甥が着いたその晩に、家主のK-やT-、深山も一緒に来て、大勢持ち寄ったものを出し合って、滅多汁のようなものを拵えた。 ※滅多汁とは、みんなが持ち寄った材料を「滅多やたら」に入れる鍋物だ。闇汁を明るいところで食べるようなものだろう。「黴」は東京朝日新聞に連載した長編。秋声は、この作品によって自然主義作家としての地位を獲得した。私小説の典型をつくった作品として、日本文学史上に大きな意味を持っている。