第二回目のテーマは「すき焼きは鍋か」を予定していたが内容を変更してお届する。
ある夜、東京は築地の一郭、鍋研の面々が集まって、
「これまで食べた中で忘れられない鍋」「一人で食べるのは鍋に入るか」とか、
「チーズホンジューは鍋か」とか、
鍋にまつわるあれこれについて賑やかに議論した。
すると、鍋は箸を使う民族の食文化から初めて生れたという発見(?)まであり、
大いに収穫があったのだ。今回は前後編の2回に分けてその内容をご紹介しよう。
まずは前編。「鍋の思い出」、「鍋奉行の条件」、「来年の抱負」から。
司 会 「今日は食べながら、飲みながら、鍋の四方山話をしてみよう」
A 氏 「中国最古の鍋を見てきたんだって」
B 氏 「火鍋の形をしている。殷の前の夏の時代のものだ。博物館の先生がそう言っている」
A 氏 「何年くらい前?」
B 氏 「四千年前くらいかな。青銅器で肉を煮たんだろうな。いまでもある火鍋子(ホアコウツ)というやつで、鍋がドーナツ状になっていて、真ん中に煙突がある」
D 氏 「それはそれとして、インターネットで『鍋』というのを検索したら、『鍋の館』というのがあった。面白いのは悪代官ならぬアク取り代官ってのを作ろうなんて言っている。その他に『平成鍋合戦』というホームページもあったよ。東北の方にあるみたいだ」
E 氏 「前回の会合で、『平成鍋合戦』には連絡してみようという話も出たんだけど、そのままになっていたんだ」
D 氏 「『平成鍋合戦』の模様はNHKも放映しているらしい。会費を出し合って鍋の腕を競い合っているらしい」
F 氏 「一回行ってみたいわね」
● 鍋の思い出
司 会 「さて、まず最初に鍋についての思い出ばなしを聞くとするか」
G 氏 「鍋はうまい物、まずい物というのがあるのではなくて、食材のどうのこうのというより、誰と食べるか、どこで食べるかという要素の方が大きい」
H 氏 「誰と食べるか、メンバーにもよるんじゃないか。坊主が大学に受かったときのスキヤキがうまかったな」
司 会 「女性としてどうですか」
F 氏 「ウチは子供が鍋を好きじゃないからあまり鍋はしない。けれども、一人で食べることはよくありますよ」
J 氏 「わたしは、スキー場で食べたアンコウ鍋が忘れられませんね。Gさんがアンコウ一匹を手に入れてきて、調理して下さった」
K 氏 「うん、あれはうまかった」
E 氏 「スキー場にアンコウが泳いでいるんですか」(笑)
G 氏 「新潟の寺泊から運んできてるんですよ。魚屋の前に凍ったまま転がしてあった」
A 氏 「変わった鍋というのは、この間、中国に行って、羊の脳味噌を食べたな。ふわふわして美味しかったな」
F 氏 「どんな口当たりなんですか」
A 氏 「カッテージ・チーズってとこかな。口の中にまんべんなく広がっていく」
D 氏 「石頭火鍋がいいな。鍋を食べたいと思うと、必ず頭の中に浮かんでくる」
I 氏 「石頭火鍋って、どんな鍋?」
D 氏 「石で出来た鍋でね、どっしりと重い。それを熱して肉を入れる」
K 氏 「羊のしゃぶしゃぶも良いいな。僕の食べたのはタレが十数種類もあって、自分で調理して、ほど良い味にする。あれも忘れられない」
L 氏 「シンガポールにある海鮮鍋もいいな。スチームボートと言ったっけ。うっすらと海苔を掛けてふうふう言いながら食べる」
C 氏 「あれうまい。汗をタラタラ流しながらね。あれは、暑いからうまいんですよ」
B 氏 「鍋は寒いところから出たと思い勝ちだけどな、暑いところでもよく食べる」
司 会 「鍋研も海外出張しなければならないな」
K 氏 「喉を手術した後、初めて食べた鍋のうまさは格別だったな」
M 氏 「四川の重慶から武漢まで船で下ったのですけれど、その前に重慶で三十分くらいしか時間がない。その時間を利用して四川鍋を喰ったのですが、辛いのと激辛のスープが鍋の中で仕切られていた。そこにいろいろな山海の珍味に兎の耳というのが入っていた」
B 氏 「美味しそうだね」
M 氏 「ちゃんと煮てから食べろと言われるんだが、時間がないから気が気ではなかった。食感は軟骨という感じでしたね」
A 氏 「四川の鍋ってのは辛いねぇ。四川の新聞社に招待されて重慶に行ったとき、辛いのは大丈夫かと聞くから、うっかり『大好きです』と答えたら、出てきた鍋の辛いこと辛いこと。あれは山椒が入っているんじゃないの。毛穴から汗が出てきた。そのときは飛行機が来なくなっちゃって、一週間足止めを食らったのだけど、毎日々々激辛で、最後には喉がかれて、ハスキーボイスになっちゃった」
B 氏 「最近中国にいったときに食べた魚の鍋はうまかった。あれは雷魚じゃないのかな。それと黒い魚。日本人は魚にうるさいから、いちいち名前を付けているけれど、向こうは大雑把だから、ただの『黒い魚』。それにナマズ。洗面器のような器にどろっとしたスープが入っていてね」
C 氏 「スープの味付けはどうなっていたの」
B 氏 「味噌、醤油は入っているようなんだが、あとは分からない。聞いても教えてくれない。コックに聞いたら、これはウチのボスしか知らないと言うんだな」
K 氏 「場所は?」
B 氏 「洛陽のそばですね」
B 氏 「あそこには二十数種類の鍋があるんだ」
G 氏 「世界的に味付けで言うと、辛いのが好きなのは、北か南で、中間は温和だな」
司 会 「これまで不味かった鍋の思い出は?」
L 氏 「僕はほうとうというのは美味しいのを食べたことがない」
C 氏 「それは、美味しいほうとうを食べていないからだよ」
D 氏 「僕ははっきり言って、ほうとうは不味いと思う。かぼちゃなんか入ってて」
C 氏 「分かっちゃいな。山中湖の湖畔にめちゃくちゃ美味しいところがある。高速道路から離れているけれど。九百円でひとりでは食べられないくらい出てくるよ」
A 氏 「是非とも行かなければならないな」
● 鍋奉行の条件
司 会 「鍋奉行の定義について意見は?」
G 氏 「鍋奉行を良い意味で言うのか、悪い意味で言うのかが違ってくる。どこかの料理屋に行くと、うるさい女将が『まだ手を出さないで下さい』なって言うじゃないですか。鍋奉行はまず材料の仕入れから始まる。鍋奉行は小うるさい人間のことだな」
A 氏 「昔の職場で関東風の醤油の産地である千葉県出身の男と、関西の男を連れて、鳥鍋を食べに行ったところ、喧嘩になってしまい困ったことがある。関西の男は薄味だし、千葉県は汁が真っ黒じゃないと食べた気がしないと言い張る。仕方なく、三人なのに二つ鍋を頼んで、別々の味付けにしたことがあるよ。こういうときには、ちゃんと調整できなければ、鍋奉行とは言えないんだろうな」
D 氏 「鍋奉行とは、そのサークルで二番目の話題の持ち主がなるんじゃないかと思う」
一 同 「ほう・・」
D 氏 「一番目の話題の持ち主というのは、よくしゃべる人で、話題をリードする人。鍋奉行というのは二番目か三番目の話題の持ち主で、なおかつそこの参加している人たちを御せる人のことじゃないかな。信頼を集めている人。あいつがやるなら、食べてもいいかなと思わせる人」
B 氏 「つまり首相とか総裁とか社長じゃなくて、幹事長とか、副社長とかいう立場の人か」
G 氏 「やはり料理の知識が豊富じゃないとね。どんな鍋でも作ったことのある人」
● 来シーズンの抱負
司 会 「また、来年の正月も鍋コンテストはやるの?」
一 同 「やろうじゃないか」
A 氏 「平成鍋合戦と交流しようじゃない」
F 氏 「試合を申し込むの?」
A 氏 「いや、味見に行って、来年の鍋コンには彼らを招待するというのはどう?」
D 氏 「早速メールを打っておこう」
C 氏 「中国鍋物ツアーというのをやろうじゃないか」
B 氏 「いいね。四川省に行くものいいし、西安に行く手もある」
L 氏 「中国は大きいからな。南か北か方向を定めないとね。大連に西安にも重慶にも洛陽にも広東にも行くというのは無理だ」
H 氏 「まず近いところで東北からどうだ?大連とかね」
B 氏 「いいね。それを具体化しよう」
- To be continued