落語国の住人のうち一言も発しないのにこれほどの有名人はいない。名前が馬、柄が大きいからつうしょう駱駝という。家賃を3年間びた一文も入れず、その上乱暴者ときているから長屋中から嫌われている。その駱駝が突然死んだ。「生きかえらねえらように頭をつぶしといたか」と言われる始末。
死因はふぐの中毒だ。駱駝は前夜、湯の帰りにふぐを下げて歩いていた。季節外れの大きなとらふぐを自分で料理して当たったらしい。駱駝を上回る無類の兄貴分が訪れ、通りかかった屑屋に、大家から酒や肴を出させ、長屋中から香典を集めるなど、通夜の手伝いをさせる。気の弱いと見えた屑屋が酒が入るにしたがい、兄貴分の男も手を焼くほど人が変わってくる。なかなか凄味のある落語だ。
ところで、駱駝が食べたのはふぐ鍋なのか、ふぐ刺しなのか。落語ではどちらとも言っていないが、小粋な刺し身よりたくわん石に寄っかかって辛うじて形を止めている七輪に、蓋の取れた土瓶をかけてふぐ鍋を食べる姿の方が様になっていると思うが、どうだろうか。