)

 奥能登の料理。
 大根の葉を刻み、お湯で煮て、その中にイワシの糠漬け(こんかイワシ)を入れる。
 こんかイワシは非常に塩辛いので、塩を使わなくてもちょうどいい味になる。イワシの身を崩しながら食べる。

 昔はみそ汁の代用だった。








納豆汁

 納豆の製法や調理法は鎌倉時代に禅とともに発達した、といわれる。
 当初は大徳寺納豆、浜納豆のような固めの塩辛納豆だったが、のちに糸引き納豆が登場した。
 汁(鍋物)に適するのは糸挽き納豆。

 大 豆製品を汁物にする場合、味噌、豆腐、納豆、油揚げ、湯葉など種を増やすほどうまくなる、という言い伝えがあり、納豆汁もその一例といえるだろう。

 江戸時代の料理本「料理物語」には、「納豆汁は味噌をこくして、だしをくわえるがよく、くきやとうふはこまかに切り、小鳥はたたいていれるがよい。納豆はだしでよくすりのべる。吸い口はからし、ゆず、にんにく」とある。

<作り方の一例>
=ダイコン、ニンジン、サトイモなどをよく煮て味噌汁を作り、豆腐、油揚げを加え、煮立ってから刻み納豆を入れる。
 薬味にはネギのみじん切り。








七色唐辛子(なないろとうがらし)

 トウガラシ、サンショウの実、ケシの実、陳皮(ミカンの皮)、ゴマ、シソの実などを粉にして混ぜた日本独特の混合香辛料。
 鍋物の薬味として、また香り、辛味つけとして用いられる。

 関東では七色唐辛子、関西では七味(しちみ)唐辛子と言っていたが、関東でも次第に「しちみ」が優勢になってきたようだ。

 江戸時代の初期、両国橋のたもと、薬研堀(やげんぼり)の唐辛子屋・徳右衛門が唐辛子に6種の薬味を加えて創り出したという。
 京都では清水坂の七味屋が知られている。








菜の花鍋(なのはななべ)

 各種の鍋物に菜の花を散らしたもの、または菜の花を具の一種としたもの。

 千葉県千倉など、菜の花を観光の売り物にした土地にある。








鍋(なべ)

 ものを煮炊きし、または炒り煮するための容器。

 釜よりも底が浅く、扁平で、上に蓋がある。金属製、陶磁製、石製のほか、料理によって紙鍋※竹鍋※などを用いることもある。

 鍋は中国語になく、古くは堝という字を用いた。
 金属製を鍋、陶器のものを堝と区別した時代もあった。
 現代では、鍋はあらゆる素材のナベを意味し、鍋物料理をも表す。
 熊本県玉名郡の南部には鍋という地名がある。








鍋冠まつり

 琵琶湖湖畔・米原町の筑摩神社に伝わる祭礼で、毎年五月十三日に行われる。
 7−8歳の少女が鍋を被り、神様に食物を献上した風習を伝える。

 筑摩(福岡県)に古くからある鍋祭、鍋被(なべかずき)という祭が原流。








ナベコワシ(鍋破)

 北日本の海に産するカジカ科の魚。
 体長約30a。

 みそ汁にすると非常に美味で、鍋をかき回し、底を破るということから、北海道室蘭地方でこの名が生まれた。
 あぶらと呼ばれる肝臓を必ず入れ、ジャガイモ、ニンジン、ネギも加える。
 ナベコワシのほかトウベツカジカも使い、総称して「カジカ汁」という。








鍋座(なべざ)

 いろりの脇にある主婦の座の意味で、岐阜県揖斐地方の方言。
 主婦が鍋の具や汁を椀などによそい、給仕していた時代の言葉と考えられる。








鍋鴫焼き(なべしぎやき)

 ナスを油で炒め、味噌で味付けした料理。
 ナスが鴫に似た味になるからだという。

 シギ焼き、なべしぎとも言う。汁がないので鍋物ではない。








鍋鉄火

鍋鉄火→鍋道楽








鍋道楽(なべどうらく)

 美食者のこと。
 これが過ぎて財産を失うこと、またはその人。

 鍋鉄火、鍋どらともいう。








鍋奉行(なべぶぎょう)

 鍋物を食べる際、具の入れ方や食べるタイミングなどを取り仕切る人。
 鍋に関する知識をひけらかしたり、うるさく注意したりする人を揶揄するニュアンスもある。

 室町時代から江戸時代、幕府や大名家には厨房や膳部を司る「台所奉行」や「膳奉行」がいたが、これらの役名からヒントを得た命名かもしれない。
 古い辞典にはなく、比較的近年に出来た言葉と考えられる。








鍋取(なべとり)

 熱い鍋を持ち上げる際、両手に持って鍋には直接触れないようにするために、わらなどを袋状に編んだもの。

 オーブン用ミトンの同類。








鍋物(なべもの)

 鍋で食材を煮ながら食べる料理の総称。

 全日本鍋物研究会では鍋物の基本的条件として
  @火が見える(食事の場で煮る)
  A複数の人がいっしょに食べる
  B各自が自分で鍋の中から具を取り出す
  C鍋の中に汁がある
−−などを挙げている。

 しかし小鍋立て※を初め、各地域の料理、江戸時代の料理などには上記の条件に合わなくても立派な鍋物と認めたいものが数多く存在している。
 「鍋物とは何か」について、今後も議論が必要だろう。

「鍋物」という語は比較的近年に生まれたようである。
 昭和30年以前の辞典に「鍋物」は見あたらない。
 明治初期の流行作家・上司小剣の「父の婚礼(1915年刊行)」に「鍋物なぞが出ると、自分は遠慮なく鍋の中に箸を入れて」の記述があるが、一般的な言葉になったのは戦後のことだろう。

 最近の広辞苑には「鍋料理のこと」とある。








鍋焼き(なべやき)

 本来は魚、鶏、鴨などの肉を野菜とともに味噌味や醤油味で煮込み、鍋に入れたまま食べる料理のことだった。
 現代の鍋物の意味に非常に近いといえよう。

 「なべやき みそ汁にて鍋にて其ままに申候也。たひ、ぼら、こち、何にても取りあはせて候」(「料理物語」=寛政時代)

 幕末に刊行された「当世女風俗通」には「不好衆(好かない男)の煮た鍋焼きは、わらび一筋喰ふこともいや」とある。

 初めは関西地方で流行し、1870年代に江戸に伝わったとされる。
 後にエビの天ぷらなどを入れる「鍋焼きうどん」の略称になり、さらに「鍋」が鍋焼きの略称にもなった。

 鍋物を「鍋」と略す現在の呼び方にも通じている。








鍋類(なべるい)

 各種の鍋の総称、あるいは鍋に類似したものをいう。

 江戸、明治時代には鍋焼き※(鍋料理)の意味にも用いられた。








ナンプラー

 魚醤の一種。
 魚介類と塩を混ぜ、熟成させた調味料で、タイ料理によく用いられる。

 ベトナムではニョクマムという。








- に -


にいたにた

 千葉県の漁師が船の上で食べていたちゃんこ鍋風の料理。
 捕れた魚を数種類ぶつ切りにし、味噌仕立て、野菜を加える。

 「煮えた煮えた」から、この名が起こったという。








肉食(にくしょく)

 鳥獣の肉や乳製品を食物とすることで、菜食と対をなす。

 日本では仏教伝来の後、天武天皇がウシ、ウマ、イヌ、ニワトリの肉食を禁じ、聖武天皇は家畜を殺すことを禁じた。
 さらに江戸時代には5代将軍・徳川綱吉が生類憐れみの令、馬の愛護令などを出し、牛馬や犬を食べるのはいうまでもなく、鳥獣の殺傷、見せ物にしても罰せられる状態になった。
 その後、極端な令が廃止されてシカ、イノシシ、ウサギ、ニワトリなどを食べる習慣が復活し、幕末から明治初期になってようやく牛鍋※が流行するようになった。

 1872年に明治天皇が自ら牛肉を試食され、「公的に肉食の禁を解いた」とされる。
 日本人が欧米人に劣らぬ体力を備えるため、健康増進のため、などの理由があったという。
 同年1月、宮内庁は「わが朝にして中古以来、肉食を禁ぜられにしに、畏れ多くも、天皇いはれなき儀に思し召し、自今肉食を遊ばさるる旨、宮にてお定めありにけり」という示達を出した。








煮込み饂飩(にこみうどん)

 岐阜南、西部地域の名物料理だが、東海地方でもよく食されている。
 うどんは生麺のまま、油揚げ、鶏肉、長ネギなどとともに大鍋に入れ、煮干しのだし、濃いめの味噌仕立てで煮込む。
 容器に取ってから削り鰹節、七味唐辛子などをかける。

 土鍋で煮て1人ずつ食べるのは接客用とされる。








煮込み田楽(にこみでんがく)

 大阪など関西の料理。
 こんにゃく、豆腐、ダイコンを煮ながら、鍋の中央に置いた容器の中の味噌をつけて食べる。
 おでんの前身とされるが、醤油味で煮込む「関東炊き」とはかなり違う。

<作り方の一例>
=鍋に昆布を敷き、水を入れる。
 ダイコン、焼き豆腐、こんにゃくは2,3aの厚さに切って茹で、田楽串(青竹を平らに削ったもの)に刺す。
 味噌は少量のだし、みりん、砂糖でのばし、容器に入れて鍋の真ん中に置く。昆布は沸騰したら取り出す。
 具を鍋の中に放射線状に並べ、暖まったら味噌をつけて食べる。








煮汁鍋(にじるなべ)

 だしに醤油、味噌、塩などの味を付けた鍋物の総称。
 具を鍋から取り出し、ポン酢やたれにつけて食べる「水鍋(水煮鍋)」、すき焼きなどの「すき鍋」に対応する。








煮なます

 酢、塩、酒で調味しただし汁でサバやイワシを煮る料理。

 サバは三枚におろし、身を用いる。イワシは頭とはらわたを取り、食べる時に骨から身を外す。
 煮上がったらダイコンを手早く鍋に削り込み、あまり柔らかくならないうちに食べる。

 山陰地方の郷土料理。








煮奴(にやっこ)

 元来は、豆腐を奴に切り、醤油とだしで煮込んだもの。
 後に焼き豆腐を用いたり、牛肉や三つ葉などを加えるようになった。

 鉄鍋を用い、牛の脂を焼き、割り下で煮るなど、すき焼きと似ているが、主役はあくまでも豆腐で、牛肉は脇役程度。








ニンジン(人参)

 セリ科の二年草。
 食用にする根の赤さに特徴があり、色彩を豊かにする効用もあって、各料理に広く用いられている。

 かつて日本で主に栽培されていた東洋種は梅雨期に種をまき、冬季に収穫していたので、俳句では冬の季語になっている。
 近年は春まき、秋まきの欧州種が主力になり、一年を通じて出回るようになった。








ニンニク(大蒜、葫)

 ユリ科の多年生草本。
 鱗茎には強い辛味と独特の香りがあり、香辛料、強壮食品として用いられる。

 日本では長らく薬用として使われ、仏教で忌避されていたことなどから一般的な食物にはならなかった。
 そのため伝統的な日本の鍋物ではあまり用いられなかったが、欧風料理や中国、韓国の料理が浸透するに従い、好んで食べる人が多くなった。
 中国風、韓国風鍋物では、付け汁の薬味のほか、具を炒める場合に使うことが多い。








- ぬ -


- ね -


ネギ(葱)

 ユリ科の多年草。
 原産地は中国西部と考えられている。

 アジアでは昔から重要な野菜として好まれているが、欧米ではあまり栽培されていない。

 系統は、株分かれを繰り返し、多くの葉が出来る「葉ネギ」(千本ネギ)と、株分かれしない「根ネギ」(根深ネギ、一本ネギ、一文字=ひともじ)の二つに分けられる。
 関東では主に白い部分の多い種が、関西では緑色の長い種が好まれている。

 関東の深谷ネギ、下仁田ネギ、関西の九条ネギなどが地域の名産品になっている。

 ネギには独特の刺激性と芳香性があり、鍋物の具として、薬味として欠かせない。
 緑色部にはカロチン、ビタミンc、カルシウムなどが多く含まれるが、白色部には少ない。

 最も美味な時期は十二月中旬から二月までとされ、葱、葱洗う、葱畑などは冬の季語。
 葱坊主は春の季語。
「葱買ひて枯れ木の中を帰りけり」(蕪村)








ねぎま鍋

 マグロとネギを醤油味で煮込んだ鍋物。

 江戸時代、マグロは白身魚より下等の魚とみなされており、文化、文政から天保時代にかけて庶民の間で盛んになった。
 さらに昭和の初期まで、マグロのトロは赤身より安かったため、ねぎま鍋にも専らトロが用いられていた。
 後年、トロの価値が高まるとともに、ねぎま鍋も高級料理になり、焼き鳥の「ねぎま」(鶏肉と葱)の方が一般的になった。








- の -


のっぺい汁 のっぺい のっぺ

 新潟県に発したとされる郷土料理。
 正月など特別な日に作られる。

 主材料となるサトイモがのっぺりしているところから、この名が生まれたというが、漢字表記は濃餅、能平。
 サトイモ、タケノコ、キノコ類、こんにゃく、ホタテの貝柱などを鍋に入れ、醤油、塩で味つけ。片栗粉でとろみをつける。

 大鍋で煮るが、大皿に入れて出し、さらに給仕が取り分けるのを原則とするので、鍋物とは認定出来るかどうか。
料理物語※」には「カモ、シギ、ウズラなどを入れた」と書いてあり、元来は鳥料理だったのかも知れない。

 新潟県以外でも作られており、岩手県では「ぬっぺい」とも呼ばれている。






- は -


パエーリャ(paella)

 スペインの炊き込みご飯だが、鍋から直接食べる食事の仕方などから「スープのない鍋物」という見方もある。
 両側にとってのある浅い鍋を用いる。

 オリーブ油でニンニク、タマネギのみじん切りを炒め、肉、魚介類、トマトなどを入れ、米を平均的に散らし、サフランを入れた熱湯をそそいでオーブンで焼く。
 鍋のまま食卓に出す。

 海岸地帯ではイセエビ、アンコウ、ムール貝など、内陸部ではブタの耳や足、ベーコンを用いるなど、土地によって特色がある。
 パエーリャは軽喜歌劇のことで、さまざまなに魚介類や肉類を楽しむという意味があるという。








博多煮(はかたに)博多水炊き(はかたみずたき)

 鶏がらを長時間煮込み、乳白色になった汁を用い、ぶつ切りの鶏肉を煮込んでポン酢醤油で食べる。
 鶏肉を食べ終わってから、白菜、春菊、豆腐、湯葉などをを入れるのが正式。
 最後には丸餅を入れたり、ご飯で雑炊を作ったりする。

 調理法が中国の火鍋に似ており、大陸から渡来した鍋物と思われるが、長崎の鶏の塩煮が原型という説もある。








ハクサイ(白菜)

 アブラナ科に属する1、2年草で、コマツナやカブと近縁。
 原産地は東南アジアか中近東と考えられているが、現在の結球型は中国北部で作り出された。

 日清戦争(1894−95年)で大陸に行った人が品質と貯蔵性に注目し日本に持ち込んだという説があるが、実際の渡来、栽培はそれより早い。

 1870年代の半ばに愛知県植物栽培所で「山東結球白菜」の栽培実験が行われ、宮城県農学校で一般的な栽培に成功している。

 日本では下部が結球し、上部が開いたずんぐり型が一般的だが、変種は非常に多い。
 中国ではキャベツ型、細長い型などもよく見かける。

 普通は夏の半ばから秋にかけて種をまき、3ヶ月程度で収穫出来る。
 保存がよくきくので、初冬から春先まで商品価値を保っている。
 また高冷地での春まき種も夏場に出荷され、ほぼ一年を通じて店先に並ぶようになった。

 柔らかで、繊維質やあくが少なく食べやすい。
 漬け物、炒め物、汁物、蒸し物に適しており、特に鍋物には欠かせないほどの野菜になっている。

 近年は韓国の白菜キムチが人気を集め、キムチ鍋※の愛好者も増えてきた。

 白菜は冬の季語。
「洗ひ上げ白菜も妻もかがやけり」(能村登四郎)








箸(はし)

 東洋独特の食事用具。二本一対の棒で食物を挟む。
 上古の日本では、箸は竹を細く削って曲げたピンセット状のものだった。

 奈良時代以前に中国から二本の箸がもたらされ、一般化したという。
 古事記には、すさのうのみことが出雲に行ったとき、川に箸が流れてきたのを見て、上流に人が住んでいることを知った、という話がある。
 これらから見ても日本人は相当昔から箸を使って食物を挟んでいたと考えられる。

 箸は、熱い鍋の中からさまざまな食材を取り出すのに適した道具といえよう。
 これに汁をすくいだす杓子と相まって鍋物文化を発展させたと考えられる。

 箸の材料には竹、杉、柳、桑などのほか金属、動物の骨や牙も用いられているが、鍋物用としては竹製や杉製など(割り箸を含む)が適しているだろう。

 なお日本では古来、各人が食物を自分の食器に移してから食べる、その際には菜箸や杓子で取る、というのが正式のマナーであった。
 各人が同じ鍋から自分の箸で食物を取るような鍋物式の食べ方は、長崎に起こった卓袱(しっぽく)料理※の影響とされている。








八仙鍋(はっせんなべ、中国読み=パシュエンクオ)

 珍しい材料をたくさん用いる鍋物の意で、中国宮廷料理の一つ。

 鶏一羽、ナマコ、フカヒレ、茸、エビ、鳩の卵などを使う。
 塩味のスープに好みの具を入れ、煮ながら食べる。








ハタ(羽太)

 スズキ目スズキ科に属するマハタ、バラハタ、スジハタ、トビハタなどに属する約50種を漠然と指す。
 本州中南部近海の岩礁地帯に住み、高級魚として珍重されるものが多い。

 マハタ、キジハタ、クエは鍋物の材料や刺身として非常に高価。
 体はいずれも長楕円形で口が大きい。
 クエ※の老成魚はモロコと呼ばれる。

 熱帯地方に住むバラハタは食べると中毒を起こすことがある。








法度汁(はっとじる)

 栃木県東北部の郷土料理。

 小麦粉を延ばし、小さい固まりにして野菜などとおもに煮込む。
 すいとん※団子汁※ほうとう※などに近い。

 江戸時代に、穀類を粉にすると食べ過ぎるので幕府がこれを禁じたことにより、この名が生まれたという。








八方だし(はっぽうだし)八方地(はっぽうじ)

 鰹節を主に醤油、酒、砂糖、水を加えて煮出した汁。

 煮物、そば汁、天ぷらの付け汁など、どんな料理にも合うのでこの名がついた。
 古くは「八方汁」と呼ばれ、「そば地」ともいわれる。

 一番だしを取った鰹節で昆布とととに二番だしを取り、酒を少量加えたもの、とう説もある。








蛤鍋(はまぐりなべ はまなべ)

 ハマグリを具に用いた鍋物で、「はまなべ」は「はまぐりなべ」の略称。

 昭和の初期までは関東の庶民的な食べ物だった。
 薄いアルミ製の鍋を用い、味噌仕立て。蛤は殻ごと入れ、白葱をたっぷり加える。

 神奈川県湘南地方、三浦半島などの名物料理・はまぐり鍋は、ハマグリのうまさを引き出すために塩だけで調味する。
 小鍋に大型のハマグリ、シイタケ、ハクサイ、エノキダケ、しらたきなどを入れ、さっと煮る。








はも(鱧) はも鍋

 ハモはウナギ目に属する海の魚でアナゴとも近縁。
 関西で特に好まれ、祇園祭や天神様の祭りのころ(夏)に食する。
「鱧たべて我も浪速の祭人」(矢津羨魚)

 小骨(肉間骨)が多いので、骨切り、骨抜きをして調理する。

 椀種のほか、酢の物、蒸しもの、蒲焼きなどにするが、鍋物にもなる。
 はも鍋はハモ漁の本場、兵庫県の沼島(淡路島の南)に発祥したという。大阪南部の和泉ではハモをすき焼き風にする郷土料理がある。

 現在の大阪では、紙鍋※などを用いた、薄い醤油味のものが目に付くようになった。タマネギがよく合うという。








はりはり鍋

 鯨肉と水菜(京菜、壬生菜)の鍋物。
 鰹節と昆布でだしをとる。鯨肉をしゃぶしゃぶのように、さっとスープにくぐらせて食べるのがこつ。

 かつては大阪を代表する庶民的な鍋物だったが、1988年の商業捕鯨禁止(水産庁は鯨肉輸入禁止を決める)によって鯨肉が手に入りにくくなり、高級鍋物になってしまった。
 関西では皮から脂をしぼった後の「ころ」や舌を意味する「さえずり」も使う。

 「はりはり」は水菜を食べるときの音に由来している。

 大正年代以降に東京でも専門店が出来たが、定着しないうちに姿を消した。








馬鈴薯(ばれいしょ)

馬鈴薯(ばれいしょ)→ジャガイモ








半助鍋(はんすけなべ)

 大阪では、ウナギは焼いた後に頭を取る。
 この頭を半助と呼び、焼き豆腐とともに土鍋で煮込んだものがかつて庶民に好まれた。

 だしを醤油、みりんで味付けし、弱火でゆっくり煮込む。
 「半助と焼き豆腐の鍋」「うずら豆腐」とも呼ばれた。








番屋鍋(ばんやなべ)

 新潟県の郷土料理。
 海岸の番屋で漁師が食べていた鍋物。

 魚のぶつ切りと野菜を味噌や醤油で煮込む。
 おかずと汁の双方を兼ねているので、「汁とも菜」とも呼ばれた。 








- ひ -


ひきおとし

 長崎県壱岐に生まれた鍋料理。
 骨付き鶏肉を油炒めし、そうめん、大根、白菜、こんにゃくなどとともに醤油、砂糖で味付けしただしで煮る。
 壱岐島では、ことあるごとに人々が集まり、庭先で飼っている鶏を絞め、鍋を囲む「ひきおとし寄り合い」で労働の疲れを癒してきたという。








ひきずり

 名古屋などで使われている鶏鍋※の別名。
かしわ※のひきずり」ともいわれる。

 具を鍋から「引きずるように」取り出すことから、この名が生まれたという。








びしょ鍋

 酒どころ、広島で生まれた鍋物。
 酒を大量に使い、正しくは美酒鍋だという。

 汁は酒を惜しみなく使い、塩とコショウで味付けする。
 鶏の肉、砂肝、白菜、ピーマン、タマネギ、人参などを入れ、生卵で食べる。

 造り酒屋の蔵人の間で好まれているが、一般にはあまり知られていない。








羊のしゃぶしゃぶ(ショワンヤンロウ、○=さんずいに刷=羊肉)

 元来は中国北方の少数民族・満州族の料理で、満州族が中国を支配した清代には宮中で冬至に食べるのが習わしだった。
 それとは別に北西域の回族料理が源という説もある。

 新中国成立後、北京のレストラン・東来順が刷羊肉を始めて人気を集め、全国的に広がった。
 日本の牛肉しゃぶしゃぶはこの流れと考えられる。

 刷羊肉用の肉は薄切りが命とされ、コックはいかに肉を薄く切るかの腕が試された。

 かつて冬の料理とされていたのは、肉を凍らせて切っていたため。
 冷凍技術が進んで一年中薄切りが可能になり、通年の食べ物になった。

 肉は内モンゴル集寧産の綿羊が好まれ、特に尾が短く、去勢されたものが最良とされる。

 肉は薄切りにされ、皿の上にきれいに並べられている。
 これを熱湯でゆすぎ、白くなったところをつけ汁で食べる。つけ汁はすりゴマ、ニラの花の塩漬け、ラー油、香菜やネギのみじん切りなどを好みに合わせ、自分で調合する。








ひっつみ

 青森県南部地方の郷土料理で、すいとん※と同じ。

 小麦粉を練って、小さく引きちぎりながら鍋に入れるので、この名が出来たという。
「とってなげ」という別名もある。








火鍋(ひなべ、中国読み=ホークォ)

 中国の鍋、または鍋料理。火鍋子(ホークォツ)ともいう。
 鍋で具を煮ながら食べる料理、あるいはその鍋という意味。

 鍋の形状や作りはさまざまで、鍋の真ん中に燃料入れと通風のための筒があるとは限らない。








蒜山鍋(ひるぜんなべ)

 岡山県蒜山高原の家庭で食されている。

「冬の百日雪の下」と言われるこの地の厳しい冬に適した鍋物とされる。
 牛肉、紅鱒、こんにゃく、豆腐、白菜、キノコ類などが材料。
 だし汁に牛乳を入れ、コンソメと味噌で味付けする。








- ふ -


ブイヤベース

 南フランス(特にマルセイユ)の郷土料理として世界的に有名。
 元来は漁師が安価な魚を材料にして作るスープを兼ねた魚料理だった。

 エビ、カニ、アナゴ、アンコウ、タラなどの魚介類にタマネギ、トマト、サフラン、ローリエ、パプリカ、ニンニクなどで風味をつけ、スープで煮る。
 汁と具を別の器に盛り、汁は薄切りのパンに浸して食べるので、日本的な鍋物とはかなり違う料理といえるだろう。

<作り方の一例>
=鱈、鮭の身を一口大に、イカの内臓を取り、輪切りにする。
 他にエビ、アサリ、ムール貝。オリーブ油とバターでニンニクのみじん切り、タマネギの薄切りを炒め、ローズマリーを振り、小麦粉を加え、さらに炒める。
 用意した魚介類を入れ、トマトの水煮、白ワイン、固形スープの素、塩少々を加え、少し煮込めば出来上がり。
 具がなくなったら、ゆでたスパゲッティを入れるといい。








フウテャオチァン(仏跳垣)

 中国福建省に伝わる最も古い料理とされる。
 鍋ではなく、壺を使うが、形態から鍋物の一種と考えられよう。

 鶏肉、アヒル肉、豚のすね肉、チョウザメの唇、なまこ、フカヒレ、魚の浮き袋、豚の胃、アワビなど山海の珍味を壺で煮込む。
 スープは紹興酒、草菰老抽(広東特産の薄口醤油)、塩で調味する。

 清代に鄭春発という料理人がこの壺煮を売り出したところ大評判、客が「この匂いをかげば、お釈迦様でも垣根を跳び越えて食べに来る」と言ったので、この名が生まれたという。








フォンデュ、フォンデユケーゼ

フォンデュ、フォンデユケーゼ→チーズフォンデュ








深川鍋(ふかがわなべ)

 隅田川河口に位置する東京・深川の名にちなんだ鍋物。

 前身はアサリ、バカガイ(アオヤギ)、シジミなどの剥き身の煮汁をご飯にかけた一膳飯「深川飯」だった。
 後にアサリ飯だけを深川飯と呼ぶようになり、さらに煮汁が独立して小鍋立て※となった。








ふかひれの土鍋煮(シャークォユイチー=沙鍋魚し(支羽))

 中華料理の一つで、高級な鍋物として知られる。

 干しフカヒレをもどし、タケノコ、シイタケとともに塩、紹興酒などで味付けした白濁スープ、鶏スープで煮込む。








フグ(河豚) 河豚鍋 河豚ちり

 フグ目フグ科の魚の総称で、フく、フクトともいう。
 ハリセンボン科、ハコフグ科、イトマキフグ科も含まれる。カワハギやマンボウも近縁の魚。

 鍋物用はトラフグを最高とし、ショウサイフグ、ゴマフグ、カラス、サバフグも使われる。養殖は昭和の初期から行われており、近年はますます盛んになっている。

 テトラドトキシンと呼ばれるフグの毒は卵巣、肝臓、腸、皮膚に多く、これを食べると運動神経、知覚神経が麻痺し、死に至ることもある。
 明治の初期までは禁制の魚だった。同21年、伊藤博文が下関に宿泊したとき、ちょうどしけで魚がなかったため、旅館ではやむを得ずフグを出したところ、あまりのうまさに禁を解いたといわれる。

 フグ中毒事件としては1975年、「人間国宝」だった歌舞伎役者・8世板東三津五郎が亡くなったのが有名。
 厚生省は1983年にフグの肝(キモ)の調理と販売を禁じている。

 しかし調理師が調理した安全なフグ料理は常に人気が高い。パック詰め冷蔵物の宅配も増加の傾向にある。

 河豚、河豚鍋は冬の季題。
「あら何ともなきやきのうは明けてふくと汁」(芭蕉)

<作り方の一例>
=鍋に昆布を敷いて煮立たせ、フグの中骨を入れてだしを取り、フグの肉や野菜類、豆腐、キノコ類などを入れる。
 付け汁はポン酢醤油、薬味は紅葉おろし。








福鍋(ふくなべ)

 新年に若水を沸かし、ものを煮るための鍋。
 または雑煮を作る鍋。

 現代では雑煮に変えて、鍋物にすることもあるだろう。

 「福鍋に耳かたむくる心かな」(山口誓子)








ふくもどき汁(河豚擬汁)

 フグの毒を避けるためにタイ、スズキ、コチなど白身の魚で代用した鍋物。

 フグの禁制時代(明治時代初期)にこのような料理が作られた。
 フグの皮を入れて河豚鍋に似た味にしたという。








豚しゃぶ(ぶたしゃぶ)

豚しゃぶ(ぶたしゃぶ)→常夜鍋(じょうやなべ)








豚とキャベツの蒸し鍋(豚キャベ鍋)

 豚バラ肉とキャベツだけを用いる鍋物。
 近年に生まれたアイディア鍋の一つと考えられるが、愛好者が増えてきているので一般的な鍋物と認めたい。

<作り方の一例>
=キャベツのざく切りと豚バラ肉(薄切り)を土鍋の縁から丸く交互に詰めていく。
 隙間がなくなったら、酒、塩、胡椒を適宜に加え、蓋を置いて蒸し煮にする。
 ポン酢かレモン醤油で食べる。薬味に大根下ろし、アサツキ。








豚 豚肉 豚鍋

 豚はイノシシ科の家畜。
 主にヨーロッパで改良され、大ヨークシャー種、中ヨークシャー種、ハンプシャー種、バークシャー種、シュロック種を基本に主要なものだけでも約300種が飼育されている。
 欧米ではハム、ソーセージ、ベーコンに加工されるものが多いが、日本では精肉が大半。

 鍋物にもよく用いられ、豚すき、豚味噌鍋、豚しゃぶなどがある。

<鍋物の例>
(豚肉のごま味噌鍋)=味噌、みりんに、練りごまを隠し味程度に加え、だしを作り、豚肉、大根のささがき、キムチを入れる。
 薬味にはカラシやユズがよく合う。








豚のももと蓮根の鍋

 中国広東料理の一つ。

 広東では肉質が硬く、炒め物に向かない豚のもも肉をゆっくり煮込む鍋物がある。
 中でも名物の蓮根を入れるものが特に好まれている。
 スープはスミイカのするめでだしをとり、濃いめの塩味にする。








ブリ(鰤)鰤鍋(ぶりなべ)鰤しゃぶ 鰤すき

 スズキ目アジ科ブリ属の海水魚。成長が早く、最大1・5bに達する。

 冬が旬で、寒ブリと呼ばれ、正月の祝い膳に用いられる。
 刺身、寿司だね、塩焼き、照り焼きのほか、鍋物の具にも適している。

 成長するにつれてワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ(千葉県など)、アブコ、ツバス、ハマチ、イナダ、ワラサ、ブリ(三重県など)と名を変えるので、出世魚とされる。

 関西地方から養殖が始まったので、関東でも4,50a大の養殖物をハマチと呼ぶようになった。
 カンパチ、ヒラマサは近縁種。

 ブリを具の主体にした鍋物は北陸、山陰地方に多い。味噌仕立て、醤油仕立て、身を薄切りにしたしゃぶしゃぶ風もある。
 ブリが出世魚であるところから出世鍋と呼ぶこともある。

<作り方の一例>
(鰤すき)=ブリを一口大に。鰹節と昆布のだし汁に煮きりみりん、醤油で味をつけ、ブリ、しらたき、春菊、焼麩、豆腐、シイタケを入れ、煮込む。
 付け汁は使わないが、生卵を用いてもいい。








プルコギ

 韓国風すき焼き、あるいは焼き肉。
 牛肉を風炉という中心の盛り上がった鍋で焼くが、周辺の溝にスープがためるので、ジンギスカン鍋風、すき焼き風という見方もある。
 「コリアンバーベキュー」という別名からすれば、焼き肉とみなされよう。








- へ -


べか鍋

 北陸の郷土料理。
 焼いたイワシのぬか漬け、酒粕、味噌でスープを作る。

 イワシの身がほぐれそうになるまで煮込み、漉す。
 魚類や野菜を入れる。

これとは別に、広島県の方言で「べか」は「鍋」を、べか鍋は「すき焼き」を表す。








へっちょこ鍋

 岩手県では上新粉で作った団子を、へっちょこという。
 これをアズキ、カボチャなどとももに砂糖(塩を少々)で甘く煮込んだ鍋物。

 「おやつ鍋」と呼ぶ人もいる。








弁慶の菜汁

 香川県で源平合戦のころから食されていたという鍋物。
 五種の肉(鴨、猪、鳥、牛、豚)とダイコン、ニンジン、ミズナ、ひる(らっきょうの原型)にそば粉と米粉を合わせた団子が材料になる。

 古来の製塩法による藻塩と「くき」(味噌、醤油の原型のようなもので、ひしおの一種と考えられる。
 中国地方では「はしい」と言う)を味付けに用いる。








- ほ -


火鍋(ホーコー)火鍋子(ホーコーツ)

火鍋(ホーコー)火鍋子(ホーコーツ)→火鍋(ひなべ)








芳香炉(ほーこーろ)

 京都・河道屋晦庵の名物料理。

 同店主人の植田貢三が1932年に中国風火鍋(ホーコー)にヒントを得て和風の鍋として創作したとされる。
 食通が賞賛したため広く知られるようになった。

 昆布と鰹節のだしに薄口醤油で味を付ける。
 具はほうれん草、葱、松茸、湯葉、ひりょうず(がんもどき)、鶏肉、魚の練り物など。
 最後にそばかうどんで仕上げをする。








ほうとう

 山梨県の伝統料理。
 奈良時代に中国から渡来し、甲州(山梨)では武田信玄が僧から調理法を聞いて、陣中食に用いたという。

 幅広の手打ちうどんを肉や野菜とともに味噌仕立てで煮込む。
 うどんは茹でずにそのまま入れるので、相当なとろみがつく。
 夏場にはカボチャを加えるのが特徴。

 ほうとうの語源については、はくたく(食編に専+飩)といううどん、江戸初期に麺類が禁止(雑穀を麺類に加工すると食べ過ぎるため)されたことによる御法度、などといわれる。
 また枕草子に「はうたう」という語があり、それを前身とする説もある。

 栃木県北部には法度汁※があり、東北には、カボチャ入りのうどんを「はっと」という地方がある。
 山梨の須玉地方では、カボチャで甘みをつけたお汁粉を「粉ぼうとう」と呼ぶ。

 また群馬、埼玉、岐阜、長野、高知などのある地域では、うどんや小麦粉の団子を煮込む料理を「ほうとう」と呼んでいる。








包丁(ほうちょう)庖丁

 元来は台所の役人、つまり庖(くりや)の丁(役人)、料理人の意味。
 中国の史書「荘子」では包丁(ほうてい)という料理の名人の名としている。

 日本では包丁師、包丁人などと呼ばれ、後に料理人が使う小刀の意味になった。
 日本では40―50種の包丁があるといわれる。








蓬莱鍋(ほうらいなべ)

 古代中国では東海に蓬莱山(島)という理想郷があるといわれていた。

 日本料理ではその名にちなみ、おめでたい席の料理に蓬莱の名をつけることが多い。
 蓬莱鍋もその一つで、車エビや鯛、野菜などをざるや鍋に盛り込み、蓬莱山に見立てる趣向。








ポタージュ(potage)

 フランス語の原義は「鍋にいれるもの」だが、「鍋で煮るもの」⇒「煮えたスープ」の意味になり、日本語でいう「スープ」全体を指す。
 なおフランスで「スープ」は、とろみのある汁、具の多く入ったスープ、手の掛からない家庭的なスープをいう。季節の野菜を多く入れるので、グリーンピースのポタージュ、オニオンのポタージュ、ニンジンのポタージュなどがある。

 ポトフー※とポタージュは「ごった煮」の訳が最も適切とされ、「鍋物」とすることも可能だろう。








穂垂れ汁(ほたれじる)

 鹿児島県の農家に伝わる伝統料理で、1月14日の小正月に食される。
 野菜や野草類を出来るだけ切らずにに長いまま使う。
 干物の魚(イワシ、アジ、サバなど)も丸ごとだしにする。

 だし汁は魚の塩味に醤油、酒などで調味。具は長いまま箸でつかんで垂らしながら食べる。
 豊作(稲穂が実って垂れる)への祈りが込められている。








ぼたん鍋 (イノシシ鍋、野猪鍋、山クジラ鍋、シシ鍋)

 イノシシの肉を野菜やきのこ類と味噌仕立てで煮込んだ鍋。
 埼玉、神奈川、静岡、兵庫、熊本などイノシシの捕れる地方では名物料理になっている。

 天武天皇の四年(675年)に鳥獣に対する殺傷禁断の詔が発令され、以来,約1200年間にわたって牛、馬、犬、猿、鶏などの肉を食べることが禁じられていた。
 しかしこの間も、イノシシとシカは除かれており、長らく貴重な獣肉として親しまれていた。
 江戸時代、イノシシは山クジラと呼ばれ、イノシシ肉やシカの肉を売る店を「ももんじい」「ももじや」と言った。
 最近のぼたん鍋はイノシシとブタを交配したイノブタを用いる場合が多い。

 ぼたん(牡丹)はイノシシの隠語。
「唐獅子(しし)に牡丹」の取り合わせから、この名が生まれた。
 イノシシを食べると体が暖かくなると言われる。
「冷え症で二十日ほど食ふ牡丹鍋」(古川柳)








ほっき鍋

 ほっき貝(北寄貝)はバカ貝科の二枚貝、別名はウバ貝(姥貝)。
 外洋に面した浅海の砂底に住み、殻長は10a近くに達し、卵形にふくらんでいる。

 身は美味で、これを用いた鍋物がほっき鍋であり、北海道や東北地方の郷土料理。
 身はわたをつけたまま用い、焼き豆腐、シイタケ、白菜、春菊などとともに薄味のだし汁で煮ることが多い。
 ポン酢醤油をつけて食べる。








ポトフー(pot au feu=フランス語)

「火に掛けた鍋」の意味。
 肉と野菜を弱火で長時間煮込むが、普通は具とスープを別々に食べる(飲む)。

 このスープがポタージュ※と呼ばれている。

 フランスの家庭で冬場に最も人気の高い料理といえよう。

  @日本の鍋物は具を食べるために煮る、
  Aポトフーはおいしいスープを作るために煮る、
という基本的な違いがある。








骨正月(ほねしょうがつ)

 関西から九州地方でいう1月20のこと。
 またはその日に行われる正月行事の一つ。二十日正月ともいわれた。

 正月の祝いに使ったブリが二十日ころには食べ尽くされるので、その骨を酒粕や大豆を入れて煮込み正月最後のご馳走ととする。
 ブリ以外の魚や鶏の骨も用い、台所に残っていた正月用の食べ物を整理する意味もあった。

 寄せ鍋※三平汁※粕汁※、関西の卯の花(きらず)汁※などの原点と考えられている。

「ものがたき骨正月の老母かな」(高浜虚子)








ホルモン鍋

 朝鮮半島の人々が関西で始めた鍋物。牛の内臓を用いる。

 日本人は内臓を捨てていたので、「放るもん」(捨てるもの)からその名が生まれたという。
 牛の腸や胃をよく洗い、刻んだものをだし汁(みりん、薄口醤油で味付け)で長時間煮込む。
→もつ鍋








ぽん酢

 語源はオランダ語のポンスで柑橘類の意味。
 夏ミカン、カボス、ダイダイなどを絞って作った酢を醤油で味付けしたもの。

 関西風の鍋物には欠かせない。






- ま -


マイタケ(舞茸)

 サルノコシカケ科のきのこ。
 100枚を超える扇形の傘が重なって八重咲きの花のような複雑な形になり、高さも幅も20−30aに達する。
 肉質は歯切れがよく、味もいいので、キノコ類の最上級とされている。
 医学的な研究も進み、抗腫瘍性の効果が認められてきた。
 ミズナラ、クリなどの老木の根元に発生する。

 キノコ狩りの人がこれを見つけると躍り上がって喜ぶほどなので、舞茸の名が生まれたという。
 近年、雪国まいたけ(株)などで大量に栽培されるようになり、一般的な食品になった。鍋物にも適している。








マオトウホウコウ(毛肚火鍋)

 中国四川省、重慶の有名な鍋物。
 毛肚は内臓のことで、牛の胃(せんまい)、レバー、腎臓、脳みそ、還喉(喉下の筋)、肉のほか、キャベツ、ニンニクの芽、黄葱などを具に用いる。
 スープは豚骨、豆鼓、そらまめ味噌、牛油(ヘッド)紹興酒などで作り、唐辛子、しょうが、山椒、胡椒、にんにくのみじん切りなどで作る付け汁が味の決め手になる。相当に辛い。








丸(まる) 丸鍋 丸雑炊

 すっぽん(鼈)※の別の表記は「団魚」、俗に「丸」。
 江戸、明治時代はすっぽんの鍋物や雑炊を丸鍋、丸雑炊と呼んでいた。

 元来は京阪地方の言葉で、やがて江戸に伝わったらしい。

 「丸とは何だえ。ご当地で言う鼈じゃがな。甲が丸いさかい、丸じゃわいな」(式亭三馬著「浮世風呂」)

 どじょうを割かないで丸のまま煮た鍋も「丸鍋」という。








マンタンシァン(満曇(土偏)香)=壺仕立ての寄せ鍋

 広東料理の一つで珍品とされている。
 骨付きタヌキ肉、鶏肉、炙り焼きした豚肉、魚の浮き袋、魚唇(チョウザメの唇)などを、腐乳(豆腐を発酵させたもの)、豆味噌、カキ油などで調味したスープで煮込む。
 食卓の上にコンロを置き、その上に壺を乗せて温めながら食べる。
 チシャの葉を別に用意し、スープを含ませて食べることもある。








- み -


水炊き(みずたき)

 関西の代表的な鶏料理。
 若鶏を皮付きのままぶつ切りにし、だしで煮る鍋物。

 水田次作(後に治作と改名)が1911年、中国の料理にヒントを得て考案、福岡県博多に「新三浦」を開店したのが水炊きの始まりとされる。
 水田は1917年、東京に「治作」を開店し、この料理をを東京に伝えた。その後、水炊きの名が一般化し、鶏肉以外の肉や魚で代用し,○○の水炊きと呼ぶケースも出てきた。
 関西を「水炊き文化圏」、関東を「寄せ鍋文化圏」とする考え方もある。

<作り方の一例>
=骨付き鶏肉のぶつ切り、キャベツ、人参、葱を鶏ガラスープで煮る。
 ガーゼに包んだ米大さじ1、2杯、サケ、塩(少量)も入れる。
 米はスープにとろみをつけるとともに鶏肉の骨離れをよくするためで、九州のやり方。
 ポン酢醤油をたれにし、薬味はモミジ下ろし、万能葱。








水鍋(みずなべ)水煮鍋(みずになべ)

 水炊き、湯豆腐、しゃぶしゃぶのように、水(湯)で煮たり、湯すぎしたものをたれや付け汁につけて食べる鍋物の総称。








味噌(みそ)

 大豆を主体に米、麦などの麹(こうじ)を配した発酵調味料。鍋物にもよく用られる。味噌の歴史は非常に古く、中国には前2000年ごろに味噌のような調味料があったという記録が残っている。
 味噌の前身は醤(しょう=大和言葉ではひしお)という発酵調味料で、日本へはこれが奈良時代に中国、または朝鮮半島をへて伝来したようだ。
 高句麗には醤を密祖(みそ)と呼ぶ方言があるという。
 大宝律令(701年発令)には、醤とともに未醤(みそ)という調味料のことが記されている。

 鎌倉時代には禅宗寺院で味噌などの大豆食品が大量に作られ、戦国時代には上杉謙信、武田信玄、伊達政宗らが地域ごとに味噌造りを勧め、越後味噌、信州味噌、仙台味噌などの名も誕生していった。

 味噌は材料の取り合わせや気候、風土の違い、作り方などによって味や色に大きな差が出てくる。
 色では赤味噌、白味噌、中間の淡色味噌、使用する麹によって米味噌、麦味噌、豆味噌、塩味の濃さによって甘味噌、辛味噌などに分類される。

 調理上の大きな効果に消臭、矯臭作用がある。
 多量に含まれるタンパク質の作用によるもので、匂いの強い肉類、魚類の料理には欠かせない。
 鯉こく※牡蠣の土手鍋※桜鍋※ぼたん鍋※などはその効果を最もよく利用したもの。
 また、とろみが多いので汁の保温効果も高い。石狩鍋※鮟鱇鍋※のように概して北関東から北海道にかけて味噌仕立ての鍋物が多く、北に行くにつれて味噌味が強くなる傾向がある。
 また関西では大阪、京都を中心にした都会が甘く、周辺へ行くほど辛くなる、といわれている。








味噌田楽

味噌田楽→田楽(でんがく)








水菜(みずな)

 アブラナ科の越年草で、ミズナは関西の呼び名。

 関東ではキョウナ(京菜)と呼ばれる。
 ミズ(ウワバミソウ)、ミブナ(壬生菜)とも近縁。独特の歯触りと香りが好まれ、各種の鍋物の具になる。








みぞれ鍋

 大根下ろしを汁に入れた鍋物。具はタラを使う場合が多い。
 白菜やキノコ類を加え、ポン酢で食べる。








みりん(味醂)

 焼酎に米麹、蒸した糯米(もちごめ)を混ぜて作る甘い酒。
 薄い黄色で粘り気がある。

 正月の屠蘇として飲まれるが、多くは調味料として使われ、鍋物のだしにも多用されている。








- む -


ムウユウチョワンヤー(母油船鴨)=アヒルの土鍋煮船料理

 中国の名勝・太湖(江蘇省、せっこう省の間にある)で生まれた土鍋料理。
 船頭の女房などが船上のかまどで作っていた「船菜」(遊覧船料理)の代表的なもの。
 太湖で船遊びをする文人墨客や風流人が大いに好んだという。

 この地特産の醤油、砂糖、紹興酒、ごま油などでスープを作り、頭付きのアヒル一羽を煮込む。
 骨付きが昔のスタイル。現在は骨や内臓を抜き、川冬菜(四川省の漬け菜)豚肉などを詰める。

 太湖と並ぶ名勝・西湖(浙江省)の饂飩鴨(フントンヤー=ワンタンとアヒルの土鍋煮)もこれに似ている。








無集汁(むしつしる)

 集汁(あつめじる)※の精進版。
 六集汁とも書く。

 ダイコン、ゴボウ、イモ、豆腐などを塩味仕立てにした鍋物。








- め -


めがらすのみぞれ鍋

 能登ではイカのくちばしを「めがらす」という。

 この塩漬けを塩出しし、大根下ろし(みぞれ)を加え、みそ汁で煮た鍋物。
 青ネギと赤唐辛子を鍋に散らす。元来は漁師が船上で調理したという。








滅多汁(めったじる)

 明治時代に食されていた鍋物の名称で、
  @よせ鍋のようなもの
  A闇汁のこと
、という二説がある。

「多勢持ち寄ったものを出し合って、滅多汁のようなものをこしらえた」(徳田秋声著「黴」)








めぬけ汁

 メヌケ(目抜)はカサゴ科の海水魚のうち、赤色系大型魚の総称。

 岩手、宮城などでは冬のめぬけ汁が珍重されている。
 メヌケを内臓とともにぶつ切りにし、ダイコン、ハクサイなどの野菜とともに味噌仕立てにして、最後にセリを入れる。








- も -


もつ鍋

 鶏や豚のもつを用いた鍋物。
 味噌や醤油味で、味を濃くし、唐辛子やニンニクを利かせるのが特徴。ネギやシラタキがよく合う。
 きのこ類を入れることもある。

 栄養が多いところからかつては「病気知らず」「医者殺し」などと呼ばれた。
 ホルモン鍋※の名もある。福岡を初め、北九州地方では昔から広く好まれており、炭坑で働いていた朝鮮半島の人々が作り始めたという。
 韓国のもつ鍋はコプチャンチョンゴル。

<作り方の一例>
(鶏のもつ鍋すきやき風)=鶏のレバーと砂肝を水洗いし、適当な大きさに切る。
 鍋にごま油を多めに入れ、ニンニクを適度に炒めてから唐辛子(タカノツメ)を加える。
 その後にレバー、砂肝も炒め、焼き色がついたころに割り下(醤油、みりん、だし、砂糖、ごま油など)を入れ、ニラ、青菜、ネギ、エノキダケなどを加える。








もつ鍋ブーム

 1990年代初め、平成不況といわれたバブル経済崩壊後に生まれた。
 福岡のもつ鍋が東京に移入され、さらに福岡など北九州に逆上陸のにブームをもたらした。

 92、3年ころには東京や福岡ではもつ鍋店の出店が相次ぎ、女性の人気を集めて、店によっては2、3時間待ちという状況になった。
 この時期、外国からの牛もつ輸入は80%増、ニラは通常の6倍の値が付くという状態になった。
 しかしファッション的なブームは93年で急速に冷え、同年の後半からもつ鍋店の転業、廃業が相次いだ。








もみじおろし(紅葉下ろし)

 大根と赤唐辛子を混ぜてすり下ろしたもので、鍋物の薬味に用いられる。
 紅葉の名所・竜田川にちなんで、たつた下ろしの名もある。

<作り方の一例>
=乾燥した赤唐辛子一本を水につけてもどし、へたと種を取り除く。
 皮をむいた大根の切り口に箸で穴をあけ、そこに赤唐辛子を差し込んですり下ろす。








もみじ鍋

 鹿肉を入れる鍋で愛知県などの郷土料理。
 鹿と紅葉(もみじ)が付き物であることからこの名が生まれた。

 鹿肉とゴボウ、シイタケ,ネギ、こんにゃくなどを味噌味で煮る。
 鹿肉には血が多く含まれているといわれ、婦人の産後にいいとされる。








もやし(萌)

 穀物の芽のことで、かつては「米(のもやし)は苗に、麦はアメの原料(麦芽)に、豆は食料に」と言われた。
 現在では、大豆、緑豆、小豆、黒豆などの豆類を水に浸し、暗所などに置いて発芽させたものをいうが、貝割れダイコン、エノキダケなども広義のもやしに加えていいだろう。

 豆もやしの原料は中国、東南アジアからの輸入物で、比較的安価なところから鍋物の具にもよく用いられる。
 炭水化物、タンパク質を含み、ビタミンb1,cも多い。








モロコ

モロコ→ハタ






- や -


焼く(やく)

 食物を火に掛け、適当なところまで温度を通すこと。

 かつては現在の「焼く」だけでなく「煮る」の意味にも用いられていた。
例「すき焼き」「鍋焼き」。








薬味(やくみ)

 鍋物など各種の料理を食する際に用いる和風香辛料。
 主として日本に産する植物で、香り、辛らさ、ほろ苦さのある食物の葉、芽、つぼみ、種、果実、根茎などが材料になる。
 少量で料理の風味を引き立て、食欲増進、消化吸収に役立つ。
 ワサビ、ショウガ、トウガラシ、ネギ、ダイコンが代表的で、ニラ、フキノトウ、ミツバ、ミョウガ、ユズ、ワケギ、アサツキ、ユズ、カボス、スダチのほか七色唐辛子などの混合香辛料も含まれる。

 元来は食中毒を避けるための「薬味」であり、役に立つという意味で「役味」と表記されたこともあった。








やつめうなぎ鍋

 ヤツメウナギは円口網ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科に属する魚の総称。
 ウナギに似た体型だが、口が吸盤状、あごに骨がない、目の後方に7つの鰓孔(さいこう=これと目を合わせて8つの目とされる)があるなどの違いがある。

 日本では北海道、東北、新潟、長野などに分布し、脂肪やビタミン類を豊富に含んでいるため、夜盲症やスタミナ増強の薬効があるとして、珍重されている。

 やつめうなぎ鍋は秋田県の郷土料理。
 ヤツメウナギをぶつ切りにし、ネギ、豆腐、シイタケなどともに味噌仕立て、あるいは醤油仕立てのだしで煮る。








柳川鍋(やながわなべ)

 どじょうを割いたものが具の主体。
 浅い鉄鍋にどじょう、ささがきゴボウとネギを多めに入れ、濃い醤油味で煮て玉子でとじる。

「骨抜き鰌鍋の始まりは、文政の初めに江戸南伝馬町に住居せる萬屋某という者が鰌を割いて骨、首、臓物を去り、鍋煮にして売る。その後、天保初に横山同朋町にて裏店住まいの四畳ばかりの所を客席として売り始め、柳川という」(守貞漫稿)

 これとは別に九州・柳川藩の運河でドジョウがよくとれたところから、柳川の名が発祥したともいう。
 また浅草にあった柳川藩の下屋敷にちなみ柳川鍋が同所に生まれた、柳川焼きの土鍋を用いたので柳川鍋の名が生まれた、などの説もある。








柳ぱっと(やなぎぱっと)

 岩手県の郷土料理。
 蕎麦粉を練って薄く伸ばし、柳の葉の形に切るところからこの名が出来た。

 味噌や醤油仕立てで、柳ぱっとにハクサイ、ワラビ、こんにゃく、豆腐などを入れる。








山鍋(やまなべ)

 かつては猪、鹿、雉など野生の鳥獣を具にする鍋物のことだったが、牛、馬、豚、羊などの肉が主体の鍋物をも意味するようになった。
→海鍋








闇汁(やみじる)

 元来は「闇の夜汁」といわれ、闇の夜に小川などから小魚類をすくい獲り、暗闇の中で煮て食べ、興じる一種の遊びであった。
 後に各自が肉、魚、野菜など思い思いのものを持ち寄り、暗闇の中で鍋物にして食べるようになった。

 正岡子規は闇汁会を好み、図解付きの文章を書いている。

冬の季題。
「闇汁の杓子を逃げしものや何」(高浜虚子)








- ゆ -


ユイクォ(魚鍋)

 北京料理の一つ。
 北方系の鍋物で、暖鍋とも呼ばれる。

 材料は生きた川魚が主体となるが、エビ、鶏肉、豚のレバー、春雨、青菜なども使う。
 銅製のアルコール燃料鍋(通風筒のないもの)を用い、しゃぶしゃぶ風にして食べる。








ユイトンクオ(魚頭鍋)

ユイトンクオ(魚頭鍋)→ぎょとう鍋








雪見鍋(ゆきみなべ)

 雪を見ながら食べる鍋物のこと。雪見酒から派生した言葉だろう。








湯豆腐(ゆどうふ)

 鍋に昆布を敷き、豆腐を湯で温め、醤油味の付け汁やポン酢で食する。
 精進料理の代表格として寺でよく作られた。京都・南禅寺付近には有名な店が多い。

 普通は豆腐をやっこに切るが、一丁をそのまま鍋に入れ、箸で切りながら食べる方式もある。
 関東では土鍋か薄い金属の鍋を用いるが、京都の有名店では茶釜風、檜製の四角な風呂桶風など「鍋」にも優雅な工夫を凝らしている。

「霙(みぞれ)にも、雪にも、いつもいいものは湯豆腐だ。この味は中年にならないと分からない」(泉鏡花「湯どうふ」から)








湯なます

 宮崎県の郷土料理。
 大根と人参、イワシ、アジ、鶏肉などを用いる。

 材料を油で炒めてから鍋に入れ、だし、砂糖、醤油を入れるが、最後に酢を加えるのが特徴。
 煮上がってからミツバ、ユズなどを加える。素朴な味のためか、最近では人気がないという。








- よ -


寄せ鍋(よせなべ)

 さまざまな具を使い、特に主体とすべきものものがない鍋物を意味する。
 牛肉と豚肉は入れないのが原則(鶏肉は可)。

 だしは薄味にし、ポン酢醤油を使う。明治時代以降に関東で流行り出した。
 滅多汁※楽鍋(たのしみなべ)※、吹き寄せ鍋などとも呼ばれていたようだ。

「おまえさん、寄せ鍋はいいねぇ。いろんなものが入っていて。今日は私がおごるよ」(落語「唐茄子屋政談」)






- ら -


- り -


料理物語(りょうりものがたり)

 1643年に刊行された日本最古の料理本。著者は不明。

 続群書類従の飲食部に入っている。
 江戸時代の食材や料理法について詳述されており、「汁」の項目には今日の鍋物の原点というべき料理や料理法が記されている。








- る -


ルーロンサンチェン(鹿茸三珍)

 高価な漢方薬として知られる鹿の袋角(鹿茸)を用いる鍋物。
 中国山東省の郷土料理だが、中華料理の鍋物の中で特に有名。

 非常に手に入れにくい鹿茸を初め、フカヒレ、ナマコ、干し貝柱の「三珍」を用いる。
 材料の味を十分に生かすために汽鍋※を使うことが多い。








- れ -


れんげ

れんげ→散蓮華








- ろ -


炉(ろ)

 屋内の一定部分の床や土間を方形に切り取って、ものを煮炊きしたり、部屋を暖めたりする場所や施設のこと。
 一般には民間の家屋や茶室のいろり(囲炉裏)を指す。

 かつて炉の火は暖房、煮炊きだけでなく、照明の役割を果たしていたので、食事、一家団欒、客の接待、夜なべの場となった。
→いろり






- わ -


ワイン煮

 欧州各地のワイン名産地にあるワインを用いた煮込み料理。
 例えばフランス・ブルゴーニュ地方には牛肉の赤ワイン煮、ガチョウの赤ワイン煮、ヒツジの舌の白ワイン煮、エスカルゴの白ワイン煮などの名物料理がある。
 いずれも汁が煮詰まったり、とろみがあったりして、日本の鍋物とはかなり性格が違う。

 日本ではワインを利用したアイディア鍋が数多く作られている。

<作り方の一例>
(牛肉の赤ワイン鍋ブルゴーニュ風)=5a角の牛肉をタマネギ、ニンニクの薄切りとともに焼き色が付くまで炒める。
 小麦粉を振りかけ、ジャガイモ、ニンジン、キノコ類を入れて、赤ワイン、ブイヨンを注ぎ、塩、胡椒で調味し、弱火で煮込む。








割り下(わりした)

 割り下地の略。

 肉や魚などを煮るためにあらかじめ、だしに醤油、酒、みりん、砂糖(蜜)を適当に混ぜて作った下地。

 肉類には砂糖を利かせ、魚は砂糖を少な目にするのがいいという。
「だし」や「つゆ」と大きな違いはないが、「割り下」という言葉は牛鍋、すき焼き、鶏鍋の「だし」の意味に使われる傾向がある。